第284話 エルフの大きな村


「おお~ここにもエルフ村みたいな大きな木があるんですね!」


「うむ。むしろ儂らの村の木はあの木の苗を育てたものなんじゃ」


「私たちの村の木よりもすっごく大きいですね」


「ええ、ここほど大きなエルフ族だけの村は初めてです。もう街と言ってもおかしくないですね」


 キャンプ場を離れ、3日掛けてエルフ族が住む大きな村へとやってきた。ソニアの言う通り、むしろ街と言っても過言ではないほど大きな村だ。


 そしてこの村の中心にはオブリさんたちエルフ村と同じように大きな世界樹がたたずんでいた。こちらもエルフ村の世界樹よりも大きいかと思ったら、ここの木の方がもととなっていたらしい。


 この村にお邪魔しているのは俺とソニアとサリアとオブリさんの4人だ。他のみんなは先にスタンピードが来ると予想される方角に以前変異種と戦った時と同じような防壁を土魔法で築いて準備をしてくれている。


 ……サンドラとアンネルさんがちょっと先にスタンピードと戦ってくると、軽い気持ちで先に行こうとしていたのをみんなで止めるのには苦労した。空を飛べる2人なら問題ないとは思うが、万一の時のために結界がいつでも展開できる万全の状態で戦いたい。


「おお、オブリ。来てくれて本当に感謝するぞ!」


「うむ、シセロ。実際に合うのは十年ぶり近くになるが元気そうじゃのう」


 村の入口へ行くと、オブリさんと同じ白くて長い髭を生やした老人が出迎えてくれ、オブリさんと握手をする。


 どうやらこのシセロさんがこの村の長のようだな。


 ……それにしても十年ぶりか。いくら魔法で離れた村の間で連絡ができるとはいえ、たまには会おうと思わないのだろうか。相変わらず長命種族であるエルフの感覚は俺たちとは少し異なるみたいだ。


「おお、お主がユウスケ殿じゃな。オブリから話は聞いておる。儂はシセロじゃ。この度は儂らの村に協力してくれて本当に感謝しておる!」


 そう言いながら俺たちの方へ向かって頭を下げるシセロさん。


 よっぽどの地位がありそうなのに、わざわざ頭を下げてくれる。どうやら人族を見下したりしていることはなさそうでほっとした。


「初めまして、ユウスケです。オブリさんにはいつもお世話になっておりますし、以前俺たちが危なかった時は助けてくれました。困った時はお互い様ですよ」


「そう言ってもらえるとありがたいわい。何でも不思議な力を使えるとオブリから聞いておる。すまんがよろしく頼む」




 シセロさんと握手をして、スタンピードを迎え撃つための草原へと移動してきた。


 ここからエルフの村は少し離れていて、ここなら多少は暴れても問題ない。ここへ来る時に聞いたのだが、この辺りにあった木々は魔法で移動したらしい。そんなことまでできるんだな……


「おお~こりゃすごい!」


 そしてこの広々とした草原の中心には土魔法で作られた巨大な壁があった。以前イノシシ型の変異種と戦った時よりも高くて分厚い壁だ。これは本当にすごいな!


 その土の壁は前回のように平面ではなく、ぐるりと周囲を取り囲んだ円柱状になっている。事前に連絡用の魔法でシセロさんに伝えてもらっており、この円柱状の土の壁は俺の結界のサイズに入るようにしてもらった。


 基本的にスタンピードは目の前の敵を蹂躙しつつその先へ向かっていくため、ここで迎え撃てばこの壁を無視してこの先のエルフの村まで進む可能性は低いらしい。


 そしてもちろん俺の結界の能力を過信する気もないぞ。この土壁に囲まれた壁の中には地下を通ってエルフの村まで避難するための緊急脱出口がある。何かあればすぐにみんなで脱出するつもりだ。地下の緊急脱出口はそこまで広くないため、魔物の群れがそこを通って追ってきても対処できる。


 さらにもしもスタンピードがこの場所を逸れてエルフの村へ向かったとしても、そちらの方にも土による巨大な壁が2か所用意されている。念には念を入れておかないとな。


「これはすごいですね……」


「とっても大きいです……これ全部土魔法で作ったのですね……」


 横にいるソニアもサリアもとても驚いているようだ。やっぱりエルフという種族はかなり魔法に長けた種族のようだな。


 そして土壁の中には土で作られた仮設の建物があった。今回のスタンピードはかなりの規模らしく、長期戦を覚悟しているため、休息をとる場所が必要あるかもしれない。


「さて、このままいけばスタンピードは明後日にはこちらへ到着する。協力してくれる皆と共に作戦を立てるとしよう」

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