4 『大切な恋人』

 さすがに同じ部屋では寝かせられないとは言われたが、家族の反応は悪くなかった。

「優人、これ」

 夕飯を家族と共にし少し打ち解けた彼女は、優人の部屋に入ると学生鞄のなかから何かを取り出して優人に向けた。

「ちょっと早いけれど、誕生日プレゼント」

と彼女。

 ホームページのDiaryにて、

『もうすぐ彼氏の誕生日』

と書いてあったことは確認したものの、こんな風に祝ってもらえるとは思っておらず、優人は埴輪顔になった。


「なにその反応! おかしくない? 可愛い彼女がおめでとうって言っているのに。普通はありがとうとか嬉しいとか、さすが結愛とか……」

「嬉しい」

 思わずその身体を抱きしめると彼女は急に大人しくなる。

 照れているのだろうか?

「頑張って編んだの。何回もやり直して」

と彼女はプレゼントについて語りだす。

「優人、寒がりでしょ? 手作り喜ぶかなって思って。だって結愛が寂しいって言ったらお手紙くれたし」


 結愛の独白を聞きながら、

『いつから俺は寒がりになったのだろう?』

と思いつつ、先日手紙を渡したことを思い出す。


 『優人に会えない時は寂しい』とか、『優人は達筆で意外だ! ただのチャラ男だと思っていたのに』とか失礼なことを言うので、直筆で手紙を書いたのだ。

 日々勝手に更新されていく自分プロフィールに吹きだしながら、それでも怒らないのは、この思い込みの激しい彼女のことをとても好いているからだと思う。

 自分は一体どんな奴だと思われているのだろう?


──あることないこと勝手に書かれているしなあ。

 

 彼女のホームページに書かれている彼氏のプロフィールを読んで、何度紅茶を吹いたことか。


 女にモテる。ちょっと目を話すと浮気してる。

 連絡すると大抵女といる。頭は良い。

 優しくて結愛を溺愛してくれている。

 達筆でタラし。高身長、以下云々……。


──俺、そんなモテたか?


 優人はそこかしこでフラグを立てていることには無自覚だったので、彼女のホームページに書かれていたことを再び思い出し、吹きそうになった。


「ねえ、優人」

「うん?」

 胸の中の結愛がぎゅっと抱き着いて、声を発する。

「クリスマスは一緒にいようね」

「うん」

 そんな約束、簡単に守れると思っていた。

「結愛、駅前の商店街のクリスマスツリー見に行きたいな」

 そんなのあったのか、と思いながら『いいね』と返す。


「映画観ようか。持ってきたんでしょ?」

 ぎゅっと抱き着いていた彼女が名残惜しそうに、優人を見上げる。

「ロマンチックなやつ」

「え、意外」

 思わず漏れてしまった優人の声に、

「意外?」

と不思議そうに首を傾げる彼女。

 その姿があまりにも可愛らしいので優人は思わず、彼女に軽く口づけたのだった。

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