第19話 プリクラと昼ご飯
そして、一輝と綾香の2人はプリクラを撮るために、プリクラ機の中へと入ったのだが。
「えっと、どうすればいいのでしょうか?」
機内に入ったものの、今まで一度もプリクラをしたことがない綾香は少し不安そうな口調で一輝にそう質問をして来たのだが、それは一輝も同じだった。なので、
「取りあえず、お金を入れてみましょう、そうすれば、多分画面で説明してくれるでしょう」
一輝はそう答え、金額は400円だったので、お互いに半分の200円ずつを投入口に入れて、プリクラを起動した。
その後、2人は色々と相談しつつも、取りあえず設定を終えた。
すると、ようやく撮影時間になったのだが。
「えっと、立花さん、ポーズはどうすればいいのですか?」
一輝がそう質問をすると。
「えっ、事前に決めておかないといけないのですか?」
綾香はそんなことを聞いて来た。なので、
「そういうわけではありませんが、そうしないと行きなりポーズを取れと言われても困りませんか?」
一輝はそう突っ込んだ。すると、
「3、2、1」
そんな話をしている内に、機械の中にそんなアナウンスが響いて来て、撮影時間が近づいて来た。なので、
「あっ、えっと、佐藤くん、どうしましょう!?」
綾香が慌ててそう言ったので。
「取りあえず、ピースでもしましょう!!」
一輝は慌ててそう言って、2人でピースをした。
その後もそんな感じで、2人は各々適当なポーズをぎこちなく取りながら、慌ただしく撮影を終えて、写真に落書きをするためにプリクラ機から出て来たのだが。
「随分と忙しい撮影になりましたね」
少し疲れた表情を浮かべて、一輝がそう言うと。
「すみません、佐藤くん、プリクラをしたいという気持ちが強かっただけで事前に何も調べずに来てしまいた」
綾香もそう言った。なので、
「気にしないで下さい、2人とも初めてのことなので、上手くいかないのは当たり前ですよ。それより、まだ落書きが残っているみたいなので、それを楽しみましょう」
一輝がそう言うと。
「……そうですね、終わったことをいつまでも嘆いてもしょうがないですし、そうしましょう」
綾香はそう言って、2人は落書きをするエリアへ向かった。そして、写真の画面を見てみると。
「佐藤くん、凄く目がおっきいですね、少し変ですが、これはこれで面白くていいですね」
綾香はプリクラに移っている一輝の顔を見てそう言って笑った。なので、
「そう言う立花さんこそ、結構目が不自然に大きくて、結構可笑しいことになっていますよ。やっぱり元の顔が可愛いので、余計な加工しないほうが立花さんは素敵ですね」
一輝もそう言い返した。すると、
「えっ、そうですか……その、佐藤くんも元の顔の方が、可愛くて素敵ですよ」
綾香は恥ずかしそうにしつつもそう言った。しかし、
「そこはかっこいいでは無いのですね」
一輝は少し苦笑いを浮かべながらそう言うと。
「ええ、私からすれば佐藤くんは可愛くて、でもちょっと頼りなくて、私が思わず傍でずっと支えてあげたくなるような、そんな素敵な彼氏ですよ」
綾香は笑顔でそんなことを言った。なので、
「立花さんに大切に思われるのは嬉しいのですが、やっぱり男としては、かっこよくて頼りになる男だと、そう思われたいです」
一輝はそう言って、自分の思いを口にした。すると、
「そうですか……それならこれからは、佐藤くんのかっこよくて頼りになるところも私に見せて下さい。そうすれば、今は無理ですが、いずれは私の佐藤くんに対する評価もそのように変わるかもしれませんから」
綾香は一輝に向けてそう言った。なので、
「……分かりました、あまり自信はありませが、立花さんがそう言うのなら、そんな姿を見せられるよう頑張ります、ところで立花さん」
「何ですか、佐藤くん」
綾香かそう聞くと。
「どうやらこの落書き時間にはタイムリミットがあるようで、このままだと何の落書きも出来ずに写真が出来上がることになるみたいですが、それでも大丈夫ですか?」
一輝はそう言った。そして、その言葉を聴いた綾香は少し慌てた様子で、
「あつ、えっと、そんな、折角佐藤くんとの初めてのプリクラなのにそんな終わり方は嫌です、っと、佐藤くんはどんな落書きをしたのですか」
そう言って、一輝の落書きをした写真を見て来た。しかし、
「えっと……正直、僕も一体何を書いたらいいのか……」
一輝は何の落書きもしていない写真を見て困った様子でそう言うと。
「えっと、特に思い浮かばないのなら、私に対する思いでもいいですよ」
綾香はそんなことを言った。なので、
「立花さんに対する思いですか?」
一輝がそう聞くと。
「ええ、好きとか、愛していますとか、結婚しましょうとか、そういう私への素直な気持ちを描いてください!!」
綾香はそう言った。しかし、一輝としてはそこまでのことを描く度胸はまだ無かったので。
「えっと、それなら……」
そう言って、一輝は「これからもよろしくお願します」と、そんな言葉を写真の下の方へ描いた。すると、
「やっぱり佐藤くんは、少し頼りないですね、でも」
綾香はそう言うと、写真の上に「勿論です」と、そんな返事を書いて、その言葉の横に小さくハートマークを描いた。そして、
「今の私たちには、これくらいの距離感が丁度いいのかもしれませんね」
綾香はそう言って、2人のとって初めてのプリクラを終えた。
その後、取りあえず目的を終えた2人はゲームセンターを後にして、そろそろ昼ごはん時になったので、取りあえず昼ご飯を食べようという話になり、飲食店が並んでいるエリアへと行って、綾香がお勧めだと言っていた、その中でも一番おしゃれな雰囲気がある喫茶店のような店に入った。すると、
「いらっしゃいませ、2名様でよろしいですか?」
店員にそう言われたので。
「ええ、大丈夫です」
一輝はそう言って、綾香と一緒に窓際の席に着くと、メニューを開いて各々が食べたいモノを先程の店員に注文した。
そして、店員が2人の座っている席を離れると。
「佐藤くんはこの喫茶店にはよく来るのですか?」
綾香は一輝に対してそんな質問をした。なので、
「いえ、普段はこのショッピングモールに来ても、ラーメン屋やメイクドナルドばかりに行っているので、このお店に来たのは今回が初めてです。因みに、立花さんはこのお店にはよく来るのですか?」
一輝は正直にそう答えて、綾香にそんな質問を返した。すると、
「はい、私はこういうおしゃれなカフェでゆっくり食事をするのが好きなので、このショッピングモールに来たら、よくこのお店で昼ご飯を食べていますよ」
綾香はそう答えた。なので、
「ああ、それは何と言いますか、僕の思っている立花さんのイメージ通りです」
一輝がそう言うと。
「そうなのですか? 因みに、佐藤くんの思う私のイメージというのはどういったモノなのですか?」
綾香はそんなことを聞いて来た。なので、
「立花さんのイメージですか、そうですね……休日は、カフェで一人、コーヒーを飲みながら、優雅に小説を読んでいそうなイメージです」
一輝がそう言うと。
「もう、それはちょっと盛り過ぎですよ、確かに私はそういう休日を過ごしている日もありますが、そんなに優雅でもないですし、私はコーヒーは苦くて飲めないので、いつも紅茶を飲んでいますよ」
綾香はそう言った。ただ、その言葉を聞いてやっぱりイメージ通りだなと、一輝がそう思っていると。
「お待たせしました、こちらサンドウィッチのランチです」
女性店員がそう言って、注文していた料理を持ってきたので。
「あっ、私です」
綾香がそう言って、ランチを受け取り、その後、一輝の注文していたオムライスのランチが届いたので、昼ご飯を食べ始めた。
そして、食事を始めて少し時間が経つと。
「立花さんがお勧めしてくれただけのことはあって、ここのランチはすごく美味しいですね」
一輝はそう言った。すると、
「そうですか、それならよかったです」
綾香はそう答えた。しかし、綾香は一輝に何か言いたいことがあるのか、彼女はそのまま食事の手を止めて何かを言おうか悩んでいたのだが、意を決したのか、綾香は一輝の方を向くと、
「あの、佐藤くん!!」
彼女は一輝にそう言ったので。
「何ですか、立花さん」
一輝がそう質問をすると。
「えっと……もし、佐藤くんさえよかったら、これからは佐藤くんのことを一輝くんと、そう呼んでもいいですか?」
綾香は恥ずかしかったのか、少し頬を赤くして視線を下の方に向けながらも、はっきりとした口調で一輝に向けてそう言った。
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