二九三九四九日目
目が覚める。大きな屋敷のようだった。すぐ傍で、女の人が倒れていた。血塗れだった。
力の強そうな男の人が座っていた。女の人を見下ろしている。片手に赤く濡れたフォークを握っていた。
身の竦む思いがした。
震える声で呼びかける。
自己紹介をしようよ。
男は言った。
「あうう」
それから、気持ちの悪いくらいに無邪気な笑みを浮かべて、一言。
「ふぉおく」
見せびらかすようにフォークを掲げた。
僕は恐ろしくなって駆け出した。
彼(?)はまだ言葉を覚えかけのようだった。遊んでるつもりなのかもしれない。
男は四つん這いになって追いかけてきた。走っているのに、なぜかあまり距離をつけられない。鏡の前を通りかかった。僕は小さな子供だった。金の長い髪がたなびいていた。
男が僕の足首を掴んだ。僕は前にすっころぶ。慌てて上体を起こす。男に向き直る。男はご機嫌な顔でフォークをぶんぶんしている。
視界が滲む。僕は懇願する。やめてやめてやめて。機械みたいに何度も繰り返す。
男が僕のお腹にフォークを突き刺した。赤い液体が飛び散る。僕は甲高い悲鳴をあげた。
男にはそれが面白かったらしい。だあ、とか、うー、とか言ってはしゃいでいる。
男はフォークを引っこ抜くと、僕の体に何度も突き刺した。僕は痛い痛いと泣き叫んだ。沢山血が噴き出して、男の顔にも赤い点々がついている。
そのうち意識が朦朧としてきて、何も分からなくなった。
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