すくらップ heaven
みなみくん
すくらップ heaven
灰色が続く
景色も
記憶も
暗い暗い仄暗い
灰色
注射器の残骸に空のアルコールが散乱するこの部屋で
僕と彼女は
世界を求める
灰色じゃない
違う色の世界を
ブランケットにくるまって
手を繋いで寄り添って眠る
目が覚めなければ
きっとどこかへ2人でいける
離れないように手を繋いで
スクラップみたいなこの世界で、あとどれだけ生きていきなきゃいけないのだろうか
息が苦しい
耳障りな音が脳に響く
ノイズが、ずっと、走る
数字の羅列が走り
じくじくと痛む
彼女の胸の鼓動を聞いていなければ
どうかなりそうになる
彼女の、ありすの鼓動は唯一暖かい色で心地よい
嫌いな数字も消えていく
消えてしまいそうな2人の灯火が、ようやく訪れて
僕とありすは安堵した
この世界に別れを告げても
絶対離れないように手を繋ぎ、強く強く抱きしめ合った
霞んでく景色は、灰色から色を変えて
変わらないありすの鼓動だけが全身を包む
やっとだね
ありすは笑顔を浮かべながら、僕の目尻に片手の指を添えた
透明な涙が零れていた
ありすはこの涙が好きだと言っていた
音と色が優しいって
最後に見るそれを、幸せそうに、大切そうに拭い
額を合わせた
もう覚めることの無い眠りにつこう
灰色の無い、こんな世界からありすと出よう
僕らは目を閉じた
すくらップ heaven みなみくん @minamikun
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