第16話 =嘆けとて=

 『嘆けとて 月やはものを思はする かこちがほなる わが涙かな』


 鎌倉の時代に出家して京都で法師となった元武士の西行法師の歌である。

 「嘆け」といって月が私に物思いをさせるのだろうか。いや、そうではない。本当は恋の悩みだというのに、まるで月のせいであるとばかりにこぼれ落ちる私の涙であるよという意味だといわれている。

 これを悠人はこのように読みかえたに違いない。



 『嘆けとて 美月はものを思はする かこちがほなる わが命かな』



 果たして悠人は、どこへ向かって歩き出したのだろうか。

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