第78話 清水の告白。

 レストランであったことを…俺はどうしたらいいのか、ずっと悩んでいた。

 しかも、白川にいきなりキスをされるなんて…。本当に分からない。楓と付き合ってるのに他の男とキスをするのか…? 一体なんなんだ…? そこまで花田さんを警戒してるとは思わなかった。二人の間にあったことは分からないけど…、白川の憎しみはちゃんと伝わっていた。


 あの日、俺と目を合わせた白川は本気でそれを言っていたから…。

 何か起こるかもしれない。


「よっ、尚」

「楓…」


 いけない…。楓の顔を見ると、白川とあったことを思い出してしまう。


「どうした? 元気ないな…」

「そう?」

「柏木くん…! おはよう!」

「清水、おはよう」

「今日は3人でお昼食べない? 久しぶりにさ」

「分かった」

「おっ! 俺! 葵ちゃんから電話がきたぞ…!」

「はいはい…」


 そして楓が教室を出た後、隣には俺を見つめている清水が残っていた。


「……」


 他の人より早く来た方が、リラックスできる時間も増えていいと思う。

 花田さんと一緒にいるのも好きだけど…、ずっとそばに誰かいるのは息苦しいからな…。たまにはこんな風に何もせず、ぼーっとしたいんだ…。


「柏木くん…」

「うん?」

「最近はあの人と上手くいってる?」

「え…っと、うん」

「……あのね。私、尚くんに話したいことがあるから…」

「あっ、うん」

「場所を…ちょっと…変えようかな?」


 珍しいな…。俺に話したいことがあるなんて…。

 そのまま屋上にきた二人は晴れた空の下で話を続けた。


「それで、清水が話したいのは何?」

「あの…ね。柏木くん、あの人と別れてほしい…。私ももう無理だから…」

「無理って…?」

「私…、ずっと柏木くんのことを尾行していたから…」

「尾行…? 俺を? どうして?」

「あの人と約束をしたから…」


 じゃあ…、前に白川と話していた時も…。その後ろには清水がいたってこと…?

 どういうことだ…? なんで、清水が俺の尾行を…。なんの得もないはずなのに。


「あの人ってもしかして…」

「うん…。柏木くんの彼女だよ…」

「何か言われた…? でも、あの日から何もなかったと思うけど…?」


 もう疲れた顔なのに、無理して笑みを浮かべる清水だった。

 花田さんは一体清水に何をさせたんだ…?


「あれから一週間後、あの人が私の前に現れたよ…」

「……」

「前にあったことはなかったことにするから、頼みたいことがあるって…」

「それが…」

「そうよ。柏木くんを尾行して、学校から家に帰る時まで…。何をしたのかを、あの人に報告するように約束をしてしまった…」

「……だから、白川がそう言ったのか…」

「そうかもしれない」

「でも、清水がどうして…? なんの得もないだろう?」

「あの人は私に…。ずっと好きだった柏木くんの写真を…送ってくれた…」

「……」


 ずっとそばにいたのに、裏ではそんなことをしていたのか…。

 これじゃ、どこに行ってもバレるしかないよな…。花田さんがそこまでして手に入れたいのはただ俺という人だけ? なんで? 俺にそんな価値はないはずなのに、ただ助けてあげた時の情が花田さんをそうさせたのか…?


 なら、白川が言ったのはこれか…? やばいのは…。


「でも…、私…やはりこんなことはよくないと思うから。もうやめたい…。その前にちゃんと謝りたかっただけだよ」

「そうか…、ありがとう。話してくれて…」

「ううん…。私こそ、ごめんね」


 どこから間違ったのか…。

 俺だけじゃダメなのか…?


「あの人は…、怖い人だよ。柏木くん…、気をつけて…そうしないと…」

「そこまで…、もういい。言わなくてもいいよ…」


 どんどん顔色が悪くなる清水に、花田さんのことを聞くのは無理だった。

 どうやら、精神的なストレスがすごかったかもしれない…。


「……はあ、なんで私あんなことを…」

「し、清水…?」

「柏木くんが好きだった…。私が変なことを言っているのは分かってる。でも、あの人は私の心を利用してあんなことをさせた…。馬鹿馬鹿しい…」

「うん…。もう、そんなことはやめよう…」

「うん…。ごめん…。ごめん…柏木くん…」

「いや…。話してくれて、ありがとう…」


 これは帰ってからちゃんと話してみた方がいいかもしれない。

 もうあんなことはやめようって言っても、花田さんが聞いてくれるかどうか分からない。でも、その前に白川にもう一度聞いてみようか…。花田さんのこと、二人の間に何かあったのかを…。原因を知らない俺が、何をしても無駄だから…。


 そしてお昼を食べる時、俺は楓のスマホを借りて白川に電話をかけた。


 ……


「あれ? 先輩? どうしました?」

「白川、俺に二人の話を聞かせてくれ…」

「いきなり? そんなことを…?」

「清水が俺に話してくれた…。自分が菜月に操られていたことを…」

「へえ…、あの人やっと告白しましたか? 自分がやっていたことを」

「白川は知っていたのか?」

「はい! やめさせるつもりだったけど、それが上手くいかなかったから…」

「そうか…」

「じゃあ、先輩。話してあげますから今日の7時半、カフェで会いましょう!」

「うん…」


 電話を切って、すぐ花田さんにL○NEを送った。


 尚「今日は…友達と約束があって、遅くなるかもしれない」


「……」


 怖い…。

 既読になってるけど、すぐ返事がこない…。


「おい! 尚! 葵ちゃんとはちゃんと話したのか?」

「うん…。ありがとう…」


 ちょっと嫌な予感がする。

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