第56話 アル様にお城の塔に案内してもらって頼まれたので頷いたら残念な顔をされました。
結局、学園舞踏会は母と王妃様が暴れて、中止になってしまった。
楽しみにしていた皆には悪いことをしたなと思う。まあ、また、日を改めて行うそうたから良しとして欲しい。
捕まった侯爵一家の罪は重いそうだ。下手したら処刑だ。良くても一生涯の幽閉。まあ、殺されそうになったのだから、自業自得だとは思うけれど。
テレシア様が、
「今度こそ、私の出番で暴れられると思っていたのに!」
と残念がっておられたけど・・・・
学園で暴れないで欲しい。学園も古いのでテレシア様が暴れたら潰れますから、真面目な話。
そして、王宮では王妃様とテレシア様と、うちの母が更に一大勢力になってしまったそうだ。
もう完全に他を圧倒していた。
男性陣は小さくなっているというか、誰も反抗しようとしないという噂だ。絶対に侯爵夫人の裸の映像が尾を引いている。母は相当色んな人の弱みを握っているらしい。みんな相当に怖れているみたいだ。
先生方の私に対する態度もガラリと変わって、みんな、腫れ物を扱うように丁寧に扱ってくれるんだけど、何故に?
ファネッサ先生は変わらなく接してくれるんだけど、いや、更に厳しくなっているんだけど・・・・。
「未来の国を背負っていくあなたがこんな事でどうするんですか?」
いや、私は国を背負うつもりもないんですけど・・・・。
クラスの面々もあっという間に、私の周りによってきて、もう大変だ。
今まで私をいじめていたクロメロンとか、デブアニカも私を前に褒めちぎるとか本当に止めて欲しい。
私が少し冷たくすると
「シルフィア様。我が家を潰さないで下さい!」
って泣きこんでくるんだけど、そんな権限も何もないって! いくら私が言っても聞いてくれないんだけど・・・・・
そんな中、私は朝夕の通学は完全にアル様と一緒だった。そして、お昼時も。それも今まで以上に近くなって、私としては本当にシャレにならないんだけど。周りから邪魔してくるものは誰もいなくなって、皆当然という感じで見てくれんだけど。いや、違うだろう!
そらあ、一緒にいて楽しいし、気を使わなくていいから良いんだけど・・・・。
王太子殿下に対して気を使わなくていいというのは、どういうことだとは思うんだけど。これも慣れなんだろうか?
いやいやいや、それは良くないだろう・・・・。
でも、母同士はとても仲がよくて、一緒にいるし、私も休みの時には強引にその中に入れられて、お茶会とか諸々のお付き合いの中に放り込まれて、大変なんだけど・・・・。
それも、何故か席が王妃様と母の間なんですけど。こんなのあり?
タチアナに相談したら
「あなたの母様の娘なんだから、もう諦めなさい」
って言われてしまったのだけど、それは母だけで、私を巻き込むのは止めてほしいんだけど。
そうかと思うと、アル様に連れられて城下でお菓子を食べ歩いたりしていた。アル様は私も知らない美味しいところを知っていて、本当に楽しかった。
休みの時に、王妃様とアル様がかち合った時は二人で私の取り合いをするんだけど、それは止めてほしい。
私は王宮にいるから逃げられないし・・・・。母はあんまりいい顔をしないんだけど、母のほうがもう王妃様とテレシア様に引っ張り回されて、いや、下手したら進んでしているように思うのは気のせいだろうか。
そんな中、帰りの馬車の中で
「シルフィ、少し君に見せたい物がある、ちょっとだけ付き合って貰えないだろうか?」
アル様が切り出された。
そう、私はあい変わらず、アル様と一緒に登下校しているのだ。もう誰もそれを咎めないんだけど、何故?
「絶対に君も気にいると思うから」
「あんまり遅くなるのは母が心配するんですけど」
私が懸念事項を言うと
「いや、王宮の中だから大丈夫だ」
「判りました」
アル様が言われるなら、相当なものなのだろう。私は少し楽しみになった。
「着いたよ、ここだ」
アル様は王宮の中の塔に案内してくれたのだ。
うわあああ、塔の中ってこんなふうになっているんだ。
螺旋階段がずうーーーーっと上まで続いている。
アル様は前に立って手を引いてくれた。
階段をゆっくりと登る。
少し怖いけれど、冒険みたいで楽しい。
アル様は私のペースに合わせてくれた。
「ごめんね。少し大変だよね」
中々大変な上りだった。
はあはあ言いながら、やっと登りきった。
と思った目の前に、いきなり地平が開けたのだ。
そこには夕日が照らす王都が一望に広がっていた。
「うわあああ、凄い!」
私は感激して夕日に染まる王都を見た。
「そうだろう」
アル様も私の横に立って景色を眺めてくれた。
なんか言葉も発するのが難しいくらいきれいな景色だった。
「どう?」
「いや、もう言葉にも出来ないくらい素晴らしい景色だなって思って」
私が景色を見ながら言うと、
「俺はいつも辛いことがあるとここに来て、この景色を見て心を慰めていたんだ。こんな素晴らしい景色を守るためにも、もっともっと頑張らないといけないって」
アル様は景色を見ながら言われた。その姿はとても凛々しかった。
そう、彼こそ、間違いなく、この国の王太子なのだ。
「シルフィ、出来たらこの景色をこれからも一緒に見てくれないか。まずはそれから始めてほしいんだけど」
アル様が何か少し緊張しているんだけど・・・・
「えっ、この景色をですか。見るだけなら全然問題ないですよ」
こんなきれいな景色を見せてくれるなら、何も問題ないはずだ。
「えっ、いや、その・・・・」
なんかアル様の反応が微妙なんですけど・・・・何で?
そう思って下を見たら見覚えのあるものが見えた。
「あっ、アル様、あのお店、この前食べに連れて行ってもらったケーキ屋さんです」
私が行ったことのあるケーキ屋さんを指さした。
「えっ、あ、本当だ」
「あ、あの横にあるのはクレープ屋さんじゃないですか」
私は嬉しくなって次々に行ったところがあるものを指さしていった。
なんかアル様が呆れていたような気がしたんだけど、なんでなんだろう?
私は景色を思いっきり堪能したのだった。
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