4 もやもや
「
走ってきたのに黙り込んでいるおれを見て、
「今日、部活のあと一緒に帰りたいんですケドも……」
「うん? 分かった。じゃあ、図書室で待ってる」
昼休みの浩平はあんなに挙動不審だったのに、今は平然と笑顔で対応していている。今度はおれの方が妙に気まずくて一人で変な感じになってしまっている。なんだこれ。
「じゃ、部活終わったら図書室きて」
そう言って、浩平は横にいる奴と歩き出す。おれも用事は終わったと部室に向かおうとしたけど、ふと思いついた。
「浩平!」
大声で呼びかけると、やつは振り返った。
「なんでいつも
こんなことでもやもやしてるのは自分らしくないと思っていた。でも、浩平にたいして、たまになぜか言えないなって思うことがある。名前の呼び方もその一つ。だから、ここで言い逃げしてみようと思った。大声で主張して、走り出そうとしたけど。ピタッと自分の足が動かなくなった。
浩平の頬が真っ赤になっていた。おれに何か言い返そうとしているが、口元が動いているだけで言葉になっていない。
浩平の横にいるクラスの男が「バランス?」と呟いて、不思議そうに浩平とおれの顔を見ていた。
なんで今日の浩平はこんなに変なんだ? おれは自分でもこの状況がよく分からなくなっていた。
どうしようかと悩んでいると、「璃央ー」と誰かが名前を呼んだ。
振り返ると同じ合唱部に入っている
「なんか向かいあってどうしたの? 部活遅れるよー」
「そ、うだな。じゃ、あとで……!」
おれはなんとかそれだけ言って、悟の腕を引いて全力で部室に走っていった。悟が後ろで何か言っていたような気がしたけど、ちょっと無視してしまった。浩平のことが気になっていたのに、なぜか逃げてしまった。
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