歌と鳥

夏来ちなこ

1 昼休み


 真瀬浩平まなせ こうへいって綺麗な人間だな、とおれは思っている。

 

昼休み。おれの教室に来てもらって、浩平こうへいと二人で昼飯を食べていた。浩平とはクラスが違うけど、昼休みはよく一緒に食べている。おれはほとんどいつも食堂でパンとかおにぎりを買っていて、浩平は家から弁当を持ってきている。


浩平は、箸で卵焼きを半分に切っていた。それからその一つをとって、そっと口に運ぶ。おれはそんな浩平の様子を盗み見ていた。浩平は一口一口、丁寧に食べるので、どことなく上品に見える。


こいつの所作は、自然と育ちの良さがにじみ出ていて、おれはそれを見ているのが好きだったりする。でも、あまりにも見過ぎてしまっていたのか、浩平がおれの方をちらりと見た。


牧村まきむら、どうした?」

 二年ほどの友達付き合いだと言うのに、こいつは未だにおれのことを牧村、と名字で呼んでくる。


璃央りおって呼んでくれてもいいのにな。おれは、浩平って下の名前で呼んでるのに。なんかバランス悪くないか?と、内心もやもやとしてしまう。


でも、おれはそのもやもやを腹に納めた。

機嫌よく「今日も桔平先輩の弁当か?」と問いかけた。すると瞬間、浩平は熱が上がったように頬を真っ赤にして「う、うん」と答えた。ん? なんで?



浩平には、料理上手な兄がいる。

同じ高校に通う一学年年上の真瀬桔平まなせ きっぺい先輩だ。おれも食堂に昼飯を買いに行くときにときどき会ったりする。なので、浩平の弁当はほとんどが兄作だ。

いつものノリで聞いたのに、なんで今日はこんなに慌てたような反応なんだろう。


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