6 『真実に気づくとき』
君は、似た人が好きなのだろうか?
似ているから、好きになるのだろうか?
それとも、似た人を求めているのだけ、なのだろうか。
いや。そもそも、自分は”何が”や”どこ”が似ているのかを彼女に
仮に聞いたところで、明確な答えが戻ってくるわけでもない。諦めの境地とは、こういうことなのだろうか。
少し違う気もするが。
きっと、似ている人を探すくらいなら俺で良いじゃないかと心の何処かで思っているからだ。
明確な答えを聞いて、砂粒くらいの希望さえ失うことが嫌なんだ。
──逃げているのは、自分。
だが、いい加減こんな関係にも終りが必要だと思っている。
このままじゃ互いの為にはならない。辛いのはどっちだろうか。
『お前ってさ』
平田に言われたことを思い出す。
『本気になったことあるの?』
酷いことを言うんだなと思った。
本気じゃなかったなら、こんなにいつまでも繋がっていない。ただ励ますためだけに。
用がなければ、連絡すら来ない。こっちから連絡してもスルーされるのだから。
これは自分がしたことへの罪と罰なんだと、甘んじて受け入れているだけだ。
考え事をしていると、Give a Little Moreが流れ始める。
まるで自分のことのようだと思いながら、心の中で苦笑いをする。
「初めは上手くいってたんだよ」
「そうだろうな」
自分が渦中だった時のことを思い出す。
あの時も、元彼の話ばかりしていたなと。ちゃんと終わりにしないから、こうなるんだよと呆れながらコーヒーカップに手を伸ばしかけてハッとする。
──待てよ?
優人はあることに気づき、口元を抑えた。真っ赤になって。
「どうしたの? 優人」
「なんでもない」
「顔赤いよ」
不審そうにこちらを見る、彼女。
「ちょっと黙ってろ」
と制止を試みるが、
「何、厭らしいことでも思い出してるの?」
「おま……ッ。俺がいつ、そんなことをした」
「あー。優人、不能だもんね」
彼女の暴言に、優人は黙った。
失礼なことばかりいうやつだな、と思いながら。
こんな時は、無視するのが有効である。
自分の前に二人、恋人がいたことは知っている。
自分の前彼とは、別れた後も話をするような仲だったらしい。そのことに嫉妬したことはもちろんあるが。どうにもならないことだった。だから諦めたのだ、自分の中の嫉妬心と戦うのは。
耳を塞いで聞かないフリをし続け、心がボロボロになってもその事にすら気づかぬままに。
そうして最後は自制が効かないほどに、ぶっ壊れた。穏やかだったはずの自分。
彼女には、違う自分しか映っていないのかもしれない。
しかし、一つ言えることがあるならば。
彼女の中の一番は、紛れもなく”過去の優人”なのだ。
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