16.憎悪

16.憎悪

主人と同じ劇団で出会った元女優の妻は、結婚後も演出家と逢瀬を繰り返していて、いわゆる不倫関係にあった。これに気付いた主人は怒りや悲しみや様々な感情が込み上げ、やがて怨恨へと変わり、妻を利用して演出家を殺害することにした。どうにかして自身は疑われることなく2人だけを陥れる方法を日々考えていたのだ。そんな最中、ソナタのクライアントから演出家が主催する劇団の新作発表を知らされる。主人は演出家へ脚本へのアドバイスと称して事前に"台本"を手に入れることができた。自身の作品に対する演出家の強い情熱をよく知っていた主人は、作中のシーンを利用すれば指示どおりに演出家を動かすことができると確信し、交通事故に見せかけた殺人計画を実行する。ソナタの指摘にもあったが牛乳は妻を買い物に行かせる口実で、主人が家の中に隠していた。


だが、これはコトの真相のほんの一部でしかない。同じく元劇団員のソナタのクライアントは、愛を誓い合った女性を主人と演出家に奪われた。そのときから自身を裏切った3人に復讐することだけを考えて生きてきたのである。つまりクライアントは、主人に気付かれぬよう彼を嗾け、今回の事件を起こした張本人なのだ。自身に疑いがかからぬよう緻密に計画を立てたのだが、予想外の出来事が起きた。主人が堂々と"台本"を戸棚に飾っていたこと。クライアントは焦った。元々、主人だけが犯人として捕まる証拠を準備しており、良いタイミングでそれとなく提示しようとしていたのだが、ソナタに"台本"の存在を知られてしまったため、主人だけでなく自身の関与にすぐに気付かれてしまう。


こんな経緯でクライアントはコーヒーに薬を盛ったのだが…。しかし、ソナタが感じている"違和感"はこれだけではない。それはこれからの旅で明らかになることだろう。


ロンドの旅Part2ソナタの旅 Chap2へ続く

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