第78話 二人きりの部屋で
その後、皿洗いを終えた一輝はリビングを出て二階にある自分の部屋へ向かった。
そして、一輝がドアを開けて自分の部屋へ入ると。
「あっ、一輝くん、お皿洗いお疲れ様です」
先に部屋に入っていた綾香にそう言って迎えられた。しかし、
「えっと、綾香さん」
一輝がそう声を掛けると。
「何でしょう?」
綾香はそう返事をしたので。
「えっと、綾香さんはどうして僕のベッドに座っているのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「別にいいじゃないですか、一輝くんの部屋の中だとここが一番落ち着くんです、でも、一輝くんからすると私が一輝くんのベッドに座っていると何か問題があるのですか?」
綾香はそんな事を言ったので。
「あっ、いえ、別に問題はありませんが」
一輝がそう答えると。
「それなら問題はありませんね、それでは一輝くんも早くベッドに座って下さい」
綾香は当然の様にそう言ったので。
「えっと、僕は綾香さんの隣に座らないといけませんか?」
一輝が遠慮がちにそう質問をすると。
「ええ、勿論です、ただ、一輝くんは私の隣に座るのは嫌ですか?」
綾香はそんなことを聞いて来たので。
「いえ、そんな事は無いですよ」
一輝がそう答えると。
「そうですか、それなら問題はないですね、早く私の隣に座って下さい」
綾香は改めてそう言ったので、一輝は少し距離を開けて綾香の隣のベッドの上に座った。すると、
「そんなに離れて座らなくても大丈夫ですよ、私たちは恋人同士なんですから」
綾香はそう言いながら、一輝に近づいて来ると自分の体を一輝の体にピッタリと引っ付けて来たので。
「えっと、綾香さんがこれくらいの距離感がいいのなら、それでもいいですが、これからは何をして過ごしますか?」
綾香の体温を右腕に直に感じて一輝は少し緊張しつつも、綾香に向けてそう質問をした。すると、
「ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、私は別に何もしませんから」
一輝の緊張が伝わったのか、綾香は少しだけ微笑みながらそう言った。そして、
「そうですね、これから一輝くんと二人で何をするかですが、私の家でデートをした時みたいに、何かアニメを観たりするのもいいかなと最初は思っていたのですが……今の私としては、このまま何もせず、一輝くんに引っ付いたまま、このままのんびり過ごしたいと思っているのですが、一輝くんはそれでもいいですか?」
綾香はそんな事を言ったので。
「えっと、僕はそれでもいいですが、綾香さんはそれだと退屈ではないですか?」
一輝は少し心配した口調でそう質問をした。すると、
「そんな事はありません、今の私はこ一輝くんにくっついて雑談をしているだけでも十分に幸せです、それに」
「それに、何ですか?」
一輝がそう質問をすると。
「特に会話をしなくて二人一緒に居るだけでも穏やかに過ごせる、私はそういう関係に憧れているんです、私の両親もそんな関係なので、私も一輝くんとはそんな風に関係になれたらいいなと、そう思っていますから」
綾香はそう言ったので。
「成程、そういう事なら、この後は適当に雑談をしながらのんびり過ごしましょう、僕と綾香さんも波長というか、お互いの価値観はかなり近いと思うので、僕たちなら綾香さんが望んでいるような関係になれると思います」
一輝はそう答えた。すると、
「ええ、私もそう思います、それではこの後は、この姿勢のままでよろしくお願いします」
綾香はそう答えて、一輝の肩に自分の頭を乗せたので。
「ええ、任せて下さい」
一輝もそう答えると、二人はその場で黙って肩を寄せ合った。そして、二人は暫くの間、黙って肩を寄せ合っていて、こういうのも悪くないなと一輝がそう思っていると。
「あの、一輝くん」
綾香がそう話しかけて来たので。
「何ですか、綾香さん?」
一輝がそう答えると。
「斎藤くんと黒澤さんの事を一輝くんはどう思いますか?」
綾香はそんな事を聞いて来たので。
「えっと、どう思うとは、何がですか?」
一輝がそう答えると。
「二人の関係に付いてです、私は二人の人柄はそんなに詳しくはありませんが、何となく直感であの二人ならいいカップルになれそうだと勝手に思っているので、出来れば上手く行って欲しいと思っているのですが、一輝くんはどう思っていますか?」
綾香はそんな事を聞いて来たので。
「僕も綾香さんと同じ意見です、何となくですが、僕もあの二人だと上手く行きそうだなと思っているので、出来ればこのまま二人には本当の恋人になって欲しいです、ただ、僕たちに出来ることは結局、黒澤さんに頼まれたら一緒に作戦を考えたり、ダブルデートに付き合ったりとそれくらいの事なので、上手く行くのかどうかは結局のところ二人次第ですね」
一輝はそう答えた。すると、
「そうですね……でも、私としてはやっぱり上手く行って欲しいですね、私は今、一輝くんと恋人通しになってこうして穏やかに過ごせていますから。だから、斎藤くんにも黒澤さんにもこんな幸せな気持ちになってもらいたいですから」
綾香はそう言ったので。
「そうですね、僕も綾香さんとこうして一緒に過ごしていてとても幸せな気分ですから、二人にもこんな気持ちを味わって欲しいです、あの二人には色々とお世話になりましたから」
一輝もそう答えると。
「そうですね、取りあえず今は二人の勉強会が上手く行くことを願っておきましょう」
綾香もそう答えたので。
「ええ、そうですね」
一輝もそう返事をした。その後も二人は少しの時間黙ったまま、二人で肩を寄せ合っていたのだが。
「……ふわっ」
唐突に綾香がそんな風に可愛らしい欠伸をした。なので、
「綾香さん、眠いのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「……ええ、すみません、一輝くんの部屋があまりにも心地がいいので少しだけ眠たくなってしまいました」
綾香がそう言ったので。
「えっと、それなら綾香さん、このベッドで昼寝でもしますか?」
一輝がそう言うと。
「そうですね……私としてはそれでもいいのですが、私が昼寝をしている間は一輝くんが暇ではないですか?」
綾香がそんな事を聞いて来たので。
「そうですね、でも僕は最悪、綾香さんの寝顔を眺めていれたらそれだけで幸せなので、何の問題もないですよ」
一輝がそう答えると。
「えっ、一輝くんに寝顔を観られるなんて、私は嫌ですよ」
その言葉を聞いて、綾香は少し慌てた様子でそう言った。なので、
「えっ、何故ですか? 綾香さん程の美人なら寝顔も間違いなく可愛いので、何の問題もないと思いますよ」
一輝がそう答えると。
「えっと、一輝くんにそんな風に言って貰えるのはとても嬉しいのですが、それでもやっぱり一輝くんには、いえ、大好きな一輝くんだからこそ私の寝顔を観られるのは嫌です、一輝くんにはいつも可愛い私を観ていて欲しいですから」
綾香がそう言った。
ただ、先程も言ったように綾香の寝顔は間違いなく可愛いと一輝は確信しているのだが、その可愛いは綾香の思っている可愛いとは違っているようだった。なので、
「そうですか、綾香さんがそう思うのならそれでいいですが、それなら綾香さんは昼寝をしないのですか?」
一輝が改めてそう質問をすると。
「そうですね……今はお昼寝をしたい気分なのですが、一輝くんに寝顔を観られるのは嫌ですから、あっ、そうです」
綾香はそう言って、一輝の方へ振り向くと。
「それなら一輝くんも私と一緒にお昼寝をしませんか?」
綾香は一輝にそんな提案をして来た。
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