第282話 協力者
「あと、キャンプ場のお客さんにはこのことを伝えなくてもいいんですか? みんなオブリさんたちのためなら喜んで力を貸してくれそうですけれど」
オブリさんたちと仲の良いダルガたちドワーフのみんなやランドさん、近くの街の商業ギルドのジルベールさんや冒険者ギルドマスターのドナルマさん。そして何より古代竜のサンドラたちにこのことを伝えれば、きっと力になってくれると思うのだが。
「これは儂らの個人的な戦いであるから、このキャンプ場での友の力を借りたくはないんじゃ。本来ならばユウスケ殿の助けも借りたくなかったのじゃが、皆の安全のことを考えると、どうしても助けを借りたくてのう……」
「………………」
なるほど、確かに個人的な戦いに友を巻き込みたくないということか。俺もキャンプ場に変異種が来た時には力を貸してほしい反面、キャンプ場の戦いにみんなを巻き込みたくないという気持ちも確かにあった。
それでも俺たちだけに話を伝えたのは俺の結界の能力でみんなが命を落とす可能性が一気に減るからだ。
「皆さんが私たちを巻き込みたくないという気持ちもわかりますが、私たちも友人である皆さんの助けになりたいという気持ちがあります。何も知らないところで友人が命を落とす可能性があるならば、絶対に伝えておいた方が良いと思います。それにユウスケの結界もあることですし、危なくなれば撤退すれば良いだけの話ですよ」
おお、相変わらずマジで格好いいな!
ソニアのこういうところは素直に尊敬できる。うん、俺だってオブリさんたちが知らないところで命を懸けた戦いに挑むのは嫌だ。たとえ力になれることがほんの少しでも、絶対に伝えてほしいと思う。
「ソニアの言う通りですよ。みんなオブリさんたちに頼ってもらったほうが嬉しいと思います。結界の能力があればみんなも安全ですし、声を掛けるだけかけてみましょう」
「……一度村の皆と相談させてもらっても良いかのう?」
「ええ、もちろんです。とはいえ、時間もあまりなさそうなので、こちらでも準備は進めさせてもらいますね。現地の詳しい情報やスタンピードの詳細を教えてください」
さすがにすぐ結論は出せないか。結界があるとはいえ、少しでも危険があるのならそれも当然だろう。
いつも通りダルガたちは今日もキャンプ場に泊まっているし、ちょうど明日の昼過ぎにはサンドラもキャンプ場に来るだろう。みんなきっとオブリさんたちの力になりたいと思っているはずだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「任せておくがよい、妾がいればスタンピードの群れなどイチコロなのじゃ!」
……思った通りサンドラは即答だった。
昨日エルフ村のみんなで相談した結果、絶対に無理のない範囲かつ、俺の結界やエルフ村のみんなで協力してくれる人を最優先で守るという話で、協力を仰ぐという話になった。
ダルガたちドワーフのみんなやランドさんたちに話をすると迷わず協力してくれることになり、サンドラにもこの話をしたところ即答してくれた。
「サンドラ殿、本当に良いのか? 古代竜であるサンドラ殿がエルフの儂らに協力してくれる道理など何ひとつないのだが……」
「何を言っておるのじゃ、オブリ? こんな時に種族なんて関係ないのじゃ。妾は古代竜としてエルフを助けるのではなく、友であるオブリが困っているから力を貸すだけなのじゃ。それのどこに問題があるというのじゃ?」
「サンドラ殿……すまん、恩に着るわい!」
サンドラのやつもこういうところは本当に漢らしいよな。ぜひ見習いところである。
うん、手を取り合って協力する時に種族なんて関係はない。
「ユウスケが行くなら私も行く。ユウスケは絶対に私が守る!」
「………………」
これが愛の告白だったらどれだけ嬉しいことか……
悲しいことにアンネルさんとの付き合いはそれほど長くないので、これが愛の告白でないことははっきりと分かってしまう。俺がいなくなればこのキャンプ場の寝具に加えて、このキャンプ場で出てくる料理や飲み物が味わえなくなってしまうからな。
……今のセリフを大人の姿でもう一度言ってほしかったのだが、さすがに今はそんな状況ではない。
「その気持ちはとても嬉しいのですが、相手は相当な魔物の群れらしいので、絶対に無理はしないでくださいね」
「こやつにそんな心配は不要じゃぞ、ユウスケ。数を相手にするなら、下手をすれば妾よりもこやつの魔法の方が相性は良いかもしれん」
「えっ、そうなの!?」
確かキャンプ場に来た時、サンドラの方が強いと言っていた気もするんだが。
「こやつの魔法は長期戦にも優れておるからのう。じゃが、あくまで多くの魔物を相手にする場合にはじゃぞ! 一対一で戦ったら、間違いなく強いのは妾じゃからな!」
よく分からないが、サンドラには一対一の強さにこだわりがあるらしい。
「ああ、サンドラが強いのは十分知っている。二人が協力してくれるのなら、とても頼りになるよ」
サンドラの強さはすでに知っている。そのサンドラに加えてアンネルさんが協力してくれると言うのならとても心強い。
「ふっふっふ、任せておくがよい! 以前の変異種では妾の力を見せることができなかったから、今回は任せておくがよい!」
サンドラは意外と前回の変異種討伐戦に参加できなかったことを根に持っていたのかもしれない。
「サンドラ殿もアンネル殿も本当に感謝する!」
サンドラとアンネルさんが協力してくれると言うのなら百人力だ。
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