エピローグ

──数か月後


「ゆあちが事務って意外だなあ」

「まあ、そうだね」

 ダイニングテーブルで三人、結愛の就職先について話していた。

 最終的に結愛が選んだのは、優人の勤める会社の事務。

 ギャルっぽい格好を好む彼女には、おおよそ不釣り合いにも思える。


「これからの人生、何が一番かなって考えたら、優人だったの」

「ほー」

 結愛の告白に平田が感心したような声を出す。

「職場結婚なら分かるけれど、年がら年中一緒にいて飽きないわけ?」

 感心だけではなく、呆れてもいるようだ。


 こういう時は口を出さないに限ると、優人は我関せずと言った風に優雅に紅茶を飲んでいた。本人が選んだ道だ、とやかく言う必要もない。


「だって見張ってないと、いつ他の女がちょっかい出すか分からないでしょ!」

と結愛。

 優人は思わずお茶を吹いた。

「大丈夫?」

 平田が横に置いてあったタオルを渡してくれる。

「それなら事務じゃなくて、警備員になればよかったのに」

と平田。

 優人はさらにむせた。


──何を言っているんだ、こいつらは。


「警備員は制服が可愛くないから」

と結愛。

「そこ?!」

 ナイスツッコミ、平田。

「だからね。結愛がいつも、じいいいいいって優人を見張っているの」

「他の女じゃなく?」

「そう! 優人を」

「ま、せいぜいクビにならないようにな、ゆあち」

 なにしに来る気なんだ会社にと思いながらテーブルを拭く優人。

 先が思いやられそうである。


「ところで優人ってなんでモテるの?」

と結愛。

「さあ?」

と平田。

 酷い言われようである。

「おまえら、いい加減にしろよ。結愛も平田も告って来たのそっちじゃないかよ!」

 流石の優人も手を握り、決断力のポーズをキメた。


「だってえ。優人って告られたらすぐつきあっちゃうでしょ? 他の人に取られるのは嫌なの」

と結愛。

「優人って誰と付き合っても上手くいかないだろ? そのくせすっごい落ち込むし。俺ならって思っちゃうんだよねえ」

と平田。

 どこが良いとかでないあたり、複雑な心境だ。


「まあ、隙がある人はモテるって言うしねえ」

「何それ、結愛と付き合ってても優人が幸せじゃナイみたいじゃない」

 ぷくっと膨れる結愛に、優人と平田は顔を見合わせる。

「ちょ、なに?! 二人して、無自覚なの? みたいなそのアイコンタクト」

「いや、何も言ってないでしょ?」

と平田。

「うん、幸せだよ」

と優人。


「優人! 覚えてなさいよね。今夜は寝かせないんだから!」

 手を握り殴るふりをする結愛に、

「声は抑えてね」

と平田。

「いっぱい聞かせてやるんだから! 聞き耳立ててね平田」

 もう、何が何やらわからない。


**


 色んなことがあったけれど。

 いつの間にか自分の日常に君が溶け込んで。

 それがいつか当たり前になっていた。

 きっとこれからも色々あるだろう。

 そんな時は二人で、乗り越えて行けたらいいなと思う。


  『世界で一番愛しい君を』

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【完結】世界で一番愛しい君 crazy’s7 @crazy-s7

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