第208話 サンドラのお土産


「ユウスケ、また来たぞ!」


「ああ、サンドラか。いらっしゃい」


「おお、サンドラ殿、久しぶりじゃな」


「おっ、サンドラさんじゃねえか」


「相変わらず元気そうじゃな、サンドラさん」


 エルフ村のみんなとランドさん達がパイを楽しんでいると古代竜のサンドラがこちらのテーブルにやってきた。


 そういえば今日は週末だったな。相変わらずサンドラは毎週欠かさずにキャンプ場へ来てくれている。もうサンドラもこのキャンプ場の立派な常連である。


「むむ、なにやら見たことがない料理があるようじゃな! もしかして新しい料理かのう?」


「ああ、これはパイというお菓子だ。普段キャンプ場では出してないんだけれど、この前キャンプ場に来てくれたお客さん達と作ったんだよ。ちゃんとサンドラの分もあるから安心しろ。まあ量はそこまでないけれどな」


「菓子というとあのケーキや果物を使った甘いやつじゃな! それは楽しみなのじゃ!」


 サンドラはキャンプ場で出していたケーキも果物のデザートなどの甘いものも大好物だ。まあ自然界に甘い食べ物自体がそれほどないからそれも納得だ。


「今回のパイは甘くて温かい料理だからサンドラも気に入ると思うぞ」


「おお、それは楽しみなのじゃ!」


 子供のような笑顔で無邪気に笑う小さな女の子の姿をした古代竜。相変わらずサンドラの正体が巨大な古代竜だということはいまいち信じられない。


「おっと、そうじゃった! 今日はみなに土産を持ってきたぞ!」


「土産?」


「うむ! この前約束したじゃろ」


「約束……?」


 なんかしたっけか?


「ほれ、先日巨大なイノシシ型の変異種をたくさんもらった時に約束したあれじゃ! 今度珍しい食材を手に入れたら分けると約束しておったじゃろ!」


「ああ、そう言えばそうだったな!」

 

 先日の巨大なイノシシ型の変異種を倒した時に、あまりにも巨大すぎて食べきることができない大量の肉を巨大な収納魔法を使うことができるサンドラに渡した。その分の対価として、今度サンドラがドラゴンみたいな珍しい肉を手に入れたら少し分けてくれるように頼んだのだった。


 ちなみにあのイノシシ型の変異種の肉は、次の週にはすべてサンドラのお腹の中におさまってしまったらしい。結構な量を渡したつもりだったんだけどな……


「それで何をもってきてくれたんだ?」


 手ぶらでこのキャンプ場に来ているところを見ると、収納魔法で収納しているみたいだ。


「さすがにここでは取り出せんから、もっと広いあっちのほうにいくのじゃ!」


 ……えっ、そんなにデカいの?






「このあたりなら大丈夫じゃな!」


 サンドラに連れられてキャンプ場の誰もいない端っこのほうへと移動してきた。


「サンドラ殿が何を持ってきたのか楽しみじゃのう!」


「きっと俺達が見たこともねえようなヤバい肉とかだぜ!」


「ああ! もしかしたらまたドラゴンかもしれねえぜ!」


 オブリさんやランドさんとバーナルさんも一緒にいる。3人ともサンドラが何を持ってきたのか興味津々みたいだ。かく言う俺もサンドラが何を持ってきてくれたのか、すごく興味はある。


「……サンドラさんは何を持ってきてくれたのでしょうね?」


「さっき聞いてみたけれど、見てからのお楽しみだって言って、教えてくれないんだよ……」


 今回はアルジャにもついてきてもらった。アルジャならこっちの世界の魔物とかにも詳しいだろうからな。


「それではここに出すぞ!」


「「「おお~!!」」」


 何もない空間から突然巨大なシルエットが現れた。


 てか、でけえな!


 現れたのは50m近くある巨大な真っ白な身体、そして巨大な真っ黒の瞳と長い触手……そう、サンドラが持ってきてくれたものは巨大な白いイカの半身だった。たぶんあの巨大だったイノシシ型の変異種よりも大きいかもしれない。


「こ、これはまさか!?」


「おお、良く知っておるな、オブリ。こいつは海にいる巨大魔物のクラーケンじゃ!」


「これがあの伝説の……」


「すげえ、これって海にいるあの伝説の魔物だろ! 初めて見たぜ!」


 クラーケン……元の世界では巨大な伝説上の生き物だったっけ。こっちの異世界には実物がいるんだな。


「このクラーケンは通称海の災害と呼ばれており、多くの船を沈めてきた魔物ですね……」


「この巨体で海の中を猛スピードで動くから、Aランク冒険者でも討伐することが非常に難しい魔物としても有名なんだよな」


 アルジャとバーナルさんが解説してくれた。


「……というかよくこんな大きなイカを倒せたな。しかも海の中にいたんだろ?」


「ふっふっふ、妾にかかればこんな魔物はイチコロじゃな! まあブレスが使えんかったのは少し手間じゃったが、風魔法で海から引きずり出してやったのじゃ!」


 相変わらず褒められることが嬉しいようで、無い胸をドヤッっと張るサンドラ。


 確かに海の中でこんな巨大な魔物を倒すのは非常に難しいのだろう。


「半分以上はすでに食べたがなかなかうまかったぞ。約束通り残りはみなにやるからうまい料理を頼むぞ」


「ああ任せておいてくれ!」


 これだけ巨大なイカだ、とても料理し甲斐があるな。さて、何を作るとしようか。





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【お知らせ】

いつも拙作を読んでいただき、誠にありがとうございます∩^ω^∩


この度、こちらのキャンプ場の小説が書籍化することが決定しました!

詳細については近況ノートにてご連絡しております。


自分の小説にイラストがつくのが今から楽しみで仕方がありません(*´꒳`*)

カクヨムコンテストの受賞も含めて、いつも拙作を読んで応援をしてくれている読者の皆様のおかげです!


この場を借りてお礼申し上げます!!


P.S.

フォローと評価がまだの方はお祝いにでも、ページの下にあります『作品のフォロー』と『★で称える』にて応援してくださると大変嬉しいです!

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