初めての仲間 003
「やったやったー! これで依頼を請けられるわ! ありがとう、イチカ!」
ミアはベンチから飛び跳ね、僕とパーティーを組めたことをこれでもかと喜んだ。
ここまで感情を露にしてもらえると、恥ずかしいと同時に嬉しくもある。
「あ、でもイチカはまだレベル1だし、簡単な依頼から始めていきましょ! このミア様に全て任せるがいいわ! ダメージは与えられないけど、防御力はそのままだから安心して! 私が盾になっている間に、イチカが敵をボコボコにするのよ!」
「ちょ、ちょっと止まって、ミア」
僕は今にも踊り出しそうなミアを制止し、ベンチに座らせる。
「何よ、盛り上がってたのに」
「盛り上がるのは待って。一つ、聞いてほしいことがあるんだ」
これから仲間になる上で、重要なこと。
僕の真剣な表情を察して、ミアは立ち上がろうとしていた足を静かに止める。
「……とりあえず、僕のステータスも見てほしい」
僕はステータス画面を表示し、その無様な数値を晒す。
だが、ミアは一早く異常な部分に気づき、大きな目を更に丸くした。
「これ……こんなスキル、聞いたことないわ。対象の生命力を1にするなんて……どういうことなの?」
彼女の純粋な疑問に対し、僕は自分に起きた出来事について語る。
とは言っても、異世界から転生したという箇所は省き、虚実ない交ぜに、だが。
カミサマという人物がミスをして僕のレベルが上がらなくなり、そのお返しに最強のスキルをもらったという説明である。
カミサマに言わせれば、説明ではなく設定なのだろうか。
「……なるほど、カミサマね。まあ、そんな超常的な存在がいたとしても不思議じゃないけど」
ミアは一応納得した風に頷いてくれる。
レベル1の僕が人外なスキルを持っている理屈として、荒唐無稽な説明を一旦受け入れてくれたのだろう。
「つまり、イチカはどんな魔物が相手でも生命力を1にできるってこと?」
「魔物だけじゃなくて、人間も……ステータスが存在する相手には、スキルが有効なんだと思う」
幼馴染のキリスたちや、昼間のスライム……今のところ、例外なく生命力を1にできている。
「……それって、ほんとに最強なんじゃない? 相手がレベル100だって関係ないわけでしょ?」
「試してないからわからないけど、多分」
カミサマがわざわざお詫びとしてくれただけあって、スキルの性能が並外れているのは間違いない。
だが、僕一人では駄目なのだ。
ステータスがレベル1のまま変わらない僕では、遅かれ早かれ死んでしまうだろう。
「僕は自分一人じゃまともに戦えない。だから、ギルドに入って仲間を募った……そこに現れたのが、ミアだったんだ」
「何それ、新手の口説き文句? 流行んないわよー、そういうの」
言いながら、ミアは苦笑する。
少し言い回しが臭かっただろうか。
おじさんの感性なのかもしれない。
「口説き文句ってわけじゃないけどさ。でも、ここまで綺麗にピースが嵌ると、嬉しくなっちゃって」
「ピースが嵌った?」
「うん。ミアのスキルって、言い換えればどんな相手にも必ず1のダメージを与えられるってことだろ?」
「与えるダメージが全て1になる」。
それは裏を返せば、到底攻撃の通用しない防御力の高い相手に与えるダメージも、0ではなく1になるということ。
対象の生命力を1にできる僕。
誰に対しても1のダメージを与えられるミア。
まるで隣り合ったパズルのピースみたいに、互いを補い合うことができるスキル。
あまりに綺麗に嵌り過ぎるが故に、気持ち悪さすら覚える程である。
何者かの意志が介入し、何かしらの都合のために用意されたような展開。
カミサマと名乗る真っ白な女の子の存在を知ってしまった僕は、そんな風に感じてしまうのだ。
けれど。
変に難しく悩んでいる僕とは対照的に、ミアは笑う。
「……そう聞くと、なんか運命みたいね」
そっちの方がよっぽど流行らなさそうな言い回しだが、しかし。
この出会いを表すのに、それ程相応しい言葉もないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます