Final Round【全回転】どいつもこいつも、パチンカス


 日常はすぐに戻った。

 そもそも訳のわからん奴らがいなくなっただけだが。




 1   1   1





 魔女がマイホールから消えて3週間が経つ。金髪姉妹もいなくなり、平和なパチンコホリデーを送っていた。


(ずいぶんにぎやかなパチンコだった……)


 ずっと一人で打ってたからな。

 最近がうるさかったんだ。ホール内で騒ぐのも迷惑!




 2   2   2




「相変わらず釘がキッついなぁ……」



 

――これが魔女による攻略法その1……『風の絨毯インビジブル・ロード』――




 考えてみれば、あの魔法をずっと使えれば最強じゃね? と思ったが、クールタイムが要るなら意味ないか……回転数上がんなぁかなぁ。


「はは、すっかり魔法に毒されてんの」


 ひとり、ごちる。

 なんだかんだで、あのパチンカスの魔女とのやり取りは楽しかったのかも。




 3   3   3




 ……いや、多分違うと思う。違うと言っておきたい。


「たはぁ、呑まれた。台変えるか……」


 久々に世紀末救世主にでもなるかな……と、ひと島通過しようとした、その時。


「おい魔女、なんか金色のが出たぞぃ!」

「その程度で騒いでいては魔族の名が廃りますよ」




 4   4   4 




 ――あ?


 聞き覚えのある凛とした声と、聞いたことのない女の声。

 まさか……まさかな? 聞き間違い……だよな?


 ゆっくり、ゆっくり来た道を後ずさる。


 島の角、そこにいたのは黒ローブにとんがり帽を被った銀髪の魔女と、

 頭から2本の紅角を伸ばす、紫のドレスを纏った黒髪の少女。




 5   5   5




「おや、貴方も来ていましたか」

「誰じゃ、この人間」

「私の弟子です、有望株」

「いやいやいやいや、いやいやいやいやいやいやいやいや」


 戻ってたんかい!?


「お前……魔王倒しに帰ったんじゃ!?」

「あぁ、その魔王ならここに」

「おう、お前が先に弟子なら我の兄弟子じゃな!」


 清楚な恰好とは正反対に、魔王とやらはガハハと笑う。即座に兄弟子認定され、否定する間もない。




 6   6   6




 マジか……魔女、ガキ魔女、女騎士ときて魔王っすか。

 どうなってんだこのパチンコ屋は。


「さ、今日はどんな魔法を使いましょうか」

「さぁさぁ兄弟子、貴様も座るが良いぞ!」


 こいつらがどんなやり取りからここへ来たのか……まぁそんなことはどうでもいい。考えたところで無駄である。



 ここはパチンコ屋で、

 俺は……俺達はただ、パチンコを打ちに来ているんだ。


「しゃーねーな、兄弟子のヒキ見せてやるよ」

「威勢が良いな! 我の前で興じてみるがよいぞ!」


 一般人とか、魔女とか、魔王とか。

 それは一旦置いといて……


「では今日も、攻略します」


 魔女は軽やかに、杖を振るう。

 ここではどいつもこいつも、パチンカスなのだ。








    7   7   7

  《 congratulation 》













「……って、いい風に終わろうとしてるけどパチンコ打ちたかっただけだろ!」

「おや、バレましたか」

「どう考えても戻ってくる理由なんてそれしかねぇからな!」

「心配なさらずに、今日はちょっと台の様子を見に来ただけです」

「……やっぱお前、パチンカスの魔女だわ」

 




   真・パチンカスの魔女(了)?

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