終わるものたち

 諦めろ


 お前はどこにも存在しない


 歴史は繰り返すが


 月日は満ちる事を知らない


 うずたかく積まれる暦の記録も


 決して崩れ落ちたりはしない


 そんな飽き飽きするような永い永い時を


 お前は何者かの来訪を期待しているのだろう


 数え続けている


 虚しい作業を見るにつけ


 天使でさえも溜め息を禁じ得ない


 悪魔はただ含み笑いで見守り続ける


 奴らは数を数えたりはしない


 その代わりに


 お前に思い出させはする


 夢が真に夢であった日々を


 だがお前が思い知る事はない


 現在いまこの刻が


 過去の続きであるのと同時に


 未来へも続く道なのだという事を


 今更悟ってみたところで


 真理など見付かろうはずもない


 もしお前が見つけたと言うならば


 お前は嘘つきだ


 何故ならば


 真実は論理の形をしていない


 現実などというものは


 混沌の海の表層に浮かんで来た


 一点の灰汁に過ぎない


 お前はさしずめ


 遠浅の溺死者だ


 真実さえもお前を発見してはくれまい


 哀れなり


 時の夜の私生児よ


 お前には祈る事も許されぬ


 どれ程虚勢を張り


 自らの努力を声高に誇ってみせても


 永遠の中にあっては無力もはなはだしい


 お前に唯一出来る事といえば


 燃え落ちるゆりかごの中で


 夢見る事ぐらいのものか


 お前は元々炎の中より生まれ出で


 炎を糧に己を育み


 炎を操りて同胞どもを焼き殺し這い上がって来た身


 今はお前が炎の糧となる番だ


 灰燼に帰せ

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