第2話
────そんな関係のまま十歳になったある日。
私はとんでもない会話を聞いてしまった。
「またお前が一位かよ」
「まあな」
先ほど学期末試験の結果が廊下に貼り出され、結果はまたしても、オリバーが一位で私は二位。
その結果にがっくりと項垂れながら教室に戻ったときだった。私が教室に入ろうとしたところ、中からオリバーとアーロの会話が聞こえてきた。
「オフィーリアはまた悔しがってるだろうな」
……え、私の話?
「そうだな。まあでも、悔しがって頑張る姿も可愛いから一位はあげられないんだよな」
……はい?
彼ら二人の会話に突如私の名前が浮上し、私は思わず足を止めた。教室に入る一歩手前だ。
でも衝撃なのは、オリバーが口にしたセリフ。
『悔しがって頑張る姿も可愛い』??
私は一度も、オリバーから可愛いと言われたことはない。それどころか、最悪な出会いを果たしたときは「不細工」と言われた。
今教室にいるのは、本当にあのオリバーなの?
「オリバーはほんと変わってるよな。俺だったら好きな子には嫌ってほど優しくする」
「……ほっとけ」
………………え?
私はさらに聞き間違いをしたのだろうか。
だって今の会話は、まるでオリバーが私を好きみたいじゃない?
「今のままじゃ絶対オフィーリアにも気持ち伝わらないだろ」
「う……。まあ多分、嫌われてるよな俺」
「自覚はあるんだな」
「そりゃあるさ。でもどうしようもないんだよ。だって……オフィーリアが可愛すぎて、目の前にしたらつい意地悪な言葉が口から出ちゃうんだから」
もはや脳が思考を停止し始める展開だ。
アーロとオリバーは誰にも聞かれていないと思って話している。だからきっと、そこに嘘はない。
だとしたらオリバーは、私のことが好きでつい意地悪を言ってしまうという話が本当だということになる。
幼い頃、お母様が教えてくれたあの言葉をふと思い出したが、あれは単に大泣きしている私を落ち着かせようとして教えてくれたものだとばかり思っていた。本当にオリバーが、私が好きだから意地悪を言ってきているなんて、思ってもみなかった。
「ほんとお前って難儀な性格だよな。もうちょっと大人になったら改善されるのか?」
「……いや。俺が大人になるってことはオフィーリアも大人になるってことだろ? ってことは、オフィーリアは今よりもっと可愛くなるし、なんなら大人の色気みたいなものも出始めるだろうからもっと無理になるな」
「……ほお」
アーロの返事は心なしか引いているように聞こえた。
……これは、どうすればいいのかしら。
頭の中は今まで嫌っていた彼のことでいっぱいで、ぐるぐると混乱しながらも、とりあえずその場から立ち去ったのだった。
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