可愛さ余りて

 偽善の君子


 お前は日和見の両眼で城下を睥睨する


 正義を合言葉に


 他人の喧嘩に加勢しては


 両者の怪我を一層ひどくする


 裁判官気取りで槌を振るう


 その一方で


 根深い殺し合いを無視する


 女神は泣いている




 騎士の娘


 お前はかつて幾つもの井戸を共有した


 博愛のもとに


 他人の領分に土足で上がり込み


 力で会話しようとした


 皆がお前を恨んでいる


 しかし一方で


 皆がお前を羨む


 女神は嘆いている




 火吹き竜


 お前は自らの巣を焼こうとする


 勇者を装い


 狂える放火魔を誘っては


 自身を焦がす炎で自身を守っているつもりでいる


 隣人にまでその方法を勧める


 一方では


 火傷を治すのに必死なのに


 女神は怒っている




 着飾る女


 お前の価値はその身に纏う石の価値


 権利を主張して


 我が身を売っては


 幻の報酬に一喜一憂する


 石ころが輝いて見える


 鏡像さえも


 お前にとっては現実


 女神が嘲笑う




 啞なる詩人


 お前は先祖の遺産で世界を旅する


 友情を信じ


 友の楽器を叩き壊した後


 自らの楽器を使うよう仕向ける


 彼が左利きであっても


 どうでもよい事


 お前は他人の楽器は拒否する


 女神も背を向ける

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