Round 25 閉店時間、実践終了、勇者追放
勇者が敗北を自覚すると、背負っていた聖剣から光が解き放たれ、店内や銀髪の魔女たちへ戻ってゆく。
「魔力じゃ!」
「戻ってきましたぁ~」
「…………ふぅ」
白銀シルバ――銀髪の魔女も自分の手を握り、魔力が戻っていることを確認している……ホントに戻っているかは知らんが。
対する勇者の持つ聖剣は光を失い、灰髪の持つ水晶は粉々に砕け散った。
「くそっ、このなまくらが!」
「ぼぼぼぼぼ、ボクの魔具ぅ……⁉」
完全勝利である。
1日打てずじまいだったが、この面倒な奴らを黙らせるならいいか……
ついでに異世界に戻ってくれるわけだし。
「み、認めねぇぞ! 正々堂々戦ってもねぇお前のやり方なんて認めねぇっ!」
〇往生際悪くて草
〇負けは負けだから……
〇じゃあ勇者君、脱ごうか
〇その腹筋は見た目だけか?
……なんだか変な視聴者が湧いているからそろそろ締めないとカオスになるな。銀髪の魔女の方へ視線を向けると、冷ややかな目で肩をすくめた。
「やれやれ、打たずに勝つというのは及第点ですが満点は与えられませんね」
「え~そういうシルバさんはどうだったのかなぁ?」
魔女は静かにレシートを見せる。
──33333玉。
「なっ」
「そ、そ、そんナ……ぁ」
「……マジ?」
「私は神に愛されてますので」
〇普通に勝っててワロタ
〇クッソ勝ってて草
〇シルバ、お前がナンバーワンだ
〇じゃあスミレちゃんも脱ごうか……
〇男2人が脱衣か
脱がねぇよ……!
『打たずに勝つ』という
「私が普通に実践していたことは配信ですべて流れていますよ? これでも正々堂々ではありませんか、勇者様ぁ?」
出玉の書かれたレシートをひらひらと見せびらかし勇者を煽るシルバ。
顔には出さなかったようだが、割りとイラついていたようで……
「私が勝った場合のこと、覚えていますよね?」
魔女が懐から杖を取り出し、虚空へ一振り。
「我、異なる世界を繋ぐ者なり。開け、我が世界の扉──!」
先端から放たれた光が一枚の扉を作り出す。その先にはまたもや見慣れぬ光景……の向こうから、見知った顔の少女が2人。
「魔女殿ぉ!」
「魔女様ぁ~」
金髪姉妹が異世界を越えて現れた。
〇金髪美女とロリが来たぞーっ!
〇wktk
〇どんだけ出演するんだよw
〇みんな可愛くて草
〇女騎士の方もデッッッッッッッッ
「うげっ、なんで騎士が⁉ お前は俺様が倒したはずじゃ――」
「1日寝たら回復しました!」
「と、とんでもないデス……」
なにやらいざこざがあったらしいが……まぁどうでもいい。
こちらが話しかける前に、女騎士は勇者と灰髪の魔女の首根っこを掴む。
「聖剣まで持ち出されては困ります! それに、勇者様が王国に戻って来たことを知って、旅先で粉をかけたご婦人方が殺到しているので責任を取ってもらいますよ」
「な、なんだとぅっ⁉」
「灰髪様もッ! 勝手に魔具を持ち出して国中大騒ぎなんですよ⁉ 国の結界まで無茶苦茶にして、大変なんですから!」
「そ、そ、それはデスね……」
妹の方が灰髪の魔女を詰めると、視線が右往左往。弁解の間もなく女騎士は2人を連行していく。
「待て! 俺様はまだ魔女の弟子と決着が――」
「先生はぱちんこでお忙しいのでおやめください。せんせっ! 今日はご挨拶もできず……」
「あぁ、いいよ別に。さっさとその2人連れてっちゃって」
「はい! では失礼します!」
「じゃあみなさんも、お休みはあとちょっとですから早く帰って来て下さいね!」
ズルズルと引きずられる勇者と灰髪の魔女はなにやら言い訳をしているものの、有無を言わさぬ女騎士の筋力で異世界に連行されていった……
◇ ◇ ◇
現世から追放された勇者を見送ると、時刻は閉店間際。パチンカスらしくさっさと貯玉だけして再び店外へ。配信終了の挨拶である。
「あーぁ、結局打てずじまいだった……」
「まさか打たずに勝つとはのぉ」
「予想外でした~」
「終わりよければすべてよしです」
良くないんだが?
このまま貯玉したからいいものの、交換したらむしろ損なんだからな。
〇マジで異世界⁉
〇勇者たち消えたぞ
〇あの金髪は一体……?
〇ただの演出だろ
〇今度はちゃんと打ってほしい
〇オトメちゃんとマオちゃんも打ってほしかった
配信コメントは様々な意見が流れ、白銀シルバという存在が十分に受け入れられていると感じる……いや、受け入れられてんのかこれ?
「さて、そろそろ配信終了と……大事なお知らせです」
白銀シルバによる重大発表とは――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます