第278話 それは秘密
「ユウスケ、おはようなのじゃ!」
「おはよう、サンドラ。さっきウドから聞いたと思うけれど、アンネルさんは昨日来て今は寝ているぞ」
ウドと一緒にキャンプ場の入口へと行くと、そこにはいつも通り赤いメイド服を着て赤い髪をした少女姿のサンドラがいた。
「妾の家にアンネルのやつからの書置きか置いてあったのじゃ。いつもより早い時間に来てしまって、すまなかったのう……」
「今日はそれほど混んでいなかったから、気にしなくても大丈夫だぞ。いつもみたいに料理をたくさん出すのはもう少ししてからになりそうだから、ちょっとだけ待っていてくれ」
「うむ、もちろんなのじゃ!」
相変わらずちゃんとこのキャンプ場のことを考えてくれるから助かる。そろそろ遅めの朝食と昼食をとるお客さんが増えて忙しくなってくる。さすがにその間はサンドラの料理をひたすら作るのはなかなか難しいからな。
「それにしても妾を置いてひとりで勝手にここに来るとはアンネルのやつめ!」
「よっぽどこのキャンプ場の寝具が気に入ってくれたみたいだな」
確かに最近の寝袋やマットなんかはかなり快適に寝られるようできている。アンネルさんがあれほど気に入っている気持ちも分からなくはない。
「ここの寝具は普通の物よりも遥かに質が良いからな。俺やイドが普段使わせてもらっているベッドもかなり寝心地が良い」
「確かにそうかもな。……だけどウド、一応アンネルさんにそのことは秘密にしておいてくれ」
このキャンプ場の従業員のベッドはダルガたちドワーフのみんなが土台を作ってくれて、その上に俺の能力によりショップで購入したマットレスや布団をかけて使っている。
キャンプ用のマットや寝袋なんかもだいぶ快適に過ごせるけれど、あっちのマットレスや布団なんかとは異なる寝心地だ。
……アンネルさんにそのことを伝えると、寝袋やマットにつられてこのキャンプ場の従業員になりたいとか本気で言い出してきそうで怖い。さすがに今は従業員の募集を行ってはいないからな。
「本当にあやつは寝具のことになるとこだわるからのう……とはいえ、さすがに妾でも壊せないユウスケの結界のことは知っておるから、下手な真似はせんとは思うぞ」
「まあ、結界があるからその辺りは心配していないよ」
アンネルさんはあんまりパワータイプな人ではなさそうだし、結界が壊される可能性はないだろう。同様に盗難とかもできないからな。
どちらかというと、アンネルさんが成長した姿で男性従業員を誘惑した方がやばい気もする。ウドもアルジャも男だし、そういった方面から攻められるとヤバいかもしれない。
……うん、一番ヤバそうなのは俺かもしれないけれどね。
「それじゃあ、いつもの場所へ案内するよ。アンネルさんが言うには昼頃起きてくるってさ」
「そうなのか。それではあやつが起きるまで待っているとしよう」
「了解だ。そういえば今日はランドさんとバーナルさんが来ているぞ」
「おおっ、それはちょうどいいのじゃ。あとでアンネルのやつを紹介するとしよう」
今日は獣人冒険者のランドさんとバーナルさんも朝からキャンプ場に来てくれている。あの2人はサンドラの正体が古代竜であることを知っていて普通に接してくれる友人だ。たぶんアンネルさんとも普通に接してくれるだろう。
……一応あとで様子を見ておくとするか。
「お待たせしました。トマトジュースのミルク割りと日本酒がひとつずつになります」
「ありがとう、ユウスケ」
「うむ、ありがとうなのじゃ」
「ランドさんとバーナルさん、こちらがご注文のビールです。料理は順番にそれぞれ持ってきますね」
「おう、いつもサンキューな、サリアの嬢ちゃん」
「やっぱりまずはこの冷えたビールからだよな!」
そして昼が過ぎて、ようやくアンネルさんが起きてきたようだ。先程注文をもらって、サリアと一緒に飲み物と料理を持ってくる。それまでの間、サンドラはランドさんとバーナルさんと一緒にバドミントンをして楽しそうに遊んでいた。
ランドさんとバーナルさんは獣人でかなり身体能力が高いのだが、それでもサンドラ相手に2対1で互角くらいなんだから、やっぱりサンドラは古代竜なんだよなあ……
よくあんなに俊敏に動けるものだよ。サンドラに聞いたら、あの姿ではだいぶ力が制限されていてあのスピードだと言うからな。
「ぷはあ~! 相変わらずここのビールはうまいぜ!」
「うむ。こっちの日本酒もうまいのじゃ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます