赤ずきんとオオカミ卿〜おとぎ異世界世直し草紙〜
凪司工房
プロローグ
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ランタンで照らし出された彼女の伸ばした程良い肉付きの右足の
「あぁ」
と、彼女はわざとらしく声を
「指だけでいいの?」
そう問うてやると彼は「否」と短く
この薄暗い部屋でもランタンで照らし出された彼女の表情くらいは見えるだろう。それは彼を見下す軽蔑の眼差しだ。汚物を見るその愛情ゼロの眼差しを、しかし彼は
「いい」
それだけ言って舌を這わせる。下ろしたての絹の味しかしないだろうに、ぺろぺろと
――もう二度とこのストッキングは使えないな。
内心で彼女はそう嘆息し、ぺろぺろ、ぺろぺろと舐め続ける彼の顔を
「ぐわ」
情けない蛙のような声を上げて倒れた彼は後頭部を床に打ち付けるが、その痛みすらも
「ほんと、欲しがりだねえ」
お決まりの台詞を口にしながら心の中に唾を吐きつけ、彼女はベッドサイドに置かれた
「あぁ」
叩く度に彼は声を漏らす。
「あぁ! あぁ!」
それが気持ち良いらしい。
何度叩いてやっただろう。
耳を
――何とも良いご身分だ。
彼女はそう一人ごちると、改めて王子であるその男の恥態を見下ろした。見た目だけなら質の良いブロンドに白磁のような綺麗な肌、涼し気な目元としゅっとした鼻と唇、そして
けれど彼の体には縄が掛けられていた。それはつい先程まで両腕を縛り付け、身動きできなくしていたものの一部だ。白い肌に赤い縄痕が刻まれており、今は胸元と腹部に巻き付いて、そこから先がだらりと垂れている。
彼女はこれが一国の王子の本性とも呼ぶべき姿かと思うと、呆れて笑みすら浮かばない。
「何笑ってんのよ」
唾液でべたべたになったストッキングの足先で何度もその腹や脇を蹴りつける。本人は顔を蹴ってくれとばかりに見上げて顎を突き出すが、そんなことしてやるものかと彼女は臀部を蹴り飛ばす。
一体この変態王子のどこに惚れるというのだろうか。
それでも彼女は、この王子とある女性を結婚させなければならない。何故なら――。
「やってやろうじゃないの。あんたをあたしの下僕として育て上げ、この物語をちゃんとした結末ってやつに導いてやるわ」
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