第6話 ヒロインだと判って動揺のあまり色々悪役令嬢のあれこれバラしてしまいました

「そこのあなた、どういうつもりなの? クンラート様と親しくして。クンラート様には私という婚約者がいるを知っていてクンラート様に近付いているの?」

私の前にはいきり立ったタチアナ様がいた。


嘘ーーーー、やっぱり私がヒロインだったの?


私は唖然とした。


ちょっとどうするか考えようとして折角外に出てきたのに、ここでタチアナ様に捕まるなんて、なんて事なの! まだ、どう対処していいか全く考えていない。


私はどうして良いか判らなかった。


ただ、驚いて首を横に振るだけだった。


でも、そこに、出てこないでいいのに、ワラワラとタチアナ様の取り巻き令嬢たち、1年B組のクロメロンとデブアニカたちが出てきたのだ。


「ブールセマ様。私達もこの子にベーレンズ様に近づくのをやめろって忠告したのです。でも、この子ったら聞かなくて」

「そうですわ。それもこの子あろうことかベーレンズ様にブールセマ様とちゃんと話をするように言っていたそうですよ」

「な、何の話をするように言っていらしたの」

「別れ話じゃありませんこと」

「まあ、酷い。ブールセマ様の想いを踏みにじって自分が間に入り込もうなんて、なんて酷いことを考えているのでしょう」

「ちょっと自分が人と違ったピンクの髪の毛をしているからっていい気になって」

「本当に平民の女ごときがブールセマ様に成り代わってベーレンズ様に近づこうと考えているなど許されませんわ」

ちょっとあんた達、めちゃくちゃ言わないでよ。私はクンラート様とタチアナ様を応援しているのであって、邪魔したいのではないわよ。


私は大声で否定したかった。


でも、さすがにこの大人数で囲まれて、それを理論立てて説明できるかというと中々難しかった。


「ちょっとお前ら。何よってたかって、一人の女の子を虐めているんだ。恥ずかしくないのか」

その時突然後ろから声がした。


そちらを見るとクンラート様が怒って立っていたのだ。


「タチアナ、お前が徒党を組んでシルフィを虐めるなんてどういう事だ」

クンラート様が私を庇って言ってくれたのだと思う。

でも、私を庇うよりもタチアナ様を庇って欲しかった。


「クンラート様。この子の事をシルフィと呼ばれましたか?」

青くなったタチアナ様が私を指さして言われた。


「えっ、いや、すまん」

クンラート様は慌てられた。親しい者を名前呼びするのだ。私をシルフィと呼ばれたことで私と親しいと言っているようなものなのだ。



「だってこいつの見る夢はすごいんだぞ。お前の所のペットの犬の名前が俺のクンラートから取ってラートって言うんだとか、偶にタチアナが良いことがあるとラート様と言ってその犬に頬ずりするとか言うんだけど俺とは関係ないよな」

慌てたあまり、クンラートが余計なことを言ってくれた。そんな事、皆の前で言って良いはずないでしょう。


「な、何を言われるのですか。そんな訳ないでしょう」

必死に否定するタチアナ様はめちゃくちゃ可愛い。


「そら見てみろ。シルフィ、タチアナはそんな事していないって言っているじゃないか」

「そんな訳ありませんわ。昨日のお昼もベーレンズ様がブールセマ様の横を無視して通られた時、ブールセマ様はとても悲しそうな顔をしていらっしゃいました。そこは婚約者なんですからベーレンズ様から手を振るなり、話しかけるなりされたら良いでしょう」

「お前何言うんだよ。そんな恥ずかしいことが出来るかよ」

「その時のブールセマ様の髪飾りの色は」

「俺の髪と同じ黒色」

それを聞いてタチアナ様は赤くなられた。

そう、クンラート様はちゃんと気にしていらっしゃるのです。


「何を言わすんだ。シルフィ。そらあ婚約者の髪飾りの色くらい普通は見ているぞ」

クンラート様も真っ赤だ。この二人お互いにツンデレなんだ。


「クンラート様も見るところは見ていらっしゃるのですね」

私が言うと

「はっ、そんな訳ないだろう。タチアナ、こいつは言うんだぜ、俺と話せただけで、タチアナがベッドに枕抱えてキャッキャッ言ってゴロゴロしているって。俺と話しただけではそんなことはしないよな」

タチアナ様はその話を聞いて固まってしまった。そう、ゲームでそうしたシーンが出てくるのだ。まさか悪役令嬢がそんな事するのかと私は固まってみていた覚えがあるのだ。タチアナ様はもうブルブル震えている。

そんなタチアナ様を皆唖然として見ている。


「そ、そうですわ。そんな訳あるはず無いでしょう」

もう、タチアナ様はシドロモドロだ。目が涙目ですらある。私は自分が皆に囲まれて断罪されているのも忘れてその姿に見入ってしまった。


「そら見てみろ!」

勝ち誇ったようにクンラート様が言うのだけど、何言っているのよ。本当のことなのに。タチアナ様の反応見ていたら判るじゃない。タチアナ様も否定しなくてもいいのに。まあ、こんな人前では認められないか。


「それに、ペットを抱っこして『今日、クンラート様に話しかけられましたの』と言って嬉しそうにそこらじゅうを歩き回るとか言っていたぞ。そんなの嘘だよな」

もう、タチアナ様は真っ赤になって固まっていた。顔がのぼせている。


「そんな訳はございませんわ。すいません。クンラート様。用があるのでこれにて失礼ますわ」

真っ赤になってタチアナ様は出ていかれたのだ。耐えられなかったみたいだ。でも、その前に一瞬、私をすごい怖い顔で睨みつけていかれたのだ。


嘘!


これは絶対に怒らせた。タチアナ様を怒らせてしまった・・・・。

私は呆然とした。ちょっと言い過ぎたみたい。


「ちょっとタチアナ様」

取り巻き令嬢達も慌ててその場を後にした。


「クンラート様。酷いです。皆の前でタチアナ様の恥ずかしい話をバラされるなんてどういうことですの。それも私が言ったってバラすなんて・・・・」

残された私はクンラート様を睨みつけたのだ。


「いや、そんな事はほんとうの理由はないと思ったから言ったんだ。タチアナも否定していただろう」

「いやいや、あれはどう見ても図星をさされたって顔していたな」

今まで隠れていたアル様が出てきて言われた。


「そうですよね。どう見てもそんな感じでした」

こいつら2人して私が囲まれて言われるのを見ていたんだ・・・・。私は返しつつ白い目で二人を見る。


「そんな訳ないだろう」

クンラート様は否定するけれど、どう見てもそうだろう。


「でも、お前がタチアナ嬢の髪飾りの色まで覚えているなんて知らなかったぞ」

「なに言う。たまたまだ。俺の髪の色だから覚えていただけで」

クンラート様はアル様のからかいに必死に反論していらっしゃったけど、どう見ても気にしていらっしゃるでしょう。この二人は相思相愛なんだという事は判った。


それよりも、タチアナ様の恥ずかしいことをバラしてしまった私は果たして許されるんだろうか?


なんかタチアナ様の視線も怖かったし、私の前途はこのボケクンラートのお陰で真っ黒になってしまったんだけど、どうしてくれるのよ!

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