第35話 千雪への支配
千雪の霊体は,ふたたび千雪の肉体を支配した。そして,ゆっくりと目を覚ました。千雪の隣には千夏がいた。千夏の霊力のレベルは,千雪と同等かそれ以上のレベルにまで達していた。
千雪「千夏,急に,そんなにレベルアップして,どうしたの?そんなに強くなると,わたしの出番がなくなっちゃうわ」
千夏「千夏様なんですね? リスベル様が,自分のことを千影様と呼びなさい,とおっしゃったので,そう呼びますが,千雪様は,ずーっと睡眠状態になっていたのです」
千雪「そうだったの? 私が寝ている間,何があったか,かいつまんで説明してくれる?」
千夏「はい」
千夏は,この一週間のできごとを詳しく説明した。
千雪「そうだったの,,,千秋と千冬が合体魔法で合体できるの,,,すごいわね。なんか怖いものなしのような感じだわ」
千夏「そうなるかもしれません」
そんな会話をしているとき,エルザが,ゆっくりと千雪のそばに来た。千雪は,エルザの胸をみて,びっくりした。
千雪「エルザ? いつの間にそんなにボインになったの?」
エルザ「リスベルのせいよ。おまけに妊娠させられたわよ。フレールもね」
千雪「リスベルさんは,やっとあなた達を抱けたのね。思いは通じるものなのね」
エルザ「何が思いは通じるよ! 妊娠させられたのよ。千雪,あんた責任とってよ。金貨一万枚でいいわよ。2人分で金貨2万枚ね!」
千雪「え? なんで,そうなの? でも,国王にお願いしにいきましょうか? 国王はリスベルの兄だから,責任とる義務があるはずよ」
エルザ「なるほど,,,それ,いいわね。明日にでも,モルファ長官に連絡とるわ。それは,それ。あやうく忘れるところだったわ。寅吉がリスベルに消滅させられたのよ。復活させてちょうだい!!」
それから,エルザは,寅吉がリスベルに消滅させられた経緯を説明した。千雪は,状況を理解して,すぐに寅吉を復活させた。復活後,寅吉はリスベルに仕返しをするため,ひそかにレベルアップを図ることにした。
ーー
翌日,エルザがモルファ長官に連絡しようとして,魔力通信装置をみると,彼が今からここに訪問するとの連絡が来ていた。そして,彼は,まもなくして,姿を現わした。
モルファ長官「エルザさん,お久しぶりです。千雪さんと話がしたいのですけど,いらっしゃるかしら?」
エルザ「私から連絡しようと思っていたのよ。いいタイミングで来たわね。どうぞどうぞ,会議室へ」
モルファ長官は,どうして歓待されたのか,よくわからずに会議室に通された。
ー会議室ー
モルファ長官「千雪さん。ご無沙汰しております。要件を先に申し上げます。国王がぜひ千雪さんに会いたいとのことでした」
千雪「そうですか。では,今から,国王の所に行きましょう。エルザ,フレール,一緒にいくわよ」
エルザ「はーい,待ってました」
フレール「すでに転移座標点を調べてありまーーす」
モルファ長官「あのーー,事前に日程を調整しないといけないので,,,」
そんなモルファ長官の言葉など,聞く耳を持たなかった。
千雪「OK,じゃあ,転移してちょうだい。あ,そうそう,寅吉と千夏と合体千冬も呼んできて。ボディーガードをさせましょう」
千雪は,モルファ長官の細かな日程調整などをまったく無視して,千雪,エルザ,フレール,千夏,合体千冬,寅吉,そして,モルファ長官は,王宮の中庭に転移した。
モルファ長官は,慌てて,新人の国王秘書のものとに駆け寄って,国王との面談を急遽お願いした。新人国王秘書の引率で,千雪らは,特別貴賓室に案内されて,特製のケーキと高級飲料でもてなされた。
ケーキの後は,アイスクリーム,和菓子風のお菓子が山盛り出されて,あっというまに1時間が過ぎた。新国王になってから,急な来賓を受け付けており,いつでも対応できるように,常時このようなデザート類が常備されていた。
新国王リスダンが国王秘書を連れてやっと貴賓室に現れた。
リスダン国王「千雪さん,ご無沙汰してます。急に訪問されて,どうしたのですか?」
千雪「リスダンさん? いえ,リスダン国王でしたね。こちらこそご無沙汰しております。実は,リスベルさんのことで,ご相談があります。エルザ,フレールあなたがたから話しなさい」
エルザ「コホン,実は,私,リスベルに犯されて妊娠しました」
フレール「私もです。知らないうちに犯されて妊娠したのです」
リスダン国王は,まったく状況が理解できなかった。
リスダン国王「ちょっと待て。リスベルはもう半年以上も前に処刑されたはずだが?」
エルザ「でも霊体は残っています。その霊体は,千雪さんを支配しました。千雪さんは,現在,男性の機能も有しています。それで,リスベルが千雪の肉体を支配して,私たちの意識を飛ばして,無理やり犯して,妊娠させたのです。わー-ん。わー-ん!」
フレール「私たちは,処女でした。それをリスベルが奪ったのです。わ-ん,わ-ん!」
リスダン国王は,困惑した。なんで死んだリスベルが,あとあとまで迷惑をかけるのか? それに,話に何の確証もない。
リスダン国王「千雪さんがリスベルに支配されたという証拠もない。それに,そもそも,私は,その話と何の関係があるのでしょう?」
千雪「まず,リスベルは,国王の弟です。弟が死後行った行為に対して,エルザとフレールは泣き寝入りしなさいというのですか?それは,あまりにかわいそうです。ですから,かわりに,兄であるリスダン国王がエルザとフレールに賠償してもらいたいのです。
さらに,私の霊体はリスベルと連結されてしまったのです。精神科女医のサブリナさんによってです。サブリナさんが行った行為は,この王国で行われました。よって,サブリナさんの行為に対して国王に賠償請求をしたいと思います。賠償額は,エルザとフレールにそれぞれ金貨2万枚,わたしに対して金貨6万枚,合計金貨10万枚になります」
まったく一方的な要求だった。
リスダン国王「おいおい,待て待て。まず,リスベルが千雪さんの肉体を支配したという証拠はまったくない。それに,サブリナのことは,まったくのいいがかりだ」
千雪「わたしの肉体には,千雪の霊体とリスベルの霊体が共存しています。いま,リスベルは,起きていますから,リスベルにこの肉体を支配させます」
千雪の肉体を支配する霊体がリスベル(千影)に変わった。
リスベル「兄さん,久しぶり。できの悪い弟で申し訳なかったね。あの処刑の日,私は,そこの千雪に化けた寅吉によって処刑された。わたしは,反魂の指輪によって,別次元に引き込まれたの。その後,千雪の使者,小雪という名前だけど,小雪が人間界からドラゴンの指輪を使って別次元に来てくれたわ。そこで,私は,小雪によって,自分の肉体を女性化されたの。性格やしゃべり方も女性化したわ。その後,私は,肉体を失った。
でも,小雪は,私の霊体を保管してくれたわ。千雪の霊体が破損したとき,サブリナが,私の霊体で補修したのよ。私,リスベルの霊体を千雪の霊体と連結するという方法でね。千雪の肉体は,便利よ。女性にも男性にもなれるの。エルザとフレールを妊娠させたのは,確かに私よ。兄さん,悪いけど,彼女らに賠償してくれない? 千雪が言った10万枚は,はったりよ。エリザとフレールにそれぞれ1万枚でいいと思う」
リスダン国王「あなたが,リスベルである証拠は?」
影雪「そうね。実家の金庫の暗証番号でもいえばいいかしら。8943よ」
リスダン国王「そうか。間違いないようだな。二人で2万枚なら,私の給与の前借で,なんとかできそうだな」
千雪の霊体は,肉体の支配権を取り戻して,あわてて言った。
千雪「ちょっとまってよ。私は千雪よ。さっき言った10万枚は,本気よ。ちゃんと賠償してよ。サブリナにも確認していいわよ」
リスダン国王「金貨2万枚なら,私の一存で,なんとかしよう。でも10万枚となると無理だ。それにその理由が無茶苦茶だ。正当性がまったくない」
千雪「理由なんかどうでもいいでしょう。見て,このお腹。妊娠しているのよ。誰の子だと思う?リスベルよ。私もリスベルに犯されて妊娠させられたのよ」
これは,まったくの嘘だ。千雪自信の子供だ!!
リスダン国王「ちょっと待ちなさい。なんで,リスベルの子を妊娠するですか?!」
千雪「リスダンさん,あなた,私が無茶苦茶言っていると思っているでしょう? 理由は,どうでもいいのよ! 10万枚支払わないなら,国王側と締結した友好条約を,そろそろ破棄する時期のようね」
千雪は,この言葉を言いたかった。理由など,どうでもいい。
リスダン国王「いやいや,私は友好条約の精神に則って,それをもっと強化したいと考えている。例えば,親善試合とかね」
千雪「そう? 親善試合? 悪くないわね。じゃあ,その親善試合に参加する費用,一人1万枚でいいわ。千雪,寅吉,千春,千夏,千秋,千冬の6人かな? 金貨6万枚ね。勝利した側は,賞金5万枚を支払う,というのはどう?あなた方が勝利すれば,あなたがたの出費は1万枚ですむのよ。それは,さきほどの賠償の話とは別よ。どう?国王さん?」
リスダン国王は,国王と言っても,何も自分で決めることはできない。
リスダン国王「私は,国王になったばかりだ。まだいろいろなルールを勉強中だ。もう2,3日待ってくれないか」
千雪「明日,また,この時間に来るわ。またケーキとお菓子,飲み物を準備して頂戴。リスダンさんとの話は,今日みたく,私たちが来てから一時間後でいいわよ。明日,結論出さなくてもいいわよ。結論でるまで毎日来るようにするからね。フレール,転移してちょうだい」
フレール「はいはい,了解!!」
フレールは,そそくさと転移した。千雪の要望があまりにも無謀だったから,一刻も早く逃げたかった。千雪の部下であることに恥ずかしかった。せっかくリスベルがエルザとフレールのために,1人1万枚で交渉しているのに,千雪が自分の妊娠まで国王の責任に擦り付けて10万枚などと,欲の皮を突っ張ったのだ。交渉が決裂するのは目に見えている。おまけに,毎日,デザートを食べにくるなど,ここは喫茶店か!!
ーー
新国王秘書は,クスクス笑って国王に言った。
新国王秘書「この貴賓室,すっかり気に入られちゃいましたね。千雪さんて,精神分裂症なんですかね?言ってることが支離滅裂でしたね。そうそう,千雪さんの件,誰かと打合せを行いますか?」
国王「いや,今はいい。あの精神分裂症が落ち着いてからでいい」
新国王秘書「そうですよね。あれでは,教団側も混乱してしまいますよね」
まさに,今回の千雪の発言は,教団内部で混乱が生じた。
ー--
千雪御殿
エルザは,転送されるやいなや,千雪に食ってかかった。
エルザ「千雪ー-! 勝手に賠償金額吊り上げないでよ。あれじゃあ,まとまるものも,まとまらなくでしょ。おまけに,せっかく,うちのスタッフが公務員として採用されているのに,全部反故にされてしまうかもしれないのよ。それに何?友好条約の破棄??あんた,何考えてるの??せっかく混乱もなくやってきたのに,あんた,もう消えなさい。リスベルに代わってもらって!!」
フレール「そうよ。私,恥ずかしかったわ。千雪,交渉事は,リスベルに任しなさい」
千雪「なによ。あなたたち,今まで,さんざんわたしに世話になっておいて,その態度はなによ。反乱する気?」
エルザ「千雪に意見できるの,私たちしかいないでしょう。だから意見してるのよ!」
千雪「ううう,みんなして,わたしをいじめて,何よ,何よ,何よ,もー-! もう,帰る。魔界なんか,もう来ないわ。ふん,絶交よ!」
千雪は,半泣きになって自分のベッドに潜り込んだ。
エルザ「千夏,千雪をなだめなさい。千夏の大事な勤めよ。まだ,人間界に帰しちゃだめよ」
千夏「・・・,わたしではダメです。千雪様とは喧嘩しましたから。あとで,千秋と千冬にお願いします」
千夏は,さっさと逃げた。千雪の子守は,千秋と千冬に任すことにした。
千秋と千冬は,千雪と肌を合わせて添い寝して,小さな声でつぶやいた」
千秋「千雪様,機嫌治してください。千秋がいます。千冬もいます。機嫌を直してください」
千秋と千冬は,添い寝状態のまま,積極的に一連の愛の行為をしていった。
エルザは,千雪がいなくても,これまで教団をうまく運営しており,物品販売で十分な利益をあげていた。特にお金に困っているわけではないので,今回のような千雪のぼったくり的な請求には腹が立った。
エルザ「フレール,寅吉の生成方法は,千雪がいなくてもなんとかならないの?」
フレール「確か,尊師が,ナタリー最高顧問と協力して解析したって言っていたわ。となると,問題は,寅吉の霊体をどうやって回収するかが問題ね。いったん,千雪との契約を解除して,私かエルザと契約し直すくらいな?でも,霊体をみることができないのも問題ね」
エルザ「それは大丈夫じゃない?霊体がもどる場所を決めとけばいいのよ。なんせ,寅吉は,教祖代理だからね。それにドラゴンにも変身できるんでしょう?まだまだ物品販売のネタがあるわ」
フレール「そうね。生まれてくる赤ちゃんのためにもね。遺伝的には,千雪との子供になるのかな?」
エルザ「正確には,千雪との子供で,霊体的には,リスベルとの子供,という感じかな?」
フレール「ちょっと,寂しいわね。エッチした意識がない状態で子供を生むなんて」
エルザ「フレール,意識がある状態でエッチしたいの?エッチね!」
エルザは,寅吉から,自分の生成魔法陣を出現させて,それを紙に詳しく模写した。それを持って,千雪に内緒で尊師と相談することにした。尊師には,正直に,将来,千雪とケンカ別れになる可能性のあることを示唆した。寅吉にとっても,たびたび人間界に行ってしまう千雪と契約関係を維持するのはリスクがある。
寅吉は,半年くらいで自然消滅するからだ。前回,リスベルによって消滅させられた寅吉は,どっとみち,あと1週間くらいで自然消滅する運命だった。たとえ,自分より弱くても,自分をきちんと復活させてくれる”ご主人様”と契約したほうがいい。教団内部は,エルザを中心にして,千雪がいなくても完全に機能するように,着実に動き始めた。
千雪が千春と愛の行為を得て,眠りについた後,リスベルの霊体が千雪の体を支配して目を開けた。
ー---
ー---
まだ,夜の9時ごろだ。リスベルが目覚めたことに,千秋と千冬は気がついた。
千秋「千影様,千雪様は,完全に寝たのですか?」
影雪「ああ,今はいじけて,完全に寝たわよ。この会話は聞いていないわ」
千秋「そうですか。エルザさんも言っていましたが,今の千雪様は,情緒不安定です。千影様がうまく支えてあげることはできないのですか?」
リスベル「霊体がつながっているとはいえ,なかなかコミュニケーションはとれないものよ。霊体が半分近く奪われたのだから,やむをえないわね。時間をかけて,私に相談できるような状況を作るしかないわね」
千秋「そうですか,,,そうしてくださいね」
リスベルは,千秋と千冬に変態的愛の行為をしながら,真面目な話を始めた。
リスベル「千秋,千冬,よく聞いて。まじめな仕事の話をするわ。千雪は,いずれ獣人国に行くことになるの。そこで,今の獣人国の体制をひっくり返す可能性があるわ。そこで,お願いなんだけど,獣人国にこっそりと行って,この千雪御殿に設置してある大規模魔力抽出転送魔法陣と同じものを構築してほしいの。そのための支点魔法陣や魔法石探査魔法陣も教えるわ。でも,慌てなくていい。半年くらいかけてのんびりと構築してくれればいいわ。あなたたち4人でかかれば,2,3週間もあればできるでしょう。それさえできてしまえば,後はなんとでもなるわ。秘密裏に行動してね?」
千秋「千影様の命令とあれば,なんでもします。任せてください」
リスベルは,千夏も呼んで,千秋,千冬,千夏の3人に,魔法石探査魔法陣,核魔法陣そして大規模魔力抽出転送魔法陣について,詳しく説明していった。千春は,妊娠後期に入っているので,数に含めなかった。
1週間ほどかかってしまったが,千秋,千冬,そして千夏は,それらをなんとか行使できるようになった。
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翌朝,
千雪は目覚めた。傍らには,エルザ,フレール,千夏,千秋,千冬がいた。
千雪「意地悪なエルザ,陰湿なフレール,なんでここにいるのよ。そっか,リスベルとエッチしたのね。昔は,リスベルが誰とエッチしようが,全然気にならなかったけど,今は,ちょっと違うわね。嫉妬するわ。千秋や千冬もリスベルとエッチしたのでしょう? もう,私のもの全部,リスベルが奪っていってしまう!!」
千雪は,腹ただしかった。
千雪「エルザ,フレールは,まだいいわ。千秋,千冬,こっちに来なさい!」
千秋と千冬は,千雪の隣に移動した。千雪は,彼女らに,往復ビンタを食らわした。
パーーン,パーーン。
千雪「千秋,千冬,あなたたちは,私だけのものよ,リスベルに身を委ねるのはもうやめなさい。このビンタは,リスベルに身を任せた罰よ!」
千秋と千冬は,どう返事していいか迷った。しかし,いい返事を見つけた。
千秋「千雪様,だって,千影様と千雪様の区別がつかないのですもの。どうすればいいのでですか?千秋は千雪様のものです! どうか機嫌を治してください」
パーーン,パーーン。
千雪は,また千秋と千冬をぶった。明らかに嘘をついていたからだ。
千雪「あなたたち! 嘘を言ってもだめです。霊力使いは,気のオーラを見分けれるでしょう!!」
千秋「千雪様,ごめんなさい。でも,千影様の愛撫が気持ちよくすぎて,眼を開けていなかったのです。いちいちオーラを区別するなんてできません!」
千雪「じゃあ,今度から,区別しなさい。もうリスベルには抱かれるのはやめなさい。あの盗人め。ますます腹が立ってきたわ」
千雪は,だんだんと顔を赤くしていった。
エルザ「千雪,千秋や千冬をぶつのはやめなさい。あんたのかわいい弟子でしょう? そんなことしてたら,もう誰もあんたについていく人,いなくなるわよ」
千雪「エルザまでリスベルの味方するの? 彼はあなたを犯したのよ。彼はもう死んだ人間よ!なんで私の体を乗っ取るのよ,もー-!」
千秋「千雪様,落ち着いてください。今日,国王の貴賓室行って,お茶しましょう。ケーキとってもおいしいわよ」
千雪「千秋まで,私をバカにして。もー-!でも,,,ケーキはいいわね。じゃあ,今からいくわよ!」
千秋「えー-?,まだ朝ですよ。もうちょっとしてからにしましょうよ。おいしい千雪様の大好きなサンドイッチ,作ってあげますから」
千雪「なんか,餌付けされてる気分だわ。まあ,いいわ。おいしいコーヒーも一緒にお願いね」
千秋「大丈夫ですよ。任してください」
千雪がサンドイッチをほおばって,気分が落ち着いた頃を見計らって,エルザが千雪に問いかけた。
エルザ「千雪,私たちは,何も,千雪をのけ者にしようってことしてないのよ。千雪は,もうリスベルと2人で一人なのよ。それに,もっとリスベルを信頼しなさい。今からでもいいわ。リスベルと相談してちょうだい。千雪がリスベルから魔法の話を聞いて,わたしたちに話してくれる?そうしてくれたら,デザートで,アンミツあげるわ」
千雪「アンミツ,,,ね。久しく食べてないわね。じゃ,いいわ,リスベルに聞いてみるわ」
かくして,千雪は,リスベルと霊体同士で相談し始めた。リスベルも千雪にはやさしく接した。この餌付け作戦は,一週間ほど続いた。
愛の営みのほうは,リスベルは,千雪にばれにように行った。それでも,千雪が寝入っている時間,つまり,7,8時間くらいはあった。
日中も,リスベルの霊体は,千雪に,ことあるごとに,『愛しているよ』攻撃を行った。
リスベル「千雪,愛しているよ。やっと,霊力の手を使って,千雪を愛してあげれるよ。霊力の手の先から,水魔法と組み合わせて,冷たい氷も出せるよ。気持ちいいわよ。雷魔法を出せるようにもできるよ。すごくいい刺激になるよ。千雪,愛しているよ,愛しているよ,千雪」
この影雪の「愛しているよ」攻撃は,効果てきめんだった。何かあると,愛しているよを繰り返した。一日,なん百回となく,言い続けた。そして,千雪が肉体を支配している間でも,千雪は,リスベルに霊力の一部を割り振って,リスベルに自由に使わせるようにもした。
リスベルは「愛しているよ。ずー-と一緒だよ。永遠に一緒だよ。なんでも私に相談してね」と千雪の霊体に声をかけていった。
その結果,千雪はリスベルの言うことを素直に聞くようになった。リスベルの千雪への精神的肉体的支配がほぼ完了した。ただし,連続的愛撫と『愛しているよ』の連呼攻撃がなくなると,その支配はすぐに消えるという大きな欠点は残った。
今の千雪は,リスベルの言うことに素直に従う,絶世の美女,いや絶世の操り人形と言ったほうがいいのかもしれない。
操り人形の千雪は,エルザと相談していた。
エルザ「千雪,そろそろ国王と交渉しに行こうと思うのだけど,いい?」
リスベルの霊体は,千雪の霊体に,OKと返事をした。千雪の返事は,すべてリスベルが千雪の霊体に返事をして,千雪がそれを口から言う,というスタイルだ。
千雪「OK」
エルザ「フレール,では,千夏と寅吉も一緒に転移しましょう」
千雪たち教団側一行は,貴賓室でデザートと高級飲料を味わった後,国王と2回目の会談を行った。
国王「千雪さん,体調はいかがですか?」
千雪「冷静に判断できています。お気遣いいただきありがとうございます」
千雪の発する言葉は,すべてリスベルが話していることを千雪がオウム返しに言っているだけだ。そのため,反応がワンテンポ遅れた。でも,なんら支障はない。
国王「そうですか。では,再度,千雪さんの言い分をききましょう」
千雪「はい,前回,申し上げましたが,リスベルの,エルザとフレールに対して行った性犯罪行為に対して,国王が,国王としてではなく,リスベルの兄として,いくらかでも賠償してもらいたいと思います。その額については,いくらでも結構です。金貨1枚でもかまいません
リスベルの兄として,どのような回答をしようが,教団側は,強硬手段に出ることはいっさいありません。これまで通り,友好な関係を維持したいと考えております」
この返事には,国王もびっくりした。予想外の譲歩だったからだ。
国王「ずいぶんと物わかりがよくなりましたね。承知しました。国王としてではなく,リスベルの兄として,回答します。幸い,私はまだ結婚しておりません。ですから,私の預金額の半分,金貨2000枚を都合つけましょう。ですから,エルザさんとフレールさんに金貨1000枚ずつとなります。これでいかがでしょうか?」
エルザ「はい,ありがとうございます。もう,それで十分すぎる額です。もし,国王が結婚する時は,祝い金に金貨500枚さしげます」
フレール「私も,それで十分です。教団の運営が大変順調ですので,設備投資を考えていました。その費用に当てたいと思います」
国王「では,この件は,これで終了としましょう。それで,私からの提案ですが,友好関係を維持するという観点から,今後は定期的に親善試合を開催したいと考えています。参加者一名金貨1万枚というのは無理ですが,参加者には金貨10枚。そして,試合で勝ったほうには,金貨100枚を提供しましょう。そちらの参加者は,6名と伺っていましたので,このような案を考えてみました。
国王は,親善試合の項目を提示した。
①氷結による対決(樽の水を凍らして,どちらが硬い氷かを争う)
②風魔法による対決(空中での移動スピードを争う)
③火炎魔法対決(鋼鉄を溶解させる時間を争う)
④国王側の死霊体との対決
⑤国王側のゴーレムとの対決
⑥双方の最高実力者同士の対決
この提案に,リスベルは同意した。それで,千雪にOKの返事をさせた。
千雪「これで結構です」
国王「では,2週間後でいかがでしょうか?」
千雪「わかりました。では,よろしくお願いします」
ー--
教団側が去った後,国王秘書は国王につぶやいた。
国王秘書「なんか千雪さん,まともに応答していたのですが,こころここにあらず,という感じでしたね」
国王「たしかにそんな感じだな。リスベルと話している感じがした。前国王は,殺す気で対策をするつもりかもしれん」
国王秘書「いいえ,今後も定期的にするのですから,殺すようなことはしないでしょう」
国王「そうであればよいが」
ー--
千雪御殿の会議室
千雪は,相変わらず,リスベルの言いなりで口を動かしていた。
千雪「親善試合では,全員負けてもらいます。教団がすでに脅威ではないことを国王側に示すためです。ただし,ゴーレムと死霊体に対しては,対策を授けます。ぼろ負けしないためです。私は,すでに,妊娠4ヶ月ですから,試合にはでません。では,出場メンバーをいいます。
①氷結による対決(樽の水を凍らして,どちらが硬い氷かを争う)には,千夏。②風魔法による対決(空中での移動スピードを争う)には,千秋。③火炎魔法対決(鋼鉄を溶解させる時間を争う)にはフレール。④国王側の死霊体との対決には,千冬。⑤国王側のゴーレムとの対決には,再び千夏。⑥双方の最高実力者同士の対決には,寅吉。
寅吉には,ここの大規模魔法力を使えるようにします。ですから,そこそこ戦える感じにして,負けてください。消滅しても結構です。
①,②の魔法ですが,もともと千春たち霊力使いは,このような魔法は不得意でしょう。ですから,この2週間は,全力でマスターして,そこそこ恰好のつくようにしてください。
フレールは,もともと火炎魔法は得意ですね。別に練習する必要もないでしょう。
④の死霊体との戦いですが,スピードで圧倒的に負けます。しかも拘束リングを使われるとどうしようもありません。負ける前提でいいのですが,もし相手が殺しにかかった場合は,自分でそのピンチを抜けてください。私が別次元の世界で見つけた魔力吸収魔法陣を伝授します。これは,できれば使わないでください。ある意味秘密兵器ですから。
⑤のゴーレムとの対決ですが,やはりスピードでまけるでしょう。かつ硬度でも負けます。この負けは,死につながります。そこで,千雪と特訓をお願います。霊力の硬度を千雪並みに引き揚げます。千雪はダイヤモンドの15倍の硬さを構築できます。徹底して,霊力の精度をあげていきます。
エルザやほかのメンバーは,納得した。冷静な判断だからだ。千夏たちは千雪のオーラを見たが,千雪だった。リスベルではなかった。
千秋「千雪様,よくわかりました。ところで,今,千雪様は,千影様と交信して話しているのですか?」
千雪「いいえ,リスベルの言葉をそのまま千雪が口に出しています。今の千雪は,頭がリスベルで,体と能力は千雪です。リスベルがこの体を支配しているときは,千雪の能力を1割程度にしか使うことができません。では,皆さん,この2週間,頑張ってくださいね」
この説明は,よく理解できるものだった。
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