サボテン
弱虫で 泣き虫で 臆病者で
どうしようもないガキだった
思い出す度 我ながら情けなくなってくる
だから 思い出さない事にしている
今の俺が 強くて勇気のある男だとは到底思えないが
泣く事は滅多になくなった ……流石に
最後に流した涙は どこへ行った?
いつの事かさえ 思い出せない
まるで…… 砂漠だ
その前は豪雨だったが
小雨 土砂降り 通り雨 俄か雨
涙にだって種類はある
悲しい時の涙
痛い時の涙
恐怖で流す涙もあれば 嬉し涙もある
……違う
俺はそんなものを いちいち憶えちゃいない
俺が流したのは いつも悔し涙だった
ウスノロが人前で失敗をやらかす
周りの奴らが一斉に笑う
ウスノロのクソガキに 奴らを黙らせる力はない
拳を握り締めて 唇を噛み締めて
ただ泣くだけだ
悟ったのは 己の無力さだけだった
でも ……十分だった
力なんて 俺には必要のない代物だ
俺を 俺たらしめているもの
それが分かっただけでも
ウスノロの弱虫には感謝しないとな
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