この空のような君と。
十南 玲名
第1話
僕はじっと真っ白い天井を見つめていた。そう。ただ、見つめていた。暑い炎天下の中、外に出るわけでもなく涼しくもない部屋で僕は寝っ転がっていた。時々吹いてくる風が少しだけ薄いカーテンを揺らす。暇な午後だ。
「
……うるさいなぁ。今、いいところだったのに。
「優!お友達が来てるわよ?どうする?」
友達って…。僕に友達なんていないのに。誰だよ僕の友達を名乗るのは?
「……十分待って!」
「ごめんなさいねこんな息子で。」
聞こえてるっての。……起きなきゃ。あぁでも……うぅん…。
「あぁくそ!」
僕は勢いよく立ち上がる。と、立ちくらみ…。また寝っ転がりたい欲を抑えて僕はクローゼットを開ける。……あぁ…何着てこ…。
悩んだ末、結局いつもと同じ服を選ぶ。服選ぶのってめんどくさいよな。そう思わないか?
手すりに体を預けながらゆっくりと階段を降りる。
「あ、優。友達玄関の外で待ってるわよ。家の中にって言ったんだけど」
あーはいはい。わかった。わかったから。一度口を開いたら止まらないの何とかしろよな。聞いてるこっちの身にもなってくれ。めんどくさいんだから。
めんどくさい。めんどくさい。食べるのも寝るのも起き上がるのも。歩くのも立つのも勉強も。何もかもめんどくさい。なんなら生きるこ
「おっはよう!あ、こんにちは、かな?」
玄関の扉を開けると、俯いて石を蹴っていた麦わら帽子がパッとこちらを向いて駆けてくるとそう言った。そいつは……黒髪の彼女は満面の笑みを僕に向けた。
……暑い。今日も気温は異常だ。太陽はギラギラと光って僕を焼く。おつかいなんてお小遣いに釣られて引き受けるんじゃなかったと後悔が押し寄せてはお小遣いで買う物を考えては顔を緩ます。
そんなんだからと自分を叱咤して、また顔を緩まして…って無限ループ。ったく馬鹿すぎだろ。
何回目かの同じ考えに頭を回した時。フラッと足がもつれて転んでしまう。あぁめんどくさと思いながら立ちあがろうとすると、どうしても立ち上がれなかった。変だなと思いつつも立ちあがろうとしていると目の前がゆっくり眩んでいって……名前を呼ばれている気 がしたけれど、起きれはしなかった。
気がつくと木陰のベンチの上で僕は寝っ転がっていた。横には水の入ったペットボトルが転がっていて。僕はそれを一気に飲み干した。いつ、どうやって買ったのか全く思い出せなかったけど、なんとなく、なんとなく自分のだと思った。
ふとベンチを触ると生暖かくて、そこにさっきまで人が座っていたような感触がある。と、膝枕をしてくれる女の子の長い黒髪が自分の頬をくすぐる。なんて妄想が頭をよぎって、我ながらキモいと叫びたくなる。
っておつかい!僕は深いため息を吐くとベンチからゆっくり立ち上がり、帰路についた。
なぁんてことが最近あったなと思い出す。……そういえばこいつも黒髪ロング……いやいやキモいから。やめてくんない変なこと考えんの!
「ねえ優?」
「なんだよ!」
「なんで怒ってるのよ〜。」
頬を膨らませる女の子。いやだって。僕はこいつの名前も知らねぇのになんか無理やり連れてこられるし、ここどこだかわかんねえから家戻りたいたって戻れねぇし、終いにはこいつは僕の名前を知ってやがる。なんでだよほんと。怖いんだけど。あぁもうむっかつく!
「もう!怒んないでよぉ。………あ、わかった!優、私のことわかんないんだぁ。ひどいなぁもう。私達友達じゃない。」
……まじでこいつ何言ってんだよ…。僕らがいつ友達になったって言うんだ。そもそも会ったこともねえよお前となんて。
「じゃあ自己紹介!」
「……お前は僕のこと知ってんだろ。なら必要ないじゃん。」
「私が一方的にするの!友達なのに自分のこと知られてないなんて悲しいもぉん。」
鼻歌混じりでウキウキな女の子。麦わら帽子のリボンが揺れる。……ほんと会った記憶ないんだよなぁ…。しかもこの子…小さい。何歳くらいだろう……六?小学校は入ってそう。と言っても見た目に似合わず大人びてる感じ。
僕がジロジロ女の子を見て考えながら歩いていると、不意に女の子がパッと振り返るもんだから事故りそうになる。
「ったく。危ねえだろ!急に振り返んなよ。」
僕が睨みを効かせると女の子は舌をチョロリと出して「ごっめえん。」と悪びれもなく謝る。いつの間にか周りは田んぼがチラホラ。近所にこんなとこがあるなんて知らなかったんだけど…。
「私の名前は
「なんで「こあめ」なのに「あま」なんて呼ばなきゃなんねんだよ。」
「いいのいいの!だって
ふふふッと笑う
「好きなことはひなたぼっこ!好きな色は黄色で、水色は…嫌いだよ。」
僕は少し不思議に思う。「嫌いだよ」に含みを感じたから。
「夏は大好き!冬は曇りが多いからそんな好きじゃない…。」
「…晴れが好きなの?」
思わず口を挟む僕に
「そう!私、晴れてると元気になれるの。だから大好きなんだ!」
僕は焼かれる感じが苦手だから晴れは嫌いだ。雨とか曇りだと落ち着くから晴れよりは好きだ。
「知ってるよっ!優はねぇ〜めんどくさがり屋で、部屋が好きな引きこもり!それでいて陰キャのコミュ症。友達はおらず、将来自宅警備員予備軍〜。」
……どこからそんな言葉仕入れてんだよ…。ニコニコ笑って言うことじゃねぇんだ。ってか何が「知ってる!」だ!
…自宅警備員なんてしねぇし!頼まれてもやんねえから安心しろ馬鹿!
「でもね、私知ってるんだ。優は心優しくて、困ってる人をほっとけなくて、その時の優はすっごい頼りになること。頑張り屋さんで、負けず嫌いってこと。私はちやぁんと知ってるよ。」
優しい目で僕に微笑みかける君。………残念だけど僕はそんな人間じゃない。どこでそんな僕の偶像を作ったか知らないけど、確実に僕ではない。
「そんなことない。私が優を知ったのは優を見て、だよ。」
こいつ頭……ってどうして会話が…?!
「なあいしょっ!」
帽子を押さえて前方に飛び上がる女の子に僕は引く。明らかに人間のジャンプ力ではなかったから。
「それよりねえね、遊びに行こ。遊びに!」
「僕お金持ってないけど。」
「お金なんて必要ないよ!自然で遊ぶんだから!」
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