第30話 アニメ鑑賞

 その後、綾香は一輝と自分の二人分の食器を洗って片付けると、一輝と共にリビングで少しゆっくり過ごしてから。


 二人は再び、綾香の部屋へと戻って来ていた。そして、


「それで綾香さん、僕たちは今からなにをして過ごしますか?」


 午前中と同じように一輝の腕に自分の腕を引っ付けて、一輝の肩に頭を乗せて甘えてきている綾香に向けて一輝はそう質問をした。すると、


「私はこのままなにもせず、一輝くんと今みたいにのんびり過ごしていても問題ないのですが、一輝くんはなにかしたいのですか?」


 綾香はそんなことを聞いてきた。なので、


「ええ、僕も綾香さんと同じでこんな風になにもせず、のんびり過ごしている時間も好きですが、折角こうして綾香さんの部屋に来ているのですから、なにか恋人らしいことをして過ごしたなと、僕はそう思のですが」


 一輝は綾香に向けてそう言った。すると、


「そうですか……えっと、それならこのパソコンでなにかアニメを見ませんか?」


 綾香は自分の部屋に置いてあるノートパソコンを観てそんな提案をした。なので、


「そう言えば色々あって忘れていましたが、今日僕は綾香さんと一緒にアニメを観るために呼ばれたんでしたね」


 一輝がそう答えると。


「ええ、そうですね、一輝くんはアニメに詳しいようなので、なにか一輝くんのお勧めの作品があれば今から私と一緒に観ませんか?」


 綾香は一輝に向けてそんな提案をしたので。


「分かりました、そうしましょう」


 一輝はそう言って、彼女の提案を飲んだ。


 そして、綾香は自分のノートパソコンを立ち上げると、ネットを開いて彼女が月額で契約している動画配信サイトを開いた。そして、


「それで、一輝くんのお勧めのアニメはどの作品ですか?」


 綾香はそんなことを聞いてきたので。


「そうですね、綾香さんと一緒に観たい作品は幾つかあるのですが……因みに、綾香さんは今どんな感じの作品を観たいですか?」


 一輝も綾香にそう聞き返した。すると、


「今ですか? そうですね……私は普段は少年キックのような、派手で動きのある作品が好きで、そういったアニメを中心に見ているのですが、今はどちらかというと可愛い女の子が何気ない日常を楽しんでいるような、そんな風にのんびり観られる作品を観てみたいですね」


 綾香はそんな要望を一輝に出した。なので、


「それなら、きらきら系の作品がよさそうですね、その中でも僕が観て来た作品の中で面白かったのは……」


 そう言って、一輝は自分の記憶を辿ってから。


「えっと、それなら銀色スケッチはいかがでしょうか? 僕が観てきたきらきら作品の中でもかなり面白かったと思った作品ですし、なにより出て来るキャラクター達が皆とても可愛いので、きらきら系の作品の中でもかなりお勧めですよ」


 一輝が綾香に向けてそう言った。すると、


「ええ、それならこの後は銀色スケッチを観ましょう、私も名前は聞いたことはありますし、イラストも私が好きな感じのモノだった気がするので何時か観てみたいと思っていたのですが、中々観るキッカケが作れていなかったので、私としてもありがたいです」


 綾香はそう言ったので、こうして二人がこの後、観るアニメが決まった。






 そして、綾香はパソコンを操作して銀色スケッチの一話目を再生して、アニメを観始めた。


 そして、二人は暫くの間、肩を寄せ合いながら静かにアニメを観ていると。


「一輝くんはこの女の子たちの中だと、どの子が好きなのですか?」


 主要キャラクターが全員揃ったタイミングで、綾香は一輝に対してそんな質問を投げて来た。なので、


「この中で好きなキャラクターですか、そうですね……この中だと僕は銀髪の転校生の子が好きですね」


 一輝は正直にそう答えた。すると、


「この子ですか、確かに見た目も可愛くて性格も元気で明るいので、とても人気がありそうな子ですね」


 綾香はそんなことを言った。なので、


「そうですね、この子は主人公ではないですが、ネットでは主人公以上に目立っているとよく言われていますし、人気投票でも毎回ぶっちぎりの一位になるくらいの大人気キャラですね」


 一輝は普段よりも少し早口で綾香にそう説明をした。そして、


「因みに、綾香さんはこのメンバーではどの子が好きですか?」


 一輝は綾香にも同じ質問を返した。しかし、


「見た目で言えば一輝くんと同じ転校生の子ですが、一話目なので正直まだ決められませんよ」


 綾香は少し苦笑いを浮かべながらそう言った。なので、


「それはそうですよね、少し聞くのが早すぎました、すみません」


 一輝はそう言って謝った。すると、


「いえ、別に構いませんよ。ただ、一輝くんが転校生の子が一番好きだったのは私としては少し残念でした」


 綾香はそんなことを言った。なので、


「えっ、どうしてですか?」


 一輝が少し驚きつつも、綾香にそう質問をすると。


「だって、この子たちの中では多分、黒髪ロングヘアの子が見た目的にも性格的にも、私に一番近い気がすると、私はそう思ったので。でも、一輝くんはこの子よりも銀髪で明るい性格のキャラクターが好きだということは、現実でもそんなタイプの子が居たら、私よりもその子の方が好きになるということですか?」


 綾香はそんなことを言ったのだが、綾香は冗談でそんなことを聞いて来たのか、それとも本気でそう思っているのか一輝は判断できず、なんと言葉を返すべきか少し悩んだモノの。


「そんなことは無いです、その……こういうことを言うのはアニメのキャラクター達にとってとても失礼だと思うのですが、このアニメのどのキャラクターよりも、綾香さんは魅力的な女性ですし、綾香さん以上に魅力的な女性なんて一人も居ないと僕は思っているので、僕が綾香さん以外の女性を本気で好きになることなんてありませんよ、それに」


「それに、なんですか?」


 綾香がそう質問をすると。


「自分で言うのはとても情けないのですが、基本的に僕はモテない側の人間なので、綾香さんと同じくらい素敵な女性が僕の近くに現れたとしても、多分僕なんかよりも、颯太みたいなイケメンを好きになると思いますよ。だから、僕は綾香さん以外の人を好きになることはないですし、その人もきっと僕のことなんて気にも留めないと思いますよ。だから、綾香さんは安心して僕の彼女で居て下さい……僕にとって綾香さん以上に素敵な彼女なんて、多分この世の何処にもいませんから」


 一輝はそう言って綾香への思いを語った。ただ正直、こんなことを言っている間、一輝はかなり恥ずかしいと思っていたのだが。


 それでも、綾香に少しでも不安があるのなら、多少自分が恥ずかしい思いをしてでも、その不安を消してあげるべきだと思い、一輝は自分の恥ずかしい気持ちを押し殺してそう言った。すると、


「……一輝くん、ありがとうございます、でも一つだけ間違いがあります」


 綾香はそう言ったので。


「間違いですか?」


 一輝がそう質問をすると。


「一輝くんがモテない側の人間だということです、一輝くんは普段はあまり目立たないように振る舞っているので、女性の目に留まる機会は少ないのでしょうが、一輝くんはとても素敵な人ですし、ちゃんと女性にモテる要素を持っている人だと私はそう思いますよ、そうでなければ、私の初めての彼氏になれる筈はありませんから。だから、一輝くんはもっと自分に自信を持ってい下さい」


 綾香はそう言って、一輝を元気づけるような言葉を一輝に送った。しかし、


「ありがとうございます、綾香さん、ただ、僕は今までは綾香さん以外の女性には全くといっていいほどモテたことがないので、いきなり自信を持てと言われても少し難しいです」


 自己評価があまり高くない一輝は自信なさげにそう言った。すると、


「そうですか……それなら、一輝くんが自信を持てるように、私がお手伝いをしてあげましょうか?」


 綾香は何故か少し頬を赤くしながらそう言った。

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