11.同僚

11.同僚

ノックの後、ドアが開くと男性が部屋に入ってきた。


 こんにちは。この家の主人です。遠くからよくぞお越しで。


 こんにちは。エピソードのソナタです。よろしくお願いします!


笑顔で名刺を差し出すと、主人は表情を変えず無言で受け取った。


 先輩、お久しぶりですね。お元気そうでなによりです。


 ふん。お前も相変わらずだな。


 さあ、お二人ともどうぞお掛けになってください。


主人は、白髪混じりの黒髪で目鼻の彫りが深い。少し屈まなければ部屋を出入りできないほどの高身長の持ち主だ。クライアントもそうだが、やはり俳優出身というだけあり、端正な顔立ちである。


 この度はお時間をいただきありがとうございます。


 …普通は断るんですがね。御社からのオファーであればそうもいかないでしょう。


 それは身に余る光栄なお言葉です!


ソナタはロンドのようにわざわざ自分が子会社の人間だという説明はしない。相手にとっては取るにたらないことと判断しているからだ。反面、ロンドは細かいことでもきっちりと説明し、どこまでも正確さにこだわる。ソナタが大雑把なわけではないのだが、ここから彼らのキャラクターの違いが垣間見える。


 それでは早速ですが、事故が起きた日のことについて教えてください。


事件当日のことで資料との矛盾がないか本人によく確認したが特に不審な点はなかったので、その前後について話を聞くことにした。


 被害者とは以前同じ劇団でお仕事をされていたようですが、最後に連絡を取られたのはいつですか?


 んー…あ、そうだ。そこの戸棚に彼のサインが入った台本がいくつかあるでしょう。まだ未発表の作品のものもあってね。それが送られてきたときにお礼の電話をしたよ。


 それはいつごろですか?


 ちょうど、彼がこっちでしばらく活動することが決まったころ…。2,3ヶ月前かなぁ。その台本の作品について意見を求められたんで、こっちに来たら直接会おうって話してたんだけど、まさかこんなことになるとはね。

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