第287話 圧倒的戦力
「おっ、みんなが撃ち漏らした魔物も近付いてきたぞ!」
「よし! 儂らもゆくぞ!」
「おっしゃあ、力仕事なら任せておけ!」
サンドラとアンネルさんのとんでもない攻撃の猛攻を運よく逃れたスタンピードがこちらの土魔法によってできた城壁へと近付いてくる。
もっとも、それはもはやスタンピードと言えるものではなく、散り散りとなった数体の魔物である。
それを相手にするのはドワーフのみんなと冒険者によるバリスタチームだ。
「照準よし……撃て!」
ヒュンッ
城壁の一面に設置したダルガたち大親方お手製の巨大なバリスタがその矢を一斉に放つ。
「キャンッ!」
「ギャン……」
そして大親方たちが放つ巨大なバリスタはただの矢ではなく先端に魔道具が仕込まれている。魔物に突き刺さった矢はその内部から、逸れて外れてしまった矢の周囲にも風魔法による斬撃が魔物の肉を斬り刻む。
変異種の時にも使っていた特別製のバリスタの威力もとんでもないよな……
しかもダルガたちに聞いたところ、当時よりもいろいろと改良が加えられているらしい。そもそも、エルフ村が襲われるという緊急事態に対して、なぜこんなに大量のバリスタが用意できたのかというと、先日の変異種との戦いの後で大親方たちが独自に準備をしていたらしい。
……まったく、うちのキャンプ場にどんなやつが攻めてくる想定でこんな兵器を準備していたんだよ。おかげで助かったけれどさ……
「風の戦鎚、穿て!」
ザンッ
そしてそれでも撃ち漏らした魔物はソニアや他の弓術師によって一体ずつ丁寧に処理されていく。
さすがソニアだ。さっきから見ているが、一射たりとも外してはいない。さすがAランク冒険者である。
「……よし、第二射用意完了じゃ!」
「うむ、それではサンドラ殿、アンネル殿、一度上空へと頼む」
『わかったのじゃ!』
「了解」
オブリさんの指示でサンドラとアンネルさんがその高度をこれまで以上に上げた。
「よし、撃てえええ!」
再び100人を超えるエルフの魔法がスタンピード相手に炸裂する。相変わらずとんでもない威力だ……あまりにも凄すぎて、もはや映画のワンシーンにしか見えないと言うのが俺の正直な感想だよ……
「くっ、それにしても本当に何千体おるのであろうか……」
「それもあと少しといったところじゃわい。さて儂も皆には負けておられぬぞ! 極大魔法・インフェルノ! 極大魔法・シルフィード!」
うわっ、出た!
なんかとんでもない極大魔法だ! 真っ赤に燃え上がる巨大な炎でできた巨人と、小さな風でできた妖精がサンドラとアンネルさんとは別の方向へと進んで行く。
「……極大魔法をふたつ同時とはまったく衰えていないようじゃな、オブリ!」
「ふぉっふぉ、今は思いっきり魔法を放つことのできる鍛錬場があってのう。そのおかげで、もしかすると今や全盛期をも超えている可能性があるわい!」
「ほう、そんな素晴らしい場所があるのか」
「………………」
うちのキャンプ場のことですね、分かります。
「ええい、儂も負けてはおれんぞ! 極大魔法・ウンディーネ!」
シセロさんが魔法を発動させると空中に現れた水の塊が美しい女性を形作っていく。
どうやらシセロさんも極大魔法を使えるらしい。そしてその水でできた女性はスタンピードの一角へと進む。
そしてウンディーネが両手から出した大量の水は大きな塊となってスタンピードを飲み込んだ。ウンディーネに取り込まれた魔物たちは手足をばたつかせながら、口から泡を出してそのまま動かなくなった。
うわ、魔物を窒息させるとかえぐすぎるだろ……
「ふむ、シセロもやるのう! 儂も負けておられんわい!」
「皆も負ける出ないぞ! 魔力を集中し第3射の準備じゃ!」
「「「はい!」」」
『……ふむ、あやつらもやるものじゃのう』
「……下手な国を相手にするよりもよっぽど危険」
そう言いながらもスタンピードをまた何体も倒すサンドラと、休むことなく連続で魔法を放ち続けるアンネルさん。
いや、もう十分に分かったけれど、これ過剰戦力過ぎるだろ! スタンピードはまだ一体たりとも俺の結界のもとへとたどり着いてすらないのに……
「よし、この魔物で最後であるな。儂らの勝利じゃ! えいえいおー!」
「「「えいえいおー!」」」
「………………」
そして無事にスタンピードである魔物の群れをすべて討伐し、総指揮者のシセロさんが勝鬨を上げた。
結果的には怪我ひとつどころか、魔物一体すらも俺の結界へたどり着くことはなかった。想像以上の完全勝利である。
……なんなら、スタンピードの終わりが見えた時からは魔物の肉を確保するためにその身をあまり傷付けないように仕留めるなんて余裕すらあった。
「今回のユウスケは最初から最後まで役に立たなかったですね」
「言われなくても十分に自覚しているから、もっと優しくして!」
ソニアに言われなくてもそのことについては十分に分かっている。
変異種の時の様に最後の最後にとんでもないことをしでかすんじゃないのかと不安だったが、それもまったくの杞憂だった。
そもそも俺の結界を軸として土魔法でこの城壁を作ったわけだが、まさかその結界を一度たりとも使わずに決着がつくなんてこれっぽっちも予想していなかった。
魔物の数自体は想定よりも遥かに多かったのだが、今回一緒に同行してくれた人たちその想定よりも遥かに強かったようだな。
いや、もちろん良いことではあるんだけれどね……
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