第58話 弟に馬鹿にされて、やっとアル様の言った意味が判りました。

「えっ、シルフィ、アル様に王宮の塔に案内してもらったんだ」

「そう、とっても夕日がきれいでした」

「なにか言われた?」

「別に大したことは言われていないわよ」

「なんかそれっぽいこと言われなかったの?」

「それっぽいことって何よ?」


今日はアル様は用事があるとのことで欠席だった。お昼はタチアナとクンラートと食べている。その二人に昨日のことを聞かれた。たしかに景色はとても綺麗だったけど、それっぽいって言葉ってなんだろう?


「変だな、アルは昨日、絶対に決めるって言って帰っていったのに」

「クンラート様、何か言われました?」

何かクンラートがつぶやいたので、私は聞くと


「いや、何でも無いよ」

クンラートが首をふるんだけど。


「本当に何も言われなかったの?」

タチアナが再度確認してくる。


「なんにもないわよ」

私が少しムッとして言う。


「でも、上から見たら行ったたことのある茶色い帽子屋とか恋人の泉とか見えてとても楽しかったわ」

私が楽しそうに話すと、


「あいつ何しているんだろう。きれいな景色をシルフィに見せただけかよ」

「本当にね」

何故か二人は残念そうな顔をしているんだけど。


「あとはこの景色をまた一緒に見に来たいと言われたから頷いたけれどそれかな」

私が思い出して言うと


「それよ」

「あのヘタレ、何しているんだよ」

「本当にシルフィは鈍いんだから」

「絶対にはっきりと言えってアドバイスしたのに」

なんかこの二人とんでもないこと言ってくれるんだけど。


「ちょっと、二人共どういう意味よ」

私がムッとして二人に言うと


「あああ、見えてきた。アルは必死にシルフィに言うんだけど、シルフィ的には遠回し過ぎて伝わらない情景が」

「本当にそばで見ていたら流石にアル様が可哀相になってくるわよね」

クンラートとタチアナが二人で盛り上がっているんだけど、何を言っているのか全然判らない。


「ちょっと二人共何言っているのよ」

「鈍いシルフィには教えてあげない」

「そんな事言わずに教えてよ」

「二人のことに他人が口を出してはいけないからな」

聞いたのに二人は教えてくれなかった。

なにそれっ、本当にケチだ。




あまりに気になったから、その後クラスでパウラに聞いたら、


「ええええ! 本当ですか。アル様にそんな事言われたんですか?」

パウラが驚いたんだけど。


「そうよ。でも、景色を一緒に見るのがそんなに大変なことなの? じゃあ断ればよかったの?」

そう聞くと、パウラもとても残念なふうに私を見てくるんだけど・・・・何故・・・・


「いや、そう言うことではなくてですね・・・・」

「ちょっと、パウラ、何か判ったら教えてよ」

「えっ、でもそれは私の口からは・・・・」

パウラが言うんだけど。周りにいた女達が皆頷いているのは何故?



だれも、教えてくれないんだけど、私、そんなに変だっただろうか?




でも、皆が言っていた意味が部屋に帰った時に判ったのだった。


珍しく一人で部屋に帰ると、


「姉さん。王太子殿下に告白されたんだって!」

待ち構えていた弟に言われてしまったのだ。


「えっ、なにそれ。友達から始めたいみたいなことは前に言われたけれど」

「違うよ。昨日、殿下が大切な思い出の塔の上で姉さんに言ったんでしょ

『この塔の上からの景色を、ずうーーーーっと一生涯、君と共に見ていたい』って。友達から聞いたんだけど。もう学校中その噂で持ちきりだったよ」

「えっ、そんな事は言われていないわよ。『出来たらこの景色をこれからも一緒に見てくれないか』よ」

私が訂正すると


「どこが違うんだよ。一緒だよ」

「そんな事ないでしょ」

「姉さん、鈍すぎ!」

弟が言って頭を抱えているんだけど。


ウッソーーーー、あれって結婚の申込みだったの?

全然判らなかった。

私は皆が残念そうに言う理由が初めて判ったのだ。



「本当に姉さんって鈍いよね」

真っ赤になった私の横でボソリと呟いたエリアンの言葉が私の心にぐさっと突き刺さった。



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