イーサン再び
最大出力で飛行するカリバーンの目の前に赤い機体が見える。
アーサーはトライ・レジェンズのアローモードで射撃攻撃を開始した。
(私も接近戦の腕を上げた……だが、今のイーサンの実力を把握出来ていない。わざわざ相手の得意な距離で戦う必要もないな)
「久しぶりだなアーサー。少年は少し遅れてくるのかな?」
予想通りイーサンからE.G.の標準規格で通信が入った。
(少年は少し遅れてくるのかなだと! お前らが殺したんだろうが!)
イーサンの何気ない問いかけが、アーサーの神経を逆撫でする。
「寝ぼけた事を言うな! お前らが殺したんだろうが!」
「どういう意味だ? 少年は戦死したのか?」
「E.G.軍宇宙センターで! 私達を守る為に死んだ! 知っているだろう! レイモンド・バージェスをおおおお!!」
「レイモンド・バージェス……第二艦隊のエースか! 死のブルースクリーンという、ふざけた名前で有名ではあるな。そうか……少年は……あの男に殺されてしまったか……」
「悲しんだふりをするな! 敵であるお前が!!」
「悲しみもするさ……彼がどの様に思ってくれていたのか分からないが、私にとっては友人の一人だよ」
「友人だと! お前にアランの何が分かる! 戦場でしか相対していないお前が!」
「戦場でしか相対していないか。アラン……アラン・バークス少年は俺の事を話さなかったのだな……」
「何故お前がアランの事を知っている?」
「本人に聞いたからに決まっているだろ。あの時の続きを聞きたかったのだがな。アランなら私の理想を理解してくれるのではと期待していたのだがな」
「お前の理想を理解するだと! アランの願いはファングの殲滅! お前らの死滅だ!」
「それは違う! 悲しみを知る彼はそんな事を望まない。殺し続ける先に望む未来が無い事に気づいていたさ!」
「そんな事はどうでも良い。もう死んだんだよ! 死者に未来は無いんだよ!」
「どうでも良くはない。友人を狂った殺戮者にされて黙って聞いてられると思うか!」
「ちっ」
アーサーはイーサンのリベレスティンから距離を取って、後方から放たれたビームを回避した。
(無駄に話し込んで敵の接近を許してしまったか。何をやっている! 戦闘プランが台無しだ! 自分で決めておきながら、何たる失態!)
「イーサン! 無駄に先行した上に敵とおしゃべりですか? 指揮官としての自覚がおありですか?」
「指揮官としての自覚が無い事は謝罪する。だが、友人の死を聞いて黙っているのは人として許されぬ」
「いつE.G.軍に友人が出来たのですか?! 敵に友人がいる事自体が許されません!」
言い争いを始めたイーサンとアマンダ。
(くだらない。くだらな過ぎるんだよ! 戦争なんだ! 殺し合いをしてるんだよ。戦場で戯れるな!)
アーサーはトライ・レジェンズのソードモードでリベレスティアに斬りかかった。
だが、イーサンのリベレスティンが間に割り込み、ビームアックスで受けきった。
「お前の相手は私だよアーサー」
「勝手に決めるな!」
「決めたのは君もだろう? 私が先行すると想定していたはずだ」
不意打ちでリベレスティアを攻撃したのに、イーサンに阻まれて撃墜し損ねた。
二対一の不利な状況。
だが、アマンダの射撃能力が優れていても当たりはしない。
全て読み切れている。
イーサンの動きも読んで先に撃墜すれば良いだけである。
「何故当たらないの! 地上で戦った時と動きが違う!」
「焦るなアマンダ! 敵も腕を上げただけだ。落ち着いて対処しろ!」
「落ち着いた処で意味は無い。私には君たちの性格が分かる。何を考え、何を望んでいるか……全て読めている!」
「それが君の新しい力か……ならば!」
イーサンの攻撃が単調になる。
(馬鹿が! お前の考えは読めている。得意な接近戦に持ち込みたいだけだろ? 単調なんだよ!)
イーサンがカリバーンに接近して格闘戦を挑もうとしているのが分かる。
動きの全てを読めている……だが、撃墜どころかリベレスティンに傷をつける事すら出来ない。
「何故だ! 何故当たらない! 私が知らない力……何の力だ!」
「力? 宇宙に住んでいたら特別な力が芽生えるとでも思っているのか? 俺が強いのは、ただの技量だよ!」
「技量だと! そんな物で!」
アーサーはイーサンの動きを読んで攻撃を続けたが全て避けられた。
ただの反応速度に負けている。
動きが読めても、体が操縦技術がイーサンの動きについて行けないのだ。
「そろそろ終わりです。追い込みますよイーサン」
アーサーの焦りが敵に気付かれている。
「調子に乗るな! イーサンの腰巾着め!」
だが、敵を罵倒した処で不利な状況が覆される訳ではない。
詰将棋の様に一手一手確実に追い込まれていくアーサーのカリバーン。
アマンダのリベレスティアから放たれるビームの一つ一つが死へのカウントダウンとなる。
既にイーサンのリベレスティンに背後を取られている。
(くそぉぉぉぉぉっ! 私が負けたら! アランの死が無駄になってしまうではないか!)
突如、後方から飛来した一筋のビームが戦況を打開した。
「そうはいかないんだよね。真打登場だぜ!」
背後から猛スピードで接近してきたアルダーン・カスタム。
(アルダーン・カスタム……カーライル! 余計な真似を!)
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