みんなで遊ぶのって、楽しいね・・・。

武藤勇城

午前中~昼 河原でバーベキュー

【登場人物】

(先生)土井つちい

(女子)仲野なかの 埜崎のざき ほり 守屋もりや

(男子)原田はらだ 辺見へんみ 山嵜やまさき 山元やまもと




「おはよう」

「「 おはようございます! 」」

「みんな揃っているか~?」

「「 は~い! 」」

「全員同じ電車に乗って来たから大丈夫です。土井先生」

「迷わず来れたか?」

「乗り換えもなかったし、迷うわけないです」

「そうか。改めて、ようこそ。まずは車で家まで向かうが、人数が多いから二回に分けて行くぞ~」

 七月三十日。夏休みに入って二回目の週末。子供好きな小学校の土井つちい先生は、クラス三十余名全員を自宅に招待した。田舎の広い邸宅と言っても、一度に全員を泊めるのは不可能。だから八名から九名ずつ四回に分けて、順番にだ。最初の日曜日、二十四日から二十五日までが第一陣。二十六、二十七が第二陣。二十八、二十九が第三陣。そして今日、明日が最後だ。


「レディファーストだ。仲野、埜崎、堀、守屋の四人、車に乗れ~」

 先生の持つ四輪駆動車に乗って、女子生徒四人が先生の自宅へ。男子四人は無人駅を出た所で先生の帰りを待った。十分ほどで先生が戻って来たので、僕たちも先生の車に乗り込む。

「原田、辺見、山嵜、山元。全員いるな。行くぞ~」

 信号機もほとんど無い山間の道。のどかな田畑や丘陵を眺めながら、五分も走ると先生の家に到着した。外で待っていた先生の両親、もう高齢の老夫婦に迎えられ、元気に挨拶。荷物だけ降ろすと、今度は車に乗っていた男子が先になって、近くの河原へと向かった。


「川でバーベキューですか?」

「ああ、そうだ。専用の小さなログハウスがあってな。今週はずっと予約を取ってある」

「先生、僕たち何も準備してませんよ?」

「子供はそんな心配しなくていい。宿泊も可能なログハウスでな、まあ泊まらないんだが、冷蔵庫の中に肉も野菜もたっぷりあるぞ~」

「「 わ~い! 」」

「今日が最後だから、全部食べ切らないといかんな」

 その場所までは少し距離があって、車で二十分以上走っただろうか。男子全員、夏休みのテンションで大盛り上がりだった。そんな中、僕だけは車の隅で小さくなって、友達がワイワイ騒ぐ様子をジッと眺めていた。

 ログハウスの中にいてもいいし、すぐそこの河原へ行って魚釣りしてもいいし、泳いでもいいと言われた。流れの早い所には入らないようにと注意され、友達は元気に返事をする。

「お昼までは少し時間があるから、全員揃った後も少し遊べるぞ」

 そう言い残すと、先生はまた車を運転し、女子を迎えに行ってしまった。


 川でみんなが楽しそうに遊んでいる様子を、僕はログハウスの窓から眺めていた。腰ほどの深さの川で水を掛け合うワーワーという大きな歓声。水の音、森と風の音、虫や鳥の鳴き声。釣竿を抱えて、友達四人は川の下流の方へ向かったようで、暫くすると姿が見えなくなってしまった。

 僕が大自然をいっぱいに堪能していると、外からガヤガヤと声がして、先生と女子四人も到着。もう小一時間経ったのか、早いな、なんて考えている間に、下に水着を着込んでいた女子は手早く服を脱いで、勢いよく外へ駆け出して行った。

 先生はそんな生徒の様子を眺めてから、台所へ向かい、バーベキューの準備を始める。トントントン。手際よく野菜と肉を刻み、トレーに並べては冷蔵庫へ戻す。外では釣りから戻った男子も合流し、八人が輪になってビーチボールのようなもので遊んでいた。


「そろそろお昼にするぞ~!」

「はーい」

「やったあ!」

「待ってました~」

 ログハウスの外には、バーベキュー専用の焼き場があり、遊び足りない男子が河原で相撲を取っている間に、女子が先生を手伝って食材を並べていく。先生は木炭に火を入れ、鉄板を熱し始めた。

 運ばれた肉、野菜は、それはもう莫大な量だった。九人集まっても、とても食べ切れる量とは思えない。だけど先生は、

「今日が最終日だから、全部食べてくれないと困る」

 と冗談めかして話し、生徒たちも全員、限界を超えて胃袋に押し込んだ。


「美味しかったあ」

「もう動けないよ」

「お腹いっぱ~い」

「まだ肉も野菜も残っているぞ~。もっと食べろ!」

「無~理~」

「肉だけだったら、もう少し…」

 こうして、楽しい夏合宿初日の昼は過ぎていった。

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