次の日

俺は、下界での仕事を終えていた。


「リゼ、先に戻るから」


「ルカ、わかった」


俺は、Cフォンを取りだした。


【桜木杏奈】位置検索


彼女の魂の位置を調べる。


タマップと呼ばれるアプリを使った!


【対象者まで、20キロです】


俺は、それに従って飛んでいく。


【対象者に到着しました】


やっぱりか……


桜木杏奈は、高層ビルの屋上にいた。


「赤ちゃん、ごめんね!悪いママでごめんね」


俺は、彼女の隣にそっと並んだ。


俺達、死神は黒のスーツに黒いネクタイをつけている。マントはない。俺は、髪の色が、シルバーで!前髪だけがロゼ色をしている。だから、リゼと付けられた。髪の毛が、シルバーなのは、度重なる虐待で色が抜け落ちたからだった。

白の筈だったが、死んだらシルバーに変わっていた。何故か、前髪も色がついていたのだ。


そんな話しは、どうでもいいか…。俺は、杏奈の隣に立つ。


俺は煙草に火をつけた。


そして、杏奈の独り言を聞きながら相槌をうつことにした。


「赤ちゃんは、私を怒ってる?」


「怒ってないよ」


「私は、あなたを産みたかった」


「知ってる」


「五回駄目だったのよ!これが、最後だと思った」


「最後じゃないよ」


「また、来てくれるの?」


「そりゃあ、来るよ」


「私は、幸せになれる?」


「なれるよ!俺には、見えてる」


「死にたい」


「生きろよ!杏奈」


杏奈は、泣き崩れた。


俺は、煙草を消して背中を撫でる。


杏奈が、俺を感じる事は1%もない。


人間にしては、杏奈は綺麗だ!ふんわりしたパーマの当たった髪に、睫毛がクルンとしてる。大きな目に、形のいい眉毛、少しだけ存在感のある鼻に、ぷっくりと小さな唇。


泣いていても、綺麗だ!


「杏奈、教えてやろうか?」


俺は、杏奈の隣に座る。


死神界こっちには、秩序があるんだ!同じ男の子供は、同じ年に産まれてはいけない。無理やり引き寄せた縁は断ち切らねばならない。だいたい、うまくいってないだろ?杏奈の友達だった!ほら、唐津智子だっけ?」


俺は、杏奈の目の前にCフォンを差し出した。


見れないのにな!


「読んでやる!唐津智子、不妊治療の末に子供を授かる。しかし、夫が自殺!何でだ?」


俺は、杏奈を見つめる。


「唐津智子の縁は、断ち切る対象だったのかな?」


俺は、唐津智子の夫の担当ではないからよくわからない。ただ、再婚だって書いてある。どういう事なのだ?


運命の相手を引き離してはいけないと神様につかえるものに聞いた事がある。


断ち切ると回収作業を死神界のトップがすると聞いた。


唐津智子も、そうなのか?

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