🧠 でぃめんしあ 🧠

医師脳

でぃめんしあ

 テレビドラマでは様々なジャーゴンが飛び交う。

「特定の業界で通じる隠語的な表現」のことだが、古くは芸能界の「ワイハ」や「ヒーコ」と言った逆さ言葉などを聞いた。

 医者になった頃、先輩の話す医学用語に戸惑った。でもカルテの記載をみれば(ドイツ語を勝手に省略したものだから)意味は分かるし、新米同士も(格好をつけて)マネするようになったものだ。

 手術場では古手ナースにも怒鳴られる。

「センセ、リヒカにアッキンかけて」

 新米医は(業界用語の)ドイツ語だと思った。……が、その用語を数年後に看護学校の教科書で見つけた時の驚き!

「離被架」に「圧布」と、漢字だった。

 介護業界でも(自称)ベテランの会話で耳にするのが「にんち」という響き。

「にんちが入る」とか「にんちがかる」とか、「認知機能に障害がある」と言いたいのだろう。…が非常に耳障りだ。

 そもそも〈痴○〉が差別的であるとして〈認知症〉に変更された経緯は?

 これには当初から多くの議論があった。

「国民の人気投票では、〈認知障害〉がトップであった。しかし従来からの用語〈医学上の認知障害〉と区別できなくなるため、この呼称は見送られた」と厚生労働省のホームページにある。

 いずれにせよ〈認知機能に障害のある状態〉を短く「認知症」と表現したことが問題だった、と今でも私は思う。

 しかし仮にも〈認知症〉が用語として決められた以上、「にんち」と勝手に短縮してはいけない。そうするくらいなら、インフルエンザのように、いっそのこと外国語のままで呼んだらいい。

「ディメンシア」と。


  「にんち」とは我のことかと認知症「でぃめんしあ」にて済ましたく候


 自分自身のことなら〈老人力がついてきたよ〉と書けるし……。

「ちょっとボケちゃってねぇ」と笑い飛ばすこともできるが……。

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