第51話 陰から…。
朝からベッドの軋む音が響く俺の部屋…。
花田さんに抱かれたまま、朝7時からずっとイチャイチャしている二人だった。もう季節が春になって、布団をかけなくても寒いと感じられないからか…。退廃的な私生活を楽しむ花田さんが、今度は俺にもっと恥ずかしいことを要求してきた。
何度も自分を裏切った謝罪として、寝る時は下着以外に禁止って言われた。
昨年はパジャマとか買ってくれたけど…。今はあの時と違って誰にも言えない関係になってしまったから、さりげなくこんなことを要求するのもできる。朝から俺を襲う花田さんに、いちいち服を脱がせることは面倒臭いかもしれない。
そして、首のところや鎖骨のところが花田さんのせいで真っ赤になってしまった。
付き合うって…、元々こんなことなのか…?
「—————っ!」
「もう…、無理。菜月無理…、休ませて…」
「へへ…、朝から熱いね…。でも、私はちょっと足りないのに…」
「どれだけ飢えてるんだ…?」
「尚くんと丸一日あんなことやこんなことがしたい…!」
「勘弁して…」
「大袈裟…、女性にも性欲ってのがあるからね…? 尚くんは恋愛経験ゼロだから分からないだけ!」
「うん…? それは菜月も同じぃ——っ」
いきなり口を塞ぐ花田さんが俺の上に乗る。
「変なことを言ったら、また食べちゃうよ?」
「勘弁して…。あっ、そうだ…。今日は楓と外で会う約束をしたけど、行ってきてもいい?」
「あ…、同じクラスの友達だよね?」
「うん。外でご飯を食べたり、本を買ったりする予定…」
「いいよ。早く帰ってきてね?」
「うん」
……
頬にチューされた後、楓と約束した場所に向かう俺だった。
「あれ…? 先輩、元気ですね?」
そして俺が近所の遊び場を通る時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
ブランコに乗っている私服姿の白川。笑みを浮かべる彼女は、普段とは全然違う可愛い格好をしていて、今日はデートでもあるのかと思った。
「……ん? 白川…? どうしてここにいるんだ…?」
「やっと会えましたね…? 先輩」
「俺に何か用でもあるのか?」
「あの日から時間がけっこう経ったのに、バイトも学校も来ないから…。もしこうなったらどうしようと心配していました」
微笑む顔で首を絞めるフリをする白川。
「なんの意味…? 俺が死ぬかもしれないってこと…?」
「あら…、かしこ〜い! 正解! だからうちに来ませんかって勧誘したのに、先輩は私のことを無視してすぐ行っちゃいましたよね…?」
一体、白川は花田さんとどんな関係なんだ…?
「あの日は、誰か私たちの尾行をしていましたよ。知ってましたか…?」
「いや…、全然…。知らなかった」
「本当に危険な人と同居していますよ? 先輩は…」
「……白川が菜月とどんな関係なのかは知らないけど、はっきり言ってくれないなら俺の前で話さないでくれ。余計に気になるから…」
「まだ、教えるには早いんですよ? 今は少しずつ私と楽しいことをしながら、私と言う人に慣れてみませんか? せんぱい!」
その話に、いきなり腹が痛くなってしまう。
もう体に刻まれたことなのか…? それは「浮気」という行為…、すぐ白川と前にやったことを思い出した。心臓がドキドキして、カッターナイフに触れた時の感触が生々しい。いけない、いけないのに…。俺は花田さんのあの顔を、また思い出してしまった…。
「あら、あの顔は…。やっぱり彼女さんに何かされましたよね…?」
「……白川とは関係ないから、俺はもう行く」
「どうやら、今日はあの人がいないようで…。私も連れて行ってください!」
「断る…」
「へえ…? ひどい…、こんなに可愛い後輩が連れて行ってくださいって言ってるのにすぐ断るなんて…」
「関わりたくない」
「……ムッ! 私に興味ないってことですか?」
「それより、彼女いるから…。また嫌なことに巻き込まれたくないだけだ」
そう、俺はもう嫌なことに巻き込まれたくない。
一度痛い目に遭ったから、その解けないパズルは自分の力でどうにかしてみるつもりだった。白川が何を知っているのかは分からない。それでも、やっと手に入れた自由を失いたくなかった。
「じゃな…」
そのままバス乗り場に向かう尚。
「菜月ちゃん…、もしかしてやきもちを妬くの…? 可愛いね。でも、それで私の存在に気づいたよね…? あの人を使って、こっそり写真を撮るのはやはり菜月ちゃんらしい…」
くすくすと笑う葵。
「今からだよ…。菜月ちゃん…、私はあの人たちとは違う。私には手を出せないって、知っているから…。どっちが先に崩れるのか楽しみだね?」
葵は尚の後ろ姿を見つめながら微笑む。
「尚くんの方かな? あるいは菜月ちゃんの方かな…?」
……
「おーい! 尚! 遅いぞ!」
「ご、ごめん。ちょっとバスを逃して…」
「で…、なんで二人?」
「えっ? 二人?」
「ヤッホー!」
いつの間にか、俺の後ろに白川がいた。
どこからついてきたのかすら分からないほど、彼女の存在に全然気づいていなかった。
「へへ…、私も一緒に遊んでいいですか?」
「お…! いいよ! 行こう行こう!」
なんで、それをお前が決めるんだ…。楓…。
それより関わりたくないって言ったはずだけど、何しにきたんだ…。
「じゃあ! よろしくお願いしますね!」
「尚、お前…彼女を連れてくるなよ〜」
「彼女に見えるのか…? マジで…? 違うから…誤解するな」
「なんか、最近周りに女子が増えたような気がするぞ。尚」
「誤解だ…」
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