第34話:エディン大魔境の木属性竜
神暦2492年、王国暦229年10月7日:エディン大魔境・ジェネシス視点
(分かった、その条件を飲もう。
ただ我は雄だから、卵子は提供できない)
(それで構わない。
では眷属契約を結んでもらう。
眷属になる証として真名を教えてもらう。
そして真名に加えて俺のつけた眷属名を名乗ってもらう)
(分かった、我の真名はクエレブレ)
(分かった、クエレブレ、真名に誓って我の眷属となれ。
眷属となった証にサクラと言う眷属名を名乗れ。
お前は今日から真名に加えて眷属名サクラに縛られる。
サクラ・クエレブレ、俺に忠誠を誓い眷属となれ。
俺の名はジェネシス・キャヴェンディッシュだ)
(我、サクラ・クエレブレはジェネシス・キャヴェンディッシュに永遠の忠誠を誓い眷属となる)
俺と純血種竜は眷属契約を結んだ。
これで大量の魔力は必要になるが、純血種竜を好きな場所に召喚できる。
それだけでなく、俺が純血種竜のいる場所に転移する事までできる。
(ではまず木属性竜の居場所に案内してもらおうか)
(先導します)
俺は純血種竜サクラ・クエレブレの後について飛んだ。
海から飛び上がってきた水属性竜や、ブレスを放つのにいきなり火口から飛び出してきた火属性竜に比べて、とても優雅で早い飛び方だ。
サクラ・クエレブレは俺達が来た方向とは正反対に飛んでいった。
俺が木属性竜を見落としたのではなく、純血種竜のサクラ・クエレブレの影にいたから、卑小な属性竜の気配が純血種竜の気配に隠れてしまっていたのだろう。
俺が脅かすまでもなく、純血種竜サクラ・クエレブレの殺気を恐れた木属性竜が、大魔境の樹海から飛び出してきた。
俺達の反対側に逃げようとした。
俺だけなら気配を隠蔽して直ぐ側まで近づくのだが、まだ完全に気配を隠蔽できないサクラ・クエレブレではこう言う結果になる。
サクラ・クエレブレは若い純血種竜なのだろう。
(急いで追いかけます)
サクラ・クエレブレが木属性竜を逃がしてはいけないと慌てて言う。
だがそのような心配はいらない。
急いで追いかける魔力を考えれば、遠距離攻撃魔術を放った方が良い。
木属性は金属性に弱い性質を持っている。
魔力に金の属性を加えて放てば純粋な魔力を当てるよりも効果がある。
だがそれ以上に、金属の塊を叩きつけた方が楽だ。
俺の魔法袋、亜空間にはとても多くの金属が保管されている。
地中や海中から金属を集めるのはとても面白い遊びだった。
金属を集める時は、王城の宝物庫から金属を盗まないように気をつけた。
生物の身体から金属成分を集めて殺さないように気をつけた。
そういうせんさいな練習が俺を鍛えたともいえる。
俺が魔力に任せて集めた金属で1番多いのはアルミニウムだった。
前世の地球では鉄が1番多い金属だったと思ったのだが……
前世の地球とこの世界では金属の配分量が違うのかもしれない。
いや、俺の魔力で集められるのは地表のごく浅い所だけだ。
地中の奥深くにある金属は集められない。
深さで金属量の分布が違うのかもしれない。
キャアアアアア
俺が色々と思い出している間に、木属性竜の断末魔が聞こえてきた。
魔力をたっぷりと含ませたアルミニウム、魔軽銀製の大釜が、木属性竜の首を胴体から刎ね飛ばしたのだ。
(やはり我の目に狂いはない。
主殿は恐ろしい実力の持ち主だ。
敵対していたら、我がこいつよりも先に殺されていた)
(実力差が理解できて、敵対する事も逃げる事もなく、眷属になると言ってきたサクラ・クエレブレの知性はなかなかのモノだ。
これからもその知性を活用してくれ)
俺はサクラ・クエレブレとそんな心話をかわしながら、斃した木属性竜の死骸を亜空間に回収した。
魔術の触媒にもなり、強力な魔法陣や魔導書を描くのに必要な血は、1滴たりともムダにできないので、首の切り口から噴き出る血を気をつけて集めた。
(ちょうどいい、サクラ・クエレブレも血と爪と牙を引き渡してくれ。
寝床にしていた火口に脱皮殻があるなら全部よこせ。
ここに来る前に寝床にしていた場所に脱皮殻があるのなら、それも持ってこい)
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