見つめ続ける

「治すか?」


「ロイに頼むから、大丈夫」


笑った瞬間、ボトボトと血が流れ落ちた。


死神の関節は、人間よりは柔らかい、けれど多少は痛みを感じる。

だが、今のはかなり痛かった筈だ!


「ローズ、口を開けて」


俺は、ポケットから青色の小瓶を取り出した。


「はい」


ローズの開いた唇に、それを流し込む。


すぐに、吐き出したくなるから俺は唇で蓋をした。


「ゴクッ」


飲み込めてよかった。


「すぐに、よくなる」


「ええ」


死神界の強力な痛み止めであるさっきの薬は、速効性がある分、とんでもない味と匂いだ。

よくわからないが、ゾリラと言う動物の分泌液に似てる匂いだとか死神仲間のバイルが言っていた。味は、生臭い匂いを2000倍にした感じだ。


「痛みは?」


「もう、大丈夫」


「リゼ、気持ちは?」


「落ち着いた」


「よかったわ、じゃあ私は治療してもらうから」


ローズは、俺の頬を撫でて消えた。


さっきから、静止画のように杏奈は動かない。


俺は、煙草に火をつける。


隣で、ノリノリで動画を見てるルカに吹き出しそうになった。


何だろうか?


この不思議な感覚は…。


ない筈の心臓を感じる。


青井は、立ち上がってめんどくさいという顔をしてどこかに行った。


俺は、煙草を消して立ち上がった。


杏奈の傍に行く。


「ママ、またいつか会おうね」


俺は、杏奈の耳元でそう言った。


「赤ちゃん……」


杏奈は、ボロボロと泣き出して、ゆっくりと立ち上がった。


「何だよ」


「シャワー浴びたら行くわ」


杏奈は、落ちた。


俺は、ルカのヘッドフォンを外した。


「落とした」


「また、声を聞かせたの?」


ルカの言葉に、動画を消した。


「ああ!」


「今度は、何て言ったの?さよなら、ママって言った?」


「言ったよ」


俺は、ルカに嘘をついた。暫くして杏奈がやってきた!


「俊樹、行こうか」


「うん」


二人は、マンションを出て行く。


俺とルカもついていく。


産婦人科について、杏奈は予約の紙を差し出していた。


そして手術が、始まった。


「きたきた!」


俺は、赤ちゃんの魂を取った。


「はい、入れて」


抹消される……


「リゼ」


「ああ!」


ピキッ…


「おチビちゃん、またママに会いに来るんだ」


俺は、金の輪っかを一つだけ割った。


「リゼ!!!」


「いいだろ?しっー」


小瓶に詰めた!


ブタが取りにきた!


【6回目じゃなかったか?】


「5回目でしたよ」


「ああ。そうです」


【じゃあ、保管庫へ】


そう言って、ブタがいなくなった。


「リゼ、バレたらどうする?」


「大丈夫だ!俺だけが悪い!ルカは何も知らない」


「リゼ、小娘を気に入ったのか?」


「そんなわけないだろ?」


俺達は、仕事を終えて死神界に帰っていく。


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