第592話 1円玉

 いつも、1円玉をたくさん持っている。


 何かを買ってきてもらったときとか、みんなで割り勘にしたときとか。


 何かおつりが必要な時にすぐに両替できるように。


 用意周到な僕を見て、好きになってくれる人がいるかもしれないから。


 1円で始まる恋があってもいいと思うのだ。


 しかし、そんな思いとは裏腹に、一切そう言う雰囲気にならない。


 むしろ恋愛対象から外されている気がするまである。


 曰く、付き合っても1円単位で割り勘しそう、だとか、端数くらい多めに出せよ、だとか。


 友達としては便利だけど、恋愛対象としては入らないどころか嫌いとまで言われる始末。


 付き合って、そんな割り勘になんてしないし、するのは大人数での集まりの時くらいだし……。


 でも、そんなことを言っても、まず付き合うところまでいかなければ、そんなアピールも意味がない。


 やっぱり、これやめるかな……。

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