The world does not end
@kyonnsii
第1話 化け物との遭遇
母に頼まれていた買い物を終え、スーパーから出ると雨が降っていた。
今日は晴れだと天気予報で聞いていたので傘は持っていない。それに片手には卵やらが沢山入っているエコバッグがある。勿論重い。
更に悪運なのが、ここまで歩いて来たこと。バスで帰ろうかとも思ったけれど、その為のお金は無い。
私はこの最悪な現状を悟り、
「憂鬱だ...。」
と、つい呟いてしまった。
ここで雨が止むまで雨宿りするのもいいけど、雨の勢いを見ると中々止みそうにない。
私は渋々、歩いて家に帰る事にした。多分家に着いた頃には全身がびちゃびちゃになっていると思うけど、今はこの選択肢しか残っていない。
「はぁ...。」
と、時々ため息を吐きながらも私は歩き続ける。けど、本当の私はこんなめんどくさがり屋な性格では無い。今はただ、気分が悪いだけだ。スーパーから出た時から重い空気が街を漂っている気がして、体がだるくなった。でもこの空気の原因は雨では無い。これはただの自分の勘だが、原因は別にある気がする。
歩きながらそんな事を考えていると、なんだが嫌な気がして早く家に帰らないといけないと思った。
いつもとは違う街。それはとても怖かった。
そして私は歩いていた足を止め、走ることを決め息を整える。そして、はぁはぁ、と三回ほど息を落ち着かせた後、
「...行ける!」
と、自分のその言葉を合図にエコバッグの中身に注意しながらも、全力の走力で走り出した。正直言って、私はそんなに速く走れないから全力と言っても全然だ。
けど、そんなこと今はどうでもいい。早く家に帰って、胸騒ぎが止まないこの心を落ち着かせたい。
私の家の特徴は屋根が赤だという事。今はただそれだけを頭で考えながらただひたすらに走った。勿論途中で休みたいと思ったが止まりはしなかった。
本当に今はこの街の空気が怖いのだ。
だから自分を落ち着かせたい。休むのは家に着いた後だ。
私はその体力バカのような考えを信じ、あともう少しの家への道のりを走った。
そして...。
私は家へと到着した。
でもどうしてだろうか。この家に近づくと近づくほど重い空気が私を襲うのだ。
入るのが怖い。体が震える。足はもう立っていられない程で、手に持っていたエコバッグだって、いつの間にか手から離していたらしく見ると卵が割れている。
金縛り...だろうか?何も考えられない。今すぐこの場から離れたい。
でも...。
ゴクリという音を鳴らし、唾を飲み込む。
そして私は玄関へのドアノブを握った。だが、開けるというのが怖くて仕方がなかった。ここは私の家なのに。
そして私は目を瞑る。ドアを開け慣れている体に身を任せ、視界には何も映さないようにする作戦だ。
その作戦に決めた私はドアノブを握っていた手に力を入れる。そして体を家へと入らせる。
その瞬間、さっきまでとは全く次元が違う程の空気を肌に感じ、咄嗟に目を開けてしまった。
「...!」
私はすぐ、目を開けた事を後悔した。
まず目に入ったのは両親の死体。床には赤い、血と見られる液体が広がっていて気持ち悪い。
でも、それを受け入れる時間は無かった。
なぜなら...。
「誰だ?」
と言う低い声が私の耳に入ったからだ。またもや咄嗟に首を上にあげる。
そこには...漫画に出て来るような化け物がいたのだ。
ソイツは、人間の何倍もある体を宙に浮かしていて、指には鋭く長い爪、手首には黄金のリング、首にも何かつけていた。
私はいきなりのことを理解できず、目を見開き体を今まで以上に震わせながら玄関のドアへと倒れる。
叫ぶ気力なんて無かった。
そしてソイツは私に、
「子供か。殺したいが、子供なんか殺しても楽しくないし何の力にもならん。」
と言った。
殺されない...?力...?
いろいろ分からない点が多く、私の頭はこんがらがった。
けど私の記憶はそこで途切れた。気絶だ。急にいろいろな事が起きて頭が追いつかなくなったのと、単なる恐怖だろう。
私はどうなるのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます