第8話 嵐

風が、ガタガタと窓を揺らす。

雨が、バチバチとベランダに当たる。

雷が、ゴロゴロと遠くで鳴る。


部屋の外は、夜でもないのに真っ暗で、時々光る雷が唯一の光だ。

部屋の中で一人、何もせず、呆けている。


テレビもラジオも、持っていない。

隣からの声も、外からの音で聞こえない。

来客は、もちろんない。


クローズド・サークル、とはミステリ小説の用語だが、この状況にピッタリだ。

外界との繋がりが断たれ、不自由になった。

その代わり、この部屋の中では今まで以上に、自由だ。


ご飯は、コンビニ弁当がある。

カップ麺もある。

普段は買わない、スナック菓子もたくさん買った。

乾パンもロウソクもあるから、停電しても大丈夫。


積読は、梅雨の時に消化した。

ゲームは――、いや、ここでゲームは違う。

スマホをおやすみモードにし、ゲーム機の電源を切っておく。


この嵐の中で、何もせずに、呆けている。

楽しもうじゃないか、この自由を。

――不自由が故の自由を。

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