ラスボスはいつも幼馴染の君になる!
遥海 策人(はるみ さくと)
01 屍神
「私たちが負けたら、世界は闇に落ちる」
ある日から、日本に未確認の存在が襲い掛かるようになった。
―正体不明の敵は「
未確認の存在が出現すると同時に、特殊な力を帯びた二人の生徒が現れる。
-私たちは神に祝福され、神技を得た-
「行こう、レイラ」
「行きましょう、夢幻」
―僕と君で「
と二人で格好つけて出撃したまではよかった。
―どうせ脚本通りの未来なのだから―
でも、まさか…レイラが襲われるなんて思ってもいなかったんだ。
そして、何よりもショックだったのは
「ばっかじゃないの!」
とレイラに3回も言われ、グーのパンチで殴られたことだった。
夢幻は無限に勝る強大な力を手に入れた。この世界では夢幻少年のパラメータはなんでも無限にできて、攻撃力も防御力も最強のはずなのに、好きな人に嫌われたんじゃないかという心のダメージはやっぱり痛かった。
******
数時間前…
「視聴者のみなさん。ご覧いただけますでしょうか?」
カメラがズームして捉えているのは海の中の黒い闇。突如として出現した謎の現象である。ヘリに乗るリポーターは興奮した様子で語る。場所は房総半島沖、東京湾の手前。海の銀座通りと言われるこの海域にたくさんのヘリコプターが飛び交っていた。
「海に正体不明の謎の黒い物体が出現しております。軍ではいまだ生物とも、異常気象とも不明であるとのこと」
カメラは近くを航行するイージス艦を映し出し、奇妙な存在が船を丸ごと飲み込みそうなほど大きいことを示した。
「この存在は東京へ向けて時速30キロで北上中です」
******
首相官邸、未確認海洋物体対策本部。
「あ、総理来ましたよ」
記者の持つカメラのフラッシュが一斉に
「総理、接近中の謎の物体はどうするおつもりですか?」
「あの物体の正体は? 敵の潜水艦ですか?」
「前回の災害では対策が遅れましたが、今回は大丈夫でしょうか? 総理、総理、お答えください!」
記者が詰め寄るも、そのまま総理は官邸に入って行ってしまう。
対策本部内。
「総理がまいります。全員ご起立ください」
一斉に無言で立ち上がる閣僚たち。国防軍の制服を着た軍人も何人か部屋にいた。会議室の扉が静かに開かれ、総理が中に入ってくる。
「これより、未確認海洋物体対策会議を開催いたします。全員着席」
総理は真っ先に国防大臣に目を向ける。
「えっと、まずは
「はい、現在海軍が追跡中の未確認海洋物体については現在においても正体はわかっておりません。度重なる警告を無視し、すでに領海内に深く侵入。依然として潜航したまま東京湾内への侵入ルートを維持しております。防衛出動を要する事態であると考えており、速やかなご決断をいただきたい」
「あれは潜水艦なのか?」
「音紋解析によればスクリュー音はなし。しかし漂流しているわけではなく何らかの推進装置をもって航行しております。一方で、潜航深度数メートルを維持しているため上空からの観測である程度の外形が分かります」
映し出される偵察機の画像には黒い影がしっかりと映っている。
それに対して総理は質問した。
「それで、どうするの?」
「だから、防衛出動してください。『はい』と言っていただければあとはやっておきますから」
「もうちょっと様子見てもいい?」
「本当に優柔不断ですね!」
******
山手線の電車内。金髪の男がスマホの画面を見ながら頭をポリポリと搔く。
「これ、なんかやばそうじゃね?」
と、隣にいる
「何これ? うーん、生き物っぽくないね。このサイズは原子力潜水艦じゃないか?」
「潜水艦だとなにかやべーの?」
「モノにもよるけど、一隻で日本くらい滅ぼせるくらいのミサイル積んでたりするからなぁ~」
知ったようなことを語り始める渕メガネの男であった。
「だったら、マジやべーな。こいつここから100キロくらいしか離れてないらしいぜ」
******
再び首相官邸。
「えー、現場からの新しい報告によりますと、潜水艦ではないよくわからない何かが接近しているそうです」
より難しい選択。無言になる総理。しかし、時間もないのでしびれを切らして防衛大臣が急かす。
「総理、物体はすでに領海内です。対策が遅れればまた支持率が下がりますよ?」
支持率と聞いて急に慌て始める総理。
「あ、あぁ。なら、対策はなにかあるの?」
唐突に話を振られる軍服組。それに対して慌てることなく統合幕僚長の大勝が説明を始める。
「はい、迎撃プランはすでに洋上阻止と地上迎撃の二つを用意しております。洋上阻止作戦については
「ご説明に預かる南海です。洋上阻止プランは4つございます」
プラン1:海上および航空戦力による物理的な
「対応としては王道です」
「航行中の民間船舶とか大丈夫?」
「現状、それなりにリスクがあります。避難が完了していない段階では限定的な攻撃手段しか実施できません」
「うーん、とりあえず次も聞かせて」
プラン2:ロープや網での
「海に浮遊する物体はどんな大きさでも移動することができます」
「でも進んできてるんでしょ? あんな強力な推進力があっても効果あるの?」
「時間くらいは稼げるかと」
「えぇ…、まぁ、状況によっては取りうる対策ではあるか…」
プラン3:大型艦艇で横から押して進路の
「現在、海軍では3隻のイージス艦と4隻の護衛艦が未確認海洋物体を追跡しております。体当たりするつもりで強制転進を迫ることも可能です」
「あれが敵の兵器であって爆発でもしたらどうする?」
「沈みます…」
「だよね…」
プラン4:対話による和解
「殴ってもだめなら対話で行きましょう」
「相手は喋れるのか?」
「できるならば、ここには外務省の役人がいるでしょうね…」
「えぇ…、なんでプランに入れたの?」
結果として総理は困り果てるのである。ぶつぶつと念仏でも唱えるようで、一向に決断をしようとしない優柔不断な総理であった。
「総理、早く何かしないとまた弱腰とか言われますよ?」
こうして、いつものように閣僚たちにせっつかれる。
「そう言われてもねぇ…、責任取るのは僕なんだよ?」
「責任取れる人だけが総理になれるんですよ?」
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