SAN値の片っぽ

霧這

涙は海に入れば見えないさ

魔法が存在しない世界のシンデレラ少年が

御祈祷を持って自分自身を祓おうと

橋の上、海を見つめている

流木と空き缶とプラスチックがゆらゆら

風はアイマスクをする様に覆ってる

戦地で傷を負った人魚がおもむくと

野次馬が枝で突くから少年は

いてもたっても居られず

廃墟されたリアカーに人魚を乗せて

片方だけSAN値を与えた

ちょっぴり生きた心地がしたからだ

「人魚の肉は要らないよ

僕はこのまま満たされたまま

死にたいので」と感謝を言う

感動も絶望も一切何もないまま

沈んだ時、凪がそっと見守る

人魚は彼を食べました

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SAN値の片っぽ 霧這 @Sachi8hyA9sya7

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