いやもう、最高だった。全てが最高だった。
イサキさんの文章が異常に上手いことはもちろん前々からよく存じていたわけですが、久しぶりに読ませてもらった本作、失礼な言い方で恐縮なんですけども以前よりも格段に向上しているんじゃないでしょうか。とにかく読ませる読ませる。文章がするすると頭に入ってくる。
かぐや姫のパロディになってるんですけど、一方には恋愛感情的な意味で、一方には天から二物も三物も与えられた相手への憧憬という意味で、2人の主人公が同じ対象に手を伸ばそうとして届かないっていう、この構成自体がすごく美しくて、なんならこれで普通の話を書けば普通の短編小説として文芸誌かなんかに載ってたって全くおかしくないんですけど、主人公たちのやってることが酷すぎる(褒め言葉)ので前編通してもう笑いっぱなしなんですよね。
しかも何がすごいって、こんだけとんでもない内容なのに、根底にある文学性のようなものは全く損なわれないというか、この2人はこうするしかなかったんだという必然性があるおかげで、全体の主題が台無しになるどころかむしろ強化されてるんですよ。
古典作品を現代を舞台にしてパロディ化するって、それ自体は割とよくあるタイプの作品なんですけど、パロディにした上で、笑える作品にした上で、しかも本来のテーマが霞んでしまうということがないってとんでもない技巧だと思います。
いや、本当に素晴らしかった。星三つじゃとても足りない。