過去の宝物の話
夏来ちなこ
1 名門校の女の子
とても魅力的な女の子だなあ、と見知らぬ女子高校生を見ていたら、なんと昔の知り合いだった、ということがある。
その子は、名門校の紺のブレザーを着ていた。
襟につけた緑のリボンを着崩したりせず、きちんと身に着けていて、黒のハイソックスには、校章のワンポイントが入っていた。完璧なお嬢様だ。
髪は長く真っ黒で、ハーフアップにしているので、さらにお嬢様っぽくなっている。
雰囲気ありすぎだろ。
はぁ、かっこいい。なんて、心の中で愚痴る。
わたしは自分のぼんやりしたセーラー服を一瞥する。
絶対ブレザーの方が可愛いのになあ、と、ぼけっとした間抜けな表情であの子のことを時折、見ていたのだ。
毎朝。ときどき、下校時も。
電車の同じ号車の中で、よく見かけていた。
まさか、あの日、その女の子がわたしの方を見て「あっ、はる子だ!」と顔を輝かせるなんて思いもしなかった。
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