第73話 お家デート
すると、そんな一輝の案を聞いた心愛は、
「二人で試験勉強ですか? そんな事をして、私は本当に颯太先輩の距離は縮まるのですか?」
一輝に対してそんな事いて来たので。
「確証は持てませんが、少しくらいは効果があるかなとは思います」
一輝はそう言うと、一度言葉を切ってから。
「二人で勉強をするという事は、同じ部屋で数時間一緒に過ごす事になるので、単純に同じ時間を長く過ごせますし、それに黒澤さんが颯太に勉強を教えてもらったりしたら、単純に二人の物理的な距離も近づいていいなと、僕はそう思うのですが……えっと、綾香さんはどう思いますか?」
一輝はそう言ったが、話をしていて途中から少しだけ不安になり、綾香にそう質問をしてみると。
「私も一輝くんの案はいいと思いますよ、二人きりで同じ部屋で過ごすという事はそれだけで二人の距離は縮まる気がしますし、それに一輝くんの言う通り、黒澤さんが斎藤くんに勉強を教えてもらって、その時に手が触れ合ったりしたら、それだけ余分にお互いのことを異性として強く意識すると思いますから。ただ、私としては試験期間中は恋愛に関することは忘れて勉強に集中するべきだと思いますが、今の状況だと黒澤さんはそんな事は言っていられそうにありませんよね」
綾香がそう言うと。
「そうですね、勿論、試験勉強は大切ですし私は手を抜くつもりはありませんが、今は多少勉強時間を削る事になっても、私は颯太先輩との距離を縮めたいと思っています」
心愛は力強くそう答えたので。
「そういう事でしたら、一輝くんの言う通り二人で勉強会をしてみたらいかがでしょうか? それで結果が出るのかは私には分かりませんが、何もしないよりは思いついたことをどんどん行動に移していった方が結果的にいい方向に向くのと私はそう思いますよ」
綾香がそう言うと。
「分かりました、それでは佐藤先輩の案を頂いて、私は来週の土日辺りに颯太先輩を勉強会に誘ってみます」
心愛はそう言って、今回の話し合いは無事終わりを迎えた。そして、
「それでは先輩方、今回はわざわざ私の相談に付き合ってもらってありがとうございました、大したお返しは出来ませんが、今回のドリンクバーの料金は全て私が払わせてもらいます」
心愛はそんな事を言ったが。
「いえ、そんなことをしてもらわなくても私は大丈夫ですよ、後輩の女の子に奢ってもらう訳にはいきませんから」
綾香はそう答えてから。
「一輝くんはどうですか?」
綾香は一輝の方を観て、そう聞いて来たので。
「僕も綾香さんと同じ意見です、後輩の女子に奢ってもらう訳にはいきませんし、それに黒澤さんの相談を聞くと約束したのは僕の方からですから、だから、黒澤さんはこれからも遠慮せず、僕たちに相談したい事があれば呼んで下さい」
そこまで言うと、一輝は一度言葉を切り。
「ただ、僕たちにも予定はあるので、いつでも相談に乗れるわけでは無いと思いますが、そこだけは分かって下さいね」
一輝は続けてそう言うと。
「それくらい分かっています、それと、今日はわざわざ私の相談に乗ってくれてありがとうございました。お返しというわけではありませんが、先輩方も何か困ったことがあれば遠慮なく私に相談して下さい、可能な限り力になりますから」
心愛はそう言った。すると、
「分かりました、その時は遠慮なく相談させてもらいます」
綾香はそう答えて、今回のファミレスでの話し合いは幕を閉じた。そして、
「改めまして、今日は私の相談に乗ってもらってありがとうございました。それでは、私はここで失礼します」
会計を終えてファミレスの外に出ると、心愛はそう言って自分の自転車に乗ると、帰路へと付いた。なので、
「えっと、それでは綾香さん、僕たちも帰りますか」
一輝はそう言って、自分も自転車に乗って家に帰ろうとしたのだが。
「待ってください、一輝くん」
一輝は綾香にそう言って呼び止められた。そして、
「忘れたのですか、この後は私と二人きりでデートをする約束でしたよね?」
綾香は笑顔を浮かべながらそう言った。
ただ、その笑顔はいつもの優しい雰囲気のモノではなく、少なからず怒りが混じっているように感じて、一輝は少しだけその雰囲気に押されつつも。
「えっと……勿論覚えていますよ、ただ、偶には綾香さんも休日は一人でのんびり過ごしたいのではないのかと、僕はそう思ったんですが」
綾香に対して一輝は恐る恐るといった様子でそう言った。すると、
「お気遣いありがとうございます、確かに私は割と一人で過ごすことが好きで、休日は一人で過ごしたいと思う事もありますが、今日はずっと一輝くんと一緒に過ごしたい気分なんです。だから、一輝くんは遠慮せずこの後も私に付き合って下さいね」
綾香は笑顔を浮かべたままそう言った。そして、その言葉を聞いて一輝はこれ以上、抵抗するのは諦めて。
「……分かりました、それじゃあ綾香さん、この後は何処に行きますか?」
綾香に対してそう質問をすると。
「えっと、そうですね……」
そう言って、綾香は頭を悩ませ始めた。そして、
「それでは、今日は久しぶりに一輝くんのお家でデートをしませんか?」
綾香はそんなことを言ったので。
「僕の家ですか?」
一輝がそう質問をすると。
「ええ、そうです、二人きりでゆったり過ごせる場所となると、どちらかの家が一番だと思います」
綾香はそう言うと、一呼吸置いてから。
「ただ、急に一輝くんの家に行くのが難しいのでしたら、私の家でも大丈夫ですよ、その場合、一輝くんはこの後、私の部屋でのんびり過ごすことになりますね」
綾香はそう言ったので、一輝は少しだけ考えてから。
「えっと、今日は綾香さんの家にご両親は居るのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「はい、家の両親はとても仲がいいので二人でお買い物に行っている可能性もありますが、そうでなければお父さんもお母さんも家に居ると思いますよ」
綾香はそう答えたので。
「えっと、それなら僕の家でデートをしませんか? 申し訳ありませんが、僕はまだ綾香さんの両親に挨拶をする覚悟が出来ていないので」
一輝はそう答えた。すると、
「分かりました、ただ、私のお父さんもお母さんもとても優しい人なので、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」
綾香は一輝を勇気付けるようにそう言った。しかし、
「そうですね、綾香さんはとても優しいので綾香さんの両親が優しいという話も何となく分かるりますが、それでも、僕が綾香さんのご両親に会う時には、僕が綾香さんの彼氏だと自信を持って言いたいのでもう少しだけ待って下さい。情けない話ですが、今はまだ僕はそこまでの自信を持てていないんです」
一輝は自信のない表情を浮かべてそう言った。すると、その言葉を聞いた綾香は、
「そうですか、分かりました、一輝くんがそこまで言うのでしたら、私の両親に会ってもらうのはもう少しだけ先にしてあげます」
一輝に対してそう言ったので。
「綾香さん、ありがとうございます」
一輝がそうお礼を言うと。
「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ、ただ、その代わりに一輝くんの家では私のことを綾香と、そう呼び捨てで呼んで下さいね」
綾香はそう言ったので。
「……ええ、分かっていますよ、さすがにここで逃げる程、男として腐ってないです」
一輝はそう答えた。
その後、一輝と綾香は各々自転車に乗って、二人で一輝の家の前へとやって来たのだが。
「……あれ」
「どうかしましたか?」
一輝がそう呟くと、綾香がそう声を掛けて来たので。
「その、今日は僕の父は仕事が休みのはずなのですが、父の車が無いので少し気になったんです」
自転車を泊めるために車庫に向かいながら、一輝がそう言うと。
「あっ、そうなんですね、でも、私のお父さんも休日はよく出かけているので、そんなに不思議ではないと思いますが?」
綾香はそう言ったので。
「まあ、そうですね」
一輝はそう答えが、一輝の内心には一抹の不満があった。
何故なら、一輝の父親は、休日は家でダラダラと過ごしていて、買い物なども全て母親が済ませてしまうので、一輝の父が家を空けることなど滅多になかったからだ。
そんな疑問を浮かべながら、一輝が玄関を開けようとすると。
「あれ、鍵が掛かっていますね」
家のドアが開かず、一輝がそう言うと。
「もしかして一輝くん、家の鍵を持っていないのですか?」
綾香がそんなことを聞いて来たので。
「いえ、心配しなくてもちゃんと持っていますよ、直ぐに開けますね」
そう言って、一輝は鍵を取り出しながらも。
(でも、鍵が掛かってるって事は、多分母さんも出かけてるんだよな、でも、母さんの車はあるから、今日は珍しく父さんと二人で出かけてるのかな?)
そんな事を思いながら、一輝は家の鍵を開け一輝は綾香と共に家の中へと入った。
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