罰ゲームで学年一の美少女に告白したけど何故かOKされました

向井数人

第1章 罰ゲームの告白とその行方

第1話 罰ゲームの告白

(はー、憂鬱だ……)


 金曜日の放課後、体育館裏に一人でいた佐藤一輝さとうかずきは心の内でそう言って、小さくため息を付いた。


 彼は今から学年一の美少女と言われている同級生の女子に告白することになっているのだが。


 自分は別にイケメンでもないし、何か特別な才能を持っているわけでもない、何処にでもいる平凡な高校生だと自覚している一輝としては、告白したところで振られると分かり切っているので、一輝は正直、今すぐにでもこの場所から逃げ出したかったのだが。


(でも、こっちから言い出したことだし、そういう訳にもいかないよな……第一、立花さんには手紙の主が僕であることは伝わっているし、逃げても意味ないか……よし、言うだけ言って今日は潔く振られよう!!)


 一輝はそう思い、自分なりに決意を固めると。


「……あの、佐藤くん?」


「え!? あっ、はい!?」


 唐突に背後からそう声を掛けられて、一輝が慌てて振り返ると、そこには彼が今から告白する相手である、立花綾香たちばなあやかの姿があった。


 日本人らしい黒色のストレートなロングヘアに加え、少し幼さが残るが、TVで見る芸能人に負けないほどに綺麗に整った顔立ち、細身でスタイルもよく、出る所は出て引き締まる所はしっかり引き締まっていると制服の上からでも分かる程の抜群のプロモーションを持っていて。


 その上、勉強も運動も出来ると全く欠点らしい欠点が見当たらないのだが。


 本人は割と謙虚な性格で、そんな自分を無意味に誇ることもなく、誰に対しても笑顔で礼儀正しく接してくれるという、神の慈愛を一身に受けたと言わんばかりの完璧な美少女、それが、今彼の目の前に居る、立花綾香という女性だった。


 当然、そんな彼女が他の生徒たちから注目されない訳はなく、男子生徒の中には女神様と呼ぶほど彼女のことを神聖視している人もいるという噂も聞くし、今まで何度も告白されてきたが、その全てを断って来たという色々と凄い噂が絶えない女子生徒だった。


 そして、一輝がそんなことを思いながら、少しの時間黙っていると。


「えっと……それで佐藤くん、お話というのは一体何ですか?」


 そう言って、立花綾香は上目遣いで一輝のことを見つめて来た。しかし、


(うわっ、凄く可愛い)


 その姿を見ただけで、一輝は思わず彼女に見惚れてしまい、暫く言葉を失ってしまったのだが。


「佐藤くん、どうかしましたか?」


「あ、いえ、何でもないです!!」


 立花綾香にそう言われ、一輝は少し声を大きくしてそう答えた。そして、


(落ち着け、相手はあの立花さんだ、振られたって仕方がないんだ……よし!!)


 一輝は心の内でそう言うと、自分なりに決意を固め彼女の瞳をしっかりと見た。そして、


「えっと、その……立花さん!!」


「えっ、あっ、はい!!」


 一輝がそう言うと、立花綾香は一輝の声に押される様に少し声を大きくしてそう返事をした。すると、


「好きです!! もしよかったら、僕と付き合って下さい!!」


 一輝は大きな声でそう言うと、頭を下げて立花綾香に告白をした。


「……」


 しかし、一輝の告白を聞き終えても彼女は何も言わず、暫くの間、少し居心地の悪い空気が流れた。


 そして、この感じだと予想通り振られるんだろうなと、一輝がそう思っていると。


「えっと……こんな私でもよかったら、よろしくお願いします」


 彼女はポツリと、そんな言葉を呟いた。なので、


「あー、そうですよね、やっぱり僕なんかじゃ駄目ですよね……え?」


 そこまで言って、一輝は自分たちの会話がかみ合っていないことに気付いた。なので、


「えっと、立花さん、今なんと言いましたか?」


 顔を上げて、一輝が立花綾香にそう聞き返すと。


「もう、恥ずかしいので後一度しか言いませんよ」


 彼女は何故か頬を少し赤くしながらそう言った。そして、


「……えっと、こんな私でよかったら、これからよろしくお願いします、佐藤くん」


 立花綾香は少し照れ笑いを浮かべながら、それでも嬉しそうな表情でそう言った。しかし、


「え? あの、えっと……」


 当然、振られると思っていた一輝は、そんな彼女の言葉を素直に受け入れられず、少し狼狽えた様子でそう言った。すると、


「? どうかしましたか、佐藤くん」


 彼女は少し首を傾けながら一輝にそんなことを聞いて来た。そして、そんな仕草もいちいち可愛いなと、一輝が思いつつも。


「えっと、それはつまり、僕の彼女になってくれるということですか?」


 一輝が改めてそう聞くと。


「はい、私はそういうつもりで答えましたが、もしかして、今から一緒に買い物に行くのに付き合って欲しいとか、そういったお話でしたか?」


 彼女はそんなことを言ったので。


「あ、いえ、違います!! 俺の彼女になって欲しいという、そういう話です……その、立花さん」


「はい、何ですか?」


 立花綾香がそう聞き返すと。


「その、今から僕の頬を思いっきりビンタしてくれませんか?」


 一輝は唐突に彼女にそんなことを言った。そして、その言葉を聞いた立花綾香は、


「えっと……佐藤くんにはそういった趣味があるのですか?」


 少し困惑した表情を浮かべながら、彼女はそんなことを言った。なので、


「あ、いえ、違います!! 僕にそんな変わった趣味は無いです!! ただ、これが夢なら強い衝撃を与えたら、目が覚めると思ったので!!」


 一輝が少し慌てながらそう言った。すると、


「成程、そういうことですか。ただ、残念ながらこれは現実なのですが、今の佐藤くんには何を言っても信じてもらえそうにないですね……あ、そうです」


 そう言うと、彼女はスカートのポケットからメモ帳とペンを取り出すとメモ帳を開いてから、そのページに何かを書き込んで、そのページを破ると。


「えっと、佐藤くん、これをどうぞ」


 そう言って、彼女はメモの切れ端を一輝に渡して来たので、一輝はそれを受け取った。


 そして、そのページを見てみると、そこには、立花綾香と綺麗な文字で書かれた名前の下に11桁の数字の列が書かれていた。なので、


「えっと、何の数字ですか、これは?」


 一輝が彼女にそう聞くと。


「私のスマートフォンの電話番号です、家族以外の人には誰にも教えていませんが、彼氏である佐藤くんになら教えても問題ないと思いました。なので、もし佐藤くんが家にいる時、私とお話をしたくなったら、遠慮せずこの番号に電話を掛けて下さい」


 彼女はそんなことを言ったので。


「え、あ、はい……分かりました」


 一輝がそう返事をすると、綾香はその答えに満足したのか。


「それでは、そろそろ私は家に帰りますが、これからは恋人としてよろしくお願います、佐藤くん」


 綾香は可愛らしい笑顔を浮かべてそう言ったので。


「え、あ、はい、よろしくお願いします」


 一輝はそう答えを返した。すると、綾香は一輝に背を向けて、その場を後にしようとしたのだが。


「あ、そうだ、佐藤くん」


「あ、はい、何ですか?」


「その、出来れば私たちが付き合っているということは、他の人には内緒にしておいてもらえませんか? 他の人に知られるのは少し恥ずかしいので」


 彼女は一輝に背を向けたまま、そんなことを言ったので。


「あ、はい、分かりました。ただ、そんな心配しなくても僕なんかが立花さんと付き合っていると言っても、誰も信じないと思いますよ」


 一輝が少し自虐気味にそう言うと。


「そんなことはないと思いますが……とにかく、これからよろしくお願いします、佐藤くん……電話、待っていますから」


 立花綾香はそう告げると、一輝を置いて一人、体育館裏を後にした。






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