第593話 チワワ

「——君って、犬に例えると――だよねー」


 教室からそんな話声が聞こえる。


 僕のことを話しているのだろう。


 笑い声とかには、僕の好きな人もいるみたいだ。


 彼女が僕にどんな印象を持っているか、気になった。


 こっそりと彼女たちの話に耳を傾ける。


「わかるー。いかにも大型犬、って感じするよねー。頼りがいあるっていうか、体が大きいってのもあると思うんだけど」


「私は、チワワみたいな感じかなー」


 彼女は周りのみんなとは違う意見のようだ。


 僕が、チワワ……。


 喜ぶべきなのだろうか。


「えー? なんでー?」


「つぶらな目してて、可愛いじゃん。甘えん坊なイメージだし。私のこと、怖がらないで遊んで! って感じで来るもん」


「えー! ほんとー!?」


 他人から見た自分の評価を聞くのって、何だか恥ずかしい。


 そんなに、彼女のことが好きなことが彼女にバレていたなんて。


「うん。それに彼、そんなにおっきくなくない?」


「そりゃ、あんたからしたらだいたいの男、ちっちゃいでしょ!」


 かなり背の高い彼女は、みんなにそう突っ込まれた。

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