7.予知

7.予知

2人は父親と思われる男性遺体の確認のため車で病院へ向かっていた。ソナタは女性から借りた黒いセーターとジーンズに着替え、自身の青色のコートを羽織っている。女性との身長差からセーターのサイズはやや大きく、袖は少し余っている。出発してからしばらくはお互い心を落ち着かせるためか他愛のない話を交わしていたが、いよいよ本題に入る。


 …そろそろさっきの話の続きを聞かせてもらおうかな。


 そうですね…。


ソナタは含みを持たせながらも女性の提案に賛同し、自身の推理を披露し始めた。


 私は事件現場を隈なく調べそのすべてを脳内に保存しました。


 すべて保存?


 はい。私には幼少期の訓練により"カメラアイ"…瞬間記憶能力があります。


 ん〜聞いたことあるような、ないような。どんな能力なの?


 視覚に入ったものをそのまま映像として記憶して決して忘れることがないのです。便利な反面、思い出したくないことを忘れることができないという欠点もあります。


 す、すごい能力。でも忘れられないというのも酷な話ね。


 …ええ。話が逸れてしまいましたが、そこで気になったのはバッグに入っていたリングノート式の手帳です。


 手帳か。父は今も"未来"を書いているのかしら。


 はい。珍しい日記の書き方ですよね。手帳には1日1ページを使って今年の1月1日から、事件当日である昨日だけでなく今日のことまで記されていました。


 ふふふ。まだ続けてたんだ…そう、ね。きっといまだに、毎週その1週間に起こるであろうことを予想して書いてるんだと思う。私が子供のころ、ふざけて一緒に未来を予言しようとか言って遊んでてね。私が明日は?明後日は?ってしつこく聞くもんだから、一時期自分が出張でいない1週間のことを予想して書いてくれたの。父と遊んだ数少ない記憶だからよく覚えてるわ。"未来日記"ごっこね。


 そんな出来事があったんですね。それで手帳に先のことまで書かれていた理由が分かりました。私はその"未来日記"の内容に解決の糸口あると考えています。

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